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「過去を知ることが未来を考えるヒントに」GMO稲守氏に聞くWebサービスの歴史【連載:有名企業の新人研修に学ぶWeb開発の基礎】

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「非IT系」の企業や職種でも、ITの知識が当たり前のように求められる時代。ただ、いざ学ぼうにも、どこから手をつけていいのか分からないという人も多いのではないだろうか。本連載では、有名IT企業各社の新人エンジニア研修担当者に講師をお願いし、短期集中講義の形式で、Webサービス開発の基礎知識を学ぶ。各社には、実際の研修で使われた貴重な資料の公開もお願いした。


【有名企業の新人研修に学ぶWeb開発の基礎:ラインアップ】
1時間目:Webサービスの歴史
2時間目:インフラ・ネットワーク
3時間目:データベース・ミドルウエア
4時間目:アプリケーション
5時間目:UI/UX
6時間目:開発手法・言語

連載1時間目は、「Webサービスの歴史」について。講師をお願いしたのは、GMOインターネットグループの稲守貴久氏だ。

GMOインターネットグループは2014年度から、新人エンジニア向けの研修プログラム「GMOテクノロジーブートキャンプ」を新たにスタートさせた。

総合的なインターネットサービスグループとしての利点を活かして現役のグループ各社の開発エンジニアが講師を務め、「セキュリティ」「プロトコル」「仮想化技術」など、全10回のプログラムで新人エンジニアの技術向上を図るという。

そのプログラムの“序論”に位置付けられたのが、今回受講させてもらった「Webサービスの歴史」。

ブートキャンプ全体を監修する立場でもある稲守氏は、「サービス自体は、歴史を知らなくても作れてしまうかも知れません。でも、そのサービスがなぜ生まれたのかを知ることが、この先どうなっていくのかを考えるヒントになると思います」と、歴史を学ぶことの意義を語る。

今回は、講義の内容を以下の5点に絞ってまとめ、ダイジェストでお送りする。

講師プロフィール

稲守貴久氏(GMOインターネットグループ

GMOインターネット株式会社、次世代システム研究室所属。在京テレビ局を経て、2006年にGMOインターネット入社。ヤプログ!、クリック証券を経て現職。スマートフォン向けゲームサービス「Gゲー」のほか、各種メディアコンテンツ、ECサービスのUI/UX改善、KPIツールの設計、開発を行っている

【1】軍事利用から始まったコンピュータとインターネット

コンピュータの起源には諸説ありますが、1942年にアメリカで作成されたABC(アタナソフ&ベリー・コンピュータ)は、2進法の採用、計算・メモリ回路の分離、電子式計算といった点で、現在のPCと共通しています。1946年にアメリカで発表されたENIACのように、初期のコンピュータは軍事利用目的の側面が強かったのです。

引用 Wikipedia (http://en.wikipedia.org/wiki/File:Atanasoff-Berry_Computer.jpg)

世界で初めて個人向けに大量生産されたのは、1977年にアップルが発表したApple Ⅱ。その後、ポール・アレンとビル・ゲイツがMicrosoftを創立し、1995年のWindows95の登場でPCが爆発的に普及しました。それに伴い、インターネットも普及していったのです。

インターネットの起源は、アメリカ国防総省の研究機関DARPAが資金提供し、アメリカ国内の大学をつないだArpanetで、やはり軍事利用目的の側面が強いものでした。欧州原子核研究機構CERNのティム・バーナーズ=リーがWWWを考案し、HTML/HTTP/URLといったインターネットの基礎的概念の設計を行ったことで、インターネットは世界に広がっていきました。

【2】ディレクトリから全文検索へ 変わる「情報の辿り方」

Yahoo!などのポータルサイトが全盛だった90年代は、情報への辿り方として、「ディレクトリ型検索」が主流でした。人の手を使ってサイトに関する情報を収集し、カテゴリーごとに分類して登録しているため、目的のサイトにアクセスするには階層を辿るように探していかなければならず、手間が掛かりました。

2000年にYahoo!の検索エンジンにGoogleが採用され、ここから「ロボット型全文検索」が主流になっていきます。専用のプログラムが自動的にネット上を巡回して、ページごとの情報を収集しているため、膨大な量のページに直接アクセスできるようになったのです。

ページを制作する側には、検索結果の上位に表示されるための対策=SEO(検索エンジン最適化)の考え方も生まれました。

90年代には、Amazon、楽天市場、Paypal、2ちゃんねるなどのサービスがリリースされました。2000年前後にはADSL回線が開通し、通信速度が向上。1999年には世界初の携帯電話インターネット接続サービス、i-modeが登場しました。

【3】「Web 2.0」 誰もが情報の送り手かつ受け手に

2001年に9・11アメリカ同時多発テロ事件が発生。これに端を発したイラク戦争の際に、バグダッドの一般女性がブログで意見を発信したことが話題になりました。

引用:Baghdad Burning: Girl Blog from Iraq (書籍),  Baghdad Burning

ブログが普及し、情報の送り手と受け手が流動化、誰もがWebを通じて情報を発信できるようになった状態になりました。こうした現象を指してティム・オライリーが提唱したのが、「Web2.0」の概念です。

2000年代には、Gmail、Facebook、mixi、Twitterなどのサービスが誕生。日本では、海外で成功したビジネスモデルをいち早く国内に持ち込む「タイムマシン経営」が増えたとされる時期です。さらに、高速通信の普及でYouTube、ニコニコ動画などのリッチなコンテンツも生まれました。

【4】スマートフォンの登場で変わる行動様式

2007年にAppleがiPhoneを発表、翌2008年にはGoogleがAndroidを発売し、スマートフォンの時代が始まります。

引用:NBC NEWS

スマホの登場以降、人々の行動様式がガラッと変わりました。この写真はスマホ登場以前と以後のバチカンの様子を比較したものですが、イベント時などには誰もがスマートフォンを使ってその様子を撮影し、記録を残したり、SNSに投稿したりするようになりました。

2008年には最後発のブラウザとしてGoogle Chromeがリリースされました。現在、ブラウザのシェアはIE、Firefox、Chromeの3大勢力になったとみられています。

【5】「文章のWeb」から「データのWeb」へ

これからのWebという視点で考えると、かつての「文章のWeb」の時代から、「データのWeb=セマンティック・Web」の時代へと移り変わってきています。

どういうことかと言うと、情報リソースにメタ情報が付与されることで、人を介さずに、コンピュータが自立的に高い精度の処理ができるようになります。現実にGoogleでは、過去の検索履歴をもとに、利用者の考えを先回りした検索結果が提示されるようになってきています。

さらに、2011年以降のSiriやGoogleNowの登場に象徴されるように、情報伝達は「能動的」な検索から、「受動的」なコンシェルジュに移っていく可能性もあります。

ほかにも、ビッグデータを活用することで、「現状分析」だけでなく、「未来予測」ができるようになるでしょう。例えばAmazonは、「顧客が商品を購入する前に、商品を出荷する」物流のさらなる最適化を実現するはずです。

失敗を恐れず、挑戦し続けること

「ITは人々の生活をより良くするためのもの。だから、僕は『情弱(=情報弱者)』という言葉が嫌いなんです。手前味噌ですが、創業当初から変わらぬGMOインターネットグループのスローガン『すべての人にインターネット』は、いい言葉だと思うんですよね」と稲守氏は言う。

日進月歩、栄華盛衰。移ろいゆく流れの中で、自分の「Webサービスの歴史」を更新し続けるべく、今でも「いい本を書いたり、新しいサービスを作ったりした人には、直接会いに行くようにしています」という稲守氏。「その先」の歴史を紡ぐ新人エンジニアに向けては、「失敗を恐れず、挑戦し続けることが大事ではないでしょうか」とアドバイスを送った。

取材・文/鈴木陸夫(編集部)

《Web開発の基礎が分かる関連外部リンク》

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