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「今のgumiが目指すのはピクサー+MTV」国光宏尚氏が語る、モバイルゲームで世界の頂点を獲るための方程式

公開

 

数多の会社が脚光を浴びては消えていく。浮き沈みの激しいゲーム業界にあって、「世界を獲る」ことを公言してはばからないのがgumi代表取締役社長の国光宏尚氏だ。

日本におけるモバイルゲームの黎明期から常に最前線に顔を出し続けてきたgumiだが、海外拠点を次々と開設し、先日はLINEと業務提携を結ぶなど、その動きが活発になってきた。

海外市場への進出を試みながら、志半ばで頓挫する競合他社もある中で、日本発のモバイルゲームは本当に「世界を獲る」ことができるのか。国光氏にその青写真を聞いた。

プロフィール

株式会社gumi 代表取締役社長
国光宏尚氏

1974年、兵庫県生まれ。私立岡山高校を卒業後、中国、チベットなどのアジア諸国、北米、中南米など約30カ国を放浪。1996年に中国の復旦大学、2000年に米Santa Monica Collegeに入学。2004年、アットムービーに入社し、同年に取締役に就任。映画・テレビドラマのプロデュース及び新規事業の立ち上げを担当した後、2007年にgumiを創業し、代表取締役に就任

アジア中心に9拠点 売り上げは海外が50%近くに

―― このたびLINEとの業務提携を発表されましたが、どのような経緯でこのお話が持ち上がったのでしょうか。

始まりはなんとなく、ですよ(笑)。たまたまLINEの舛田さん(同社CSMO舛田淳氏)と話をする機会があって、その中でどちらからともなく「一緒にやれる可能性はある?」みたいな感じで。

ウチとしてはちょうど50億円の増資を終えたタイミングだったので、ただの資本提携ではなく事業も含めてだったら、いろいろな形が考えられるとお答えしました。

話が持ち上がってからまとまるまでは、3週間もかかっていない。LINEさんとウチだから可能なスピード感でしたね。

gumiの子会社であるエイリムが提供する『ブレイブ フロンティア』は世界14言語で展開中だ

gumiの子会社であるエイリムが提供する『ブレイブ フロンティア』は世界14言語で展開中だ

―― 狙いとしては、常々口にされている「世界制覇」に向けた一手ということでしょうか。

そうですね。お互いに国内の市場というものがしっかりと見えてきて、今後はいかに世界で勝ち抜いていくかというステージに来ている。

国内であればやり方はハッキリしているんですけど、マーケットが成熟していないエマージングな国も含めてとなると、協力してやった方が世界制覇は圧倒的に近くなるという考えで一致したということです。

そしてもう一つ、両社には事業戦略上の大きな共通点があります。それは、海外に出ていく上で、その国ごとに合った形でかなり細かくローカライズ・カルチャライズすることを非常に重要視していることです。

例えば、gumiの子会社であるエイリムが提供している『ブレイブ フロンティア』は、世界14言語で展開しています。

当然、海外でリリースするにあたっては、ただ翻訳するだけではダメ。その国に合わせたマーケティングが必要だし、ユーザーサポート一つをとっても、例えばポルトガル語でリリースした地域では、ポルトガル語で問い合わせが来るのに対応しなければならないわけです。

国ごとにインフラ環境、端末環境も異なるので、日本で当たり前のように動いていたものがうまく動かない、といったことも頻繁にある。そういうところを1個1個調べて対応していくということが他社にはなかなかできないのですが、ウチにはかなりのコストと時間を費やして体制を整えてきたアドバンテージがあります。

社員は国内、海外とも約400人ほどで、売り上げに関しても、海外が50%近くまで伸びています。

国内は東京と福岡、海外は韓国、シンガポール、中国・上海、フィリピン、台湾、インドネシア、フランスにオフィスがあり、全部で9拠点。アジアではある程度ポジションが固まってきているので、これからの半年でさらに、欧米を中心に8~10拠点を増やしていく予定でいます。

ローカライズの是非をめぐるゲーム業界の2つの仮説

「ベンチャー先進国での戦いにローカライズ・カルチャライズは不可欠」と持論を展開する国光氏

「ベンチャー先進国での戦いにローカライズ・カルチャライズは不可欠」と持論を展開する国光氏

―― 海外で成功するためには、ローカライズ・カルチャライズは不可欠な要素と考えていらっしゃるわけですね。

ゲーム業界では今、2つの仮説がせめぎ合っていると思うんです。

一つは、「良いゲームを作りさえすれば、世界のどこに行っても売れる」とする立場。もう一つは、「国によってユーザーの習性やリテラシー、インフラ環境などは大きく異なるので、良いゲームを作るのは前提として、しっかりローカライズ・カルチャライズしなければ勝てない」とする立場です。

海外のsupercellやKing、その他国内大手も、おそらくは前者の考え方だと思います。となると、世界のトッププレイヤーで後者の戦略を採っているのは事実上、ウチだけなんです。これはチャンスでしょう。

ローカライズ・カルチャライズは本当に必要があるのかとよく聞かれます。でも、その答えは市場を見れば明らかでしょう。

日本のゲーム市場で欧米のゲームが通用していますか? 逆に欧米の市場で日本のゲームは通用していますか?

どんな国であっても、ローカライズ・カルチャライズはやった方がいいに決まっている。ただ、経済の合理性を考えた時に、やる必要のある国とない国の差はある、というのが僕の考えですね。

現地に強力なローカルコンペティターがいる国であれば、外から参入したプレイヤーはローカライズ・カルチャライズに力を入れないと返り討ちに遭う。そうした現地の強豪が出てこない国であれば、わざわざコストをかけてやらなくても勝てるというだけです。

では、強いコンペティターはどんな国に現れるのか。それは、ベンチャーのエコシステムがすでにでき上がっている国です。

シリコンバレーの大手をもってしてもあっさりとは勝てない日本、韓国、中国、ロシア。それにヨーロッパとアメリカを含めた6地域こそが、本当の意味でのベンチャー先進国と言えるでしょう。ウチがこうした地域に真っ先に拠点を作っているのは、そのためです。

「誰よりも早く挑戦し、誰よりも早く失敗し、誰よりも早く復活する」

社是である「誰よりも早く挑戦し、誰よりも早く失敗し、誰よりも早く復活する」を実践してきたのがgumiの歩みだという

社是である「誰よりも早く挑戦し、誰よりも早く失敗し、誰よりも早く復活する」を実践してきたのがgumiの歩みだという

―― なるほど。それにしても、移り変わりが激しいとされるこの業界で、常に最前線で戦い続けるgumiのパワーには驚かされます。

確かに、この業界の移り変わりのスピードは凄まじいです。

Zyngaを含めたPCのソーシャルゲームが戦いの始まりとすると、次がフィーチャーフォンのブラウザゲーム、その次がスマートフォンのブラウザ、そして今、戦いのステージはネイティブゲームへと移っています。そうした激しい戦いの中で、さまざまな会社が伸びては落ちてを繰り返している。

ウチも常に右肩上がりだったわけではありません。ですが、それでも今に至るまで絶えず最前線で戦い続けてきたのはウチだけではないか、という部分には自負を感じています。

―― どうしてgumiにはそれが可能だったのでしょうか。

それだけ変化に対する耐性が備わっているということかもしれません。

どうなるか分からない環境の中で成功するための方法は一つしかないと思っています。それは「誰よりも早く挑戦し、誰よりも早く失敗し、誰よりも早く復活すること」。これは会社のスローガンにもなっています。

ネイティブゲームに勝負のステージが移って以降、かつて一時代を築いた多くの会社が脱落していっています。それはある意味当然で、前のステージでの成功が大きければ大きいほど、次のステージへと切り替えるのは大変だからです。

ウチは成功体験を引きずりません。新しいものが出てきたら、どんどん挑戦していく。

失敗してもいいんです。そこから早く学んで復活すれば、勝ち残っていけるんです。ウチは何回も失敗を繰り返しながらも、先端のところに食らい続けてきました。

―― しかし、失敗から復活するというのは、口で言うほど易しいことではないはずです。どうやって再び立ち上がるのですか?

勝つまでやるんですよ(笑)。

海外展開とかでよその会社が失敗しがちなのは、向こうに会社を作ってみて、うまくいかないとすぐに撤退、となるから。「世界を獲る」と公言している以上、1回の失敗で立ち止まっているわけにはいきません。強い意思でやってみて、うまくいかなかったら、原因を徹底的に考えて改善する。それを繰り返すだけです。

もちろん、ウチが海外展開する上でも、うまくいかないことはたくさんありましたよ。最初に韓国に進出して、この2年半の間には現地トップの交代などをやりました。ただ、その後シンガポール、上海と続きましたが、まだ撤退した例はありません。

徹底的にやる、その姿勢はステークホルダーに対してもそうですし、社内制度の面でも同じです。言っていることとやっていることがズレてくるとみんな不安になるので、評価制度も含めて、失敗を恐れずに挑戦できる体制を整えていくというのが大事です。

ウチの場合はそれを海外を含めてやらなければならないので、今まさに評価制度、評価基準の統一という部分に取り組んでいるところです。その一貫として、拠点ごとのMVPを半期に一度選出し、東京で一堂に会してお互いの知見を共有するといった試みも行っています。

会社にはステージごとに、あるべき組織像のようなものがあると思っています。それを知るには、ベンチマークとなる会社を定めること。その会社の制度、その制度を作った人……と順々に調べていけば、やるべきことは見えてくるはずです。

デベロッパー/パブリッシャーとしてのgumiのベンチマーク

gumiは自社で開発するデベロッパーとしてだけでなく、他社のゲームを海外展開するパブリッシャーとして顔を持つ。セガとも『チェインクロニクル』の北米進出で業務提携を結んだ

gumiは自社で開発するデベロッパーとしてだけでなく、他社のゲームを海外展開するパブリッシャーとして顔を持つ。セガとも『チェインクロニクル』の北米進出で業務提携を結んだ

―― 差し当たって、現在のgumiがベンチマークとしているのは、どんな会社でしょうか。

ウチのビジネスには大きく分けて2つあります。一つは、自分たちでゲームを作る、デベロッパーとしてのgumi。もう一つは、提携会社のゲームを世界で売るお手伝いをする、パブリッシャーとしてのgumiです。先日、セガさんの『チェインクロニクル』の海外展開に関して業務提携を発表しましたが、それは後者のビジネスです。

この2つはカルチャーがまったく違うので、ベンチマークとしている会社もそれぞれ違います。

デベロッパーとしてのgumiのベンチマークはピクサーです。普通、映画は当たればデカいが、外れることの方が多い。しかし、ピクサーは出す映画出す映画が面白く、大ヒットです。クリエイティブな組織として、ピクサーはずば抜けている

日本のモノづくりは1人の天才に頼ってしまいがちのため、その人が良ければいいものができるけれど、そうでないと生まれない。後継者も育ちにくい。対して、ピクサーはクリエイティブ・トラストのような形で、自由にアイデアや意見を言い合える風土がある。これがモノづくりの理想です。

一方、パブリッシャーとしてのgumiのベンチマークは、2000年前後ごろの最も良かったころのMTVです。

もともとアメリカのローカルテレビ局としてスタートしたMTVはその後、全世界へと広がっていきました。「Think global,act local」といって、日本の番組であれば日本人のVJを立てて日本の曲を流すといった徹底した現地化をする一方で、世界的な大きな会社だからこそできるMTVアワードのような超大規模イベントも行うというのが、MTVの特徴でした。

モバイルゲームの歴史は浅いですが、近しいものはすでにあった。モノづくりという意味では、映画もテレビもゲームも変わりません。本当に新しい産業なんて存在しないんです。

日本のITベンチャーで世界で成功した例は確かにないかもしれない。でも、ベンチマークとするのは必ずしも国や時代で限定する必要はないはずです。小さなローカルテレビ局からスタートしたMTVの歩みは、会社をスケールさせていく上での重要なことを教えてくれます。

勝負の趨勢はこの2、3年で決まる

―― グローバルメガベンチャーを目指すgumiの歩みは、今どのあたりまで来ていると考えていらっしゃいますか?

この戦いはわりと早い時期に決着がつくと思っています。そう、この2、3年で大筋のところは見えてくるのではないでしょうか。

そう考える根拠の一つは、ゲームの開発費の高騰が止まらないことです。iPhoneなどのハード性能の向上が、開発費を際限なく引き上げています。

かつての家庭用ゲーム機の開発競争がそうでした。PS2の時代は1本6~7億円。それがPS3では20億円になり、PS4になると80億円まで高騰しました。そうすると、日本のゲーム会社はどこもついていけず、結果、欧米の会社の一人勝ちとなりました。

モバイルゲームでも同じことが言えます。初期のソーシャルゲームが500万円、カードバトル全盛期で4000万~6000万円、パズドラのような初期のイケてるスマホゲームで1億~1.5億円です。この次に来るのは3億~4億円。近い将来にはさらに上がることは目に見えています。

間もなく出るとされるiPhone6の事実上の性能は、VitaどころかPS3並みになるはずだからです。

そうすると、今までのように小さな会社が1本作ってヒットしました、ということはなくなってくる。しっかりしたコンテンツを作り、しっかりとマーケティングできる会社となると限られますし、今後は海外でも売れる体制まで整っていないと脱落していくでしょう。

国ごとに強い会社はまだまだいろいろあるとは思います。ですが、ほとんどの会社が自国での売り上げに依存しすぎている。世界でしっかりと売り上げを出せる体制を持っているのはウチくらい。現時点でもすでに頂点に立つ可能性があるのは世界の5、6社に絞られていると思いますが、ウチも間違いなく、その一角にいます。

戦いのステージが移り行く中でも、「やるからには世界を獲る」ということを言い続けてきましたが、いよいよ世界制覇は見えてきたと思います。勝ちますよ!!(笑)

取材/伊藤健吾、鈴木陸夫(ともに編集部)  撮影/竹井俊晴