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2年で約10倍のエンジニア数に~gumiが実践する「急成長してもサービスの質を担保し続ける」採用手法とは?【億単位調達ベンチャー・開発の非常識】

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世の中に新しいWeb(アプリ)サービスを生み続けるWeb系スタートアップたち。本企画では、その中でも今後大きく成長する余地のある注目企業として、1億円以上の資金調達を行った企業の開発スタイルに迫る。自身のブログメディア『TheStartup』も人気を集める梅木雄平氏をインタビュアーに招き、Webサービスやアプリに”魂を込める”開発チームの特徴を明らかにしていく。

今回は、ソーシャルゲーム・プロバイダーの雄、『gumi』が本連載に満を持して登場。

「打倒Zynga」を合言葉に、競争が激しいソーシャルゲーム業界の中で目覚ましい成長を遂げる同社。そんな同社の開発チームを率いる、執行役員で技術開発部・部長の田村祐樹氏と、同社のチーフエンジニアである奥田智典氏に、gumi流ソーシャルゲームの開発の裏側を聞いた。

(写真左)執行役員で技術開発部・部長の田村祐樹氏 (写真右)チーフエンジニアの奥田智典氏

ソーシャルゲームの企画・開発・運営『gumi

GREEなどのソーシャルゲームプラットフォームに対してソーシャルゲームを提供する株式会社gumiは、2011年12月に総額20億円を調達し、現代の国内スタートアップ業界の中でも際立って大きな調達額であったこともあり、注目を浴びた。その後、精力的にソーシャルゲームをリリースし、数多くのヒット作を生み出している

 

組織の成長過程で試行錯誤しながら見つけた「採用の第3フェーズ」

工夫を凝らした採用・育成手法を語る田村氏

現在、gumiの開発チーム全体を統括する田村氏は、2010年7月に入社。入社時のgumiは約30人で、エンジニアは当時のCTOの堀内康弘氏以下、フラットな体制だった。

それが2012年8月時点でエンジニアだけで100名を超える大所帯となっており、直近2年でエンジニアの数は約10倍に増えている。同社の急成長を支えた背景にはエンジニアの急増があり、その採用過程には3段階のフェーズがあったようだ。

「わたしが入社したころは、代表の国光(宏尚氏)やCTOの堀内が面接をして、そのまま採用ということが多かったですね」と田村氏は振り返る。しかし、この手法では入社した人材のスキルレベルに差が出るという欠陥もあり、2012年初頭くらいから始まった「採用の第2フェーズ」で、より体系立てた採用方法を設計したという。

「リーダーレベル、サブリーダーレベル、アシスタントレベルと、採るべき人材のレベル感を考え、まずはリーダーレベルの人材から採用を始めていきました。業務の急拡大で人材が不足していたのは確かですが、採用してすぐにすべての人材が即戦力となれるわけではないので、最初は育成する余裕があるチームに配属するなど、適切な人員配置を考えました」(田村氏)

この第2フェーズで意識した採用手法で、入社してくるエンジニアの質が安定し、最近はさらに採用手法をブラッシュアップ。現在では、スタートアップにしては稀な育成手法を確立させた第3フェーズに入っている。

採用では履歴書でかなりスクリーニングしているようだが、その後は性格診断テストやgumi独自で開発した技術テストを経て、個別面談となっている。この2つのテストは、入社後の業務適正を図るのに一定の効果があるようだ。

入社後は今まではひたすらOJTだったが、現在では入社後に3日間の技術研修があり、その後1~2週間の仮配属。面談を経て、本配属先を決定するという流れを取っている。

入社した社員がどのチームにフィットできるか、最大限のパフォーマンスを挙げられるような配慮がなされている。

ソーシャルゲームが好きで人に興味があることが重要な採用条件

gumiで現在求められるエンジニアの条件は2つ。「ソーシャルゲームが好きであること」と、「技術よりも人に興味があること」だ。

ソーシャルゲームという事業特性上、ユーザーとしてソーシャルゲームを普段から利用していること、ソーシャルゲームの設計を考える上でユーザー視点があることが大事であると田村氏は言う。

急拡大してきた中でも一定水準以上のソーシャルゲームアプリをリリースし続けることができている要因として、社内にアプリ開発のナレッジが溜まっているという要因もあるが、採用時にソーシャルゲームのリテラシーが一定以上あるエンジニアを採用しているという点は大きい。

チーフエンジニアの奥田氏は、「例えば競合のソーシャルゲームをやりこむことで企画のアイディアが浮かぶなど、ゲームをやっているか否かは業務に直結するため非常に大事です」と語っている。

今後はエンジニア評価の一環としてゲームをやっていることを考慮されるほど、この要素は重視しているそうだ。

施策に対してリアルタイムに結果が見える点がやりがい

ソーシャルゲームならではのやりがいについて語る奥田氏

ソーシャルゲームならではの開発のやりがいについて語る奥田氏

さらに奥田氏は、2010年7月にgumiへ入社した経緯や現場での仕事のやりがいについて、続けてこう語る。

「gumiで採用されている開発言語がPythonだったこともあって、前職のSIer時代にPythonで開発していた自分の力が役立つのではないかと思いました。実はわたし自身がgumiを受けた時はソーシャルゲームをやったことがなく、少し負い目を感じていましたが、面接で代表の国光から『Zyngaを倒す』、『ソーシャルゲームという分野で日本発の会社が世界市場で勝たなければならない』などのスケールの大きな話をされ、『すごい会社になりそうだ。自分もその一員になりたい』と思って入社したんです」(奥田氏)

入社後は、画面や文言の修正などという細かい業務から入り、入社3カ月を過ぎたころからアプリ開発を任されるようになったそうだ。その後いくつかのアプリを手掛けていくうちに、施策に対してリアルタイムに売上やユーザー数の伸びなどが測定できるソーシャルゲームの世界に、特に面白みを感じるようになったという。

スポーツ系のアプリを手掛けた際には記録的な大ヒットとなり、そのアプリの成功で社内の開発文化を一変させてしまうほどのインパクトとなったこともあり、大きな喜びや達成感を得たそうだ。その実績を元に、奥田氏はgumiのエンジニアの平均年齢29歳をやや上回る30歳で、執行役員である田村氏の部隊のマネジャーに抜擢されている。

「とにかく楽しくサービスを作ること」がgumiで大切な開発思想

社内の開発ルールとしては、開発のゴールは明確化するものの、プロセスの裁量は各自に任せていることが多いという。

「ゴールはアプリインストール数や売上などのKPIをデジタルで数値化できますが、プロセスはわりと属人的でアナログであると思います。KPIはしっかり管理しつつも、そのプロセスは比較的自由にやってもらうという、バランスを取りながらやっています」(田村氏)

gumiで最も重要視されている開発思想は「とにかく楽しくやる」ということだそうだ。「自分が所属するチームがリリースしたアプリのユーザーに楽しんでもらえて、ユーザーの声や売上が好調な時に、楽しさを感じている社員が多いようです」と田村氏は語る。

今でこそヒットゲームを量産しているgumiも、過去にはアプリをリリースしてもなかなかヒットせず、早期に撤退したこともある。

「その時の経験則もあって、ヒットしないアプリに時間や人的リソースを費やすよりは、気分を切り替えて新たなチャレンジをして、楽しんでサービスを作ってもらった方が良い結果が出やすいと考えています。現在ではナレッジが溜まってきたこともあり、大きく外すアプリをリリースすることはなくなりましたが」(田村氏)

理想のチームはリーダー頼みではなく、全員が自分の役割を果たすことに加え、自発的に考えて上手く噛み合う、総合力のあるチームであるという。メンバーも繊細な人と大雑把な人を同じチームにするなど、相互補完できるような多様性のある設計を心掛けている。

ポップでキャッチーな色使いで明るいオフィスのgumi社内

ポップでキャッチーな色使いで明るいオフィスのgumi社内

インタビュアー

フリーランス マーケター
梅木雄平

フリーランスにてWebサービスの新規事業のコンサルティングやマーケティング 、ライティングを手掛ける。VC業界での経験を活かした事業分析や、投資家関連の記事を展開するブログメディア「TheStartup」を主宰。有料オンラインサロン「Umeki Salon」は会員100名突破間近

撮影/竹井俊晴