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[連載:五十嵐悠紀⑫] 検索上手な研究者が教えるアカデミア流Google検索術

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天才プログラマー・五十嵐 悠紀のほのぼの研究生活
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筑波大学  システム情報工学研究科  コンピュータサイエンス専攻  非数値処理アルゴリズム研究室(NPAL)
五十嵐 悠紀

2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 非数値処理アルゴリズム研究室(NPAL)に在籍し、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは二児の母でもある

「研究活動の5割は調べ物にある」といっても過言ではありません。それほど、研究者は日々調査・検索に勤しんでいます。

どんなに画期的な研究をしても、すでに誰かによって解決されている問題を解いていては意味がありません。研究を始める前に予備調査は必要ですし、研究テーマを設定してからも関連研究、先行研究を調査・検索することは必須です。

特にわたしのようなUI・UXの分野では、インターネット検索で多くの情報を見つけてくることができるため、検索しない日はないと言っても過言ではないくらい、検索ばかりの毎日です。

よく利用するのは、やはりGoogle検索です。在野で活躍されているエンジニアの方同様、今や研究者にとっても、Googleが提供するサービス抜きで仕事(研究)は想像するのが難しいほど、日常の中に入り込んでいます。

数えきれないほどあるGoogleのサービスですが、中には研究者をメインターゲットにしたニッチなサービスも存在します。

そこで今回は、「検索のプロ」である研究者が、普段行っているGoogle検索術をお教えしましょう。

【初級編:タグ検索】

まずは初級編です。ITに明るいエンジニアであれば、すでに多くの方が実践している方法かもしれません。

Googleを使って研究として調べ物をするときには、キーワードとともに、“site:なになに”といったタグを一緒に入れる使い方をよくします。

例えば、ただ単に“stuffed animal”と検索をすると、たくさんの”ぬいぐるみ”にまつわる検索結果が返ってきますが、“stuffed animal site:acm.org”というように“site:acm.org”をつけて検索をすることで、acm.org のサイトの中に絞って、検索結果を返してくれます。

ACMデジタルライブラリのサイトの中でこの言葉が使われている、つまりぬいぐるみにまつわる論文の検索結果が返ってくるので非常に便利です。

ほかにも、“C言語”と検索をすると一般のC言語の書籍や個人のサイト、blogなどが検索結果として得られます。

“C言語 site:ac.jp”と調べると大学関連のHPにおけるC言語に関する情報、つまり授業のレジュメなどが得られたりするので、ほかの分野からやってきた初学者に向けて指導を計画する時などにも使えますね。

【中級編:論文内検索】

論文や提案書用に英作文をしている時、例えば“we run a workshop”という表現が正しいのか知りたければ、「”we run a workshop” site:acm.org」などというように、英語のフレーズを“…”でくくって調べることで、そのフレーズがacm.org に掲載されている論文の中で使われているかどうかも調べることができます。

調べてみると論文の中では意外と使われていないフレーズというのもあったりするので、こういうフレーズは論文ではあまり使われないのかな、などと違うフレーズを考えたりすることもできて大変便利です。

わたしは英作文が得意ではないので、間違ったフレーズを入力することもしばしばあるのですが、そのようなときには極端に検索結果の件数は減るので、間違いの発見にも大活躍しています。

また、プレゼン資料や手紙、FAXを書くときなどにもこの方法は使えます。例えば、英語でプレゼンするときには最後に“Thank you for your attention.”などと言ったりしますよね。

そのフレーズをそっくりそのまま””(ダブルクオーテーション)でくくって検索してみると、発表する際の原稿をパワーポイントのノート欄に記入したものをインターネット上で公開している人が多いことに気付きます。

企業の関係者は発表スライドを公開というのはほとんど聞きませんが、大学関係者や研究者はかなりの人が公開しているので参考になるでしょう。

ここで、大学関係だから、といって、先ほど覚えた”site:ac.jp”を付けてはいけません。それでは日本の大学に閉じてしまうので、日本人の書いた英語だけに絞って検索することになってしまいます。なので、こういうときには世界の教育機関のドメインである“.edu”をつけて検索します。

【上級編:論文検索】

論文そのものを検索したいときには、GoogleではなくGoogle Scholar というサービスをよく使います。

例えば

Google Scholarを使って「Google」というキーワードを検索してみたところ。Googleを扱った関連論文が一気に検索できる

「分野や発行元を問わず、学術出版社、専門学会、プレプリント管理機関、大学、およびその他の学術団体の学術専門誌、論文、書籍、要約、記事を検索できます。」と公式ページの紹介にも書いてある通り、学術資料を簡単に検索できるツールです。

例えば、通常のgoogle検索で“Wii controller”と調べると、任天堂Wiiリモコンを使うゲームソフトなどの情報が得られますが、Google Scholarで、“Wii controller”と調べると、Wiiリモコンを使った研究の情報を得ることができます。

3次元医療データに対してWiiリモコンでインタラクションする研究や、ロボットを操作するためにWiiリモコンを使った研究など、いろんな使い方が提案されていたりします。

最新ニュースよりも、このようなまだ世の中に出ていない研究段階の実験に触れることで、そこからインスパイアされて画期的な案を思いつくかもしれません。

このGoogle Scholarの最大のメリットは、調べたい論文以降の新しい研究を検索できること。というのも、昔は過去の論文を探すことしかできませんでした。

例えば、論文を読んで、その論文の参考文献に載っている論文の中から、また論文を読んで……、とたどると、発表された年数はどんどん古い論文になっていくわけです。

ところが、Google Scholarで論文を検索して「引用元」をクリックすると、その論文を引用しているそれ以降(最近)の論文の一覧を見ることができます。

このGoogle Scholar Citationsという、研究者にとっては非常にありがたい機能は、2011年7月に搭載されたもので、実際によく使われています。

でも、本当に大事な情報は周りの人が持っていることを忘れずに

ここまで、いろいろ挙げてきましたが、最大の情報入手先は何といっても仲間です。

研究室の先輩後輩、学会で出会う同業者、他業種に勤める友人・・・。時には仲間であり、時にはライバルでもあったりするわけですが、この分野の関連研究ならこの人に聞こう、この解決策はあの人が知ってそう、などと助けてもらうこともしばしば。

自宅にこもっているより研究室に行った方が研究は進む、というのも、そういう仲間がいることが最大のメリットだと思います。

わたし自身も「このことなら五十嵐さんに聞こう!」と思ってもらえるような人になれるよう、日々努力していきたいと思っています。

撮影/小林 正(人物のみ)