エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

注目はやはりセキュリティ分野~『Internet Week』のプログラムから2014年のITトレンドを振り返る【対談:法林浩之×平井則輔】

公開

 
お酒を片手に「一流エンジニアの人生論」を紐解くトークイベント『TechLION』のファシリテーター・法林浩之氏が旬のエンジニアを招き、ゲストの「オン(仕事)とオフ(プライベート)の考え方」からキャリア形成のヒントを掘り起こす連載企画。今回は『Internet Week 2014』のプログラム委員会副委員長を務める平井則輔氏をゲストに招き、プログラムから見るトレンドや、オススメのセッションなどを聞いた。
法林浩之のトップエンジニア交遊録

法林浩之

大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている

法林浩之のトップエンジニア交遊録

平井則輔氏

2005年 ソフトバンクBB株式会社に入社。ネットワーク本部 技術企画部に配属。Yahoo!BB ネットワークの対外接続の企画設計、IPアドレス設計、各種ブロードバンドサービスの技術企画業務に従事。2013年よりJANOG(Japan Network Operator’s Group)運営委員。ビートルズとヘビメタが大好き

『Internet Week 2014』のプログラム片手に話は進む

『Internet Week 2014』のプログラムを見ながら話は進む

法林 僕自身は14、15年前からお手伝いしている『Internet Week』の開催が11/18~21に迫ってきて、プログラム委員副委員長の平井さんもいろいろ忙しいのかなと思うのですが、平井さんはいつからプログラム委員をやっているんですか。

平井 去年、初めてプログラム委員になりました。今年で2回目です。

法林 そうやって若い人が加わってくれるのはいいことだなと思います。

平井 実は、お恥ずかしながら委員になる前は有料のセッションを聞いたことがありませんでした。

法林 そうなんですか? そこから委員になったきっかけは?

平井 去年からJANOGの運営委員になったのですが、その中から『Internet Week』の委員を誰か出してくれという話になって「やったことないよね? 行ってきて」と僕に回ってきました。確かに、JANOG運営委員からは松下和弘さんや 田島弘隆さんがだいぶやってきていたので。

法林 選手交代というわけですね。そもそも、JANOGに関わるようになったのはなぜですか。

平井 新入社員の時に先輩に「行ってこい!」の一言で。

法林 行かされた?

平井 はい。JANOGミーティングの3日前に「こういうイベントがあるので行ってきて」と言われて。ちょうど、うちの会社がホストを務めていたんです。

物足りなさを補う2時間30分のセッション時間

法林 JANOGには毎回ホストを募って、イベントの金銭面の管理をしてもらうというユニークな制度がありますよね。ではちょうど、ソフトバンクBBがホストを務めていた時に、たまたま平井さんが入社したと。場所はどこでした?

平井 福岡です。

法林 ああ、思い出した。2005年のJANOG16ですね。僕は行かなかったけど、確かに福岡でありましたね。

平井 人生で初めて九州に上陸することになりました。その時僕は、JANOGがどういうイベントなのか知らなかったので、スーツで行ったんです。そうしたら上司に「ここはそういうイベントじゃないんだ」と指摘されて、それで、天神でカジュアルな服を買って着替えたのを覚えています。

法林 知らないとスーツで行きがちだけど、スーツで行くと浮くよね。突然の派遣でしたが、楽しめました?

「競合同士がこんな話していいのか、と驚きました」とJANOG初参加を振り返る平井氏

「競合同士がこんな話していいのか、と驚きました」とJANOG初参加を振り返る平井氏

平井 そうですね。驚いたのは、競合同士がインターネットの発展のために、立場を越えてディスカッションしていたことです。自分たちのネットワークの裏側についてこんなにオープンに話し合うのかと驚きました。

法林 新入社員だと、たしかにそこは驚くかも知れませんね。それで、JANOGでのスタッフはいつからですか?

平井 JANOG25からなので、2010年からです。

法林 立候補したんですか?

平井 プログラムプロデューサに手を挙げたら、そのままスタッフもやることになりました。

法林 それ、典型的なパターンですね。それで『Internet Week』にも関わるようになって、こちらではプログラム委員を経て、2年目で副委員長ですか。やってみてどうですか?

平井 セッションの時間が2時間30分って、衝撃的に長いですよね。

法林 あ、そうか。JANOGだとたいていのセッションは30分か長くても1時間で、2時間30分のセッションはまずないですよね。

平井 だから最初はギャップがありました。でも、JANOGで30分や1時間のセッションでは物足りなさを感じる内容を、『Internet Week』ではじっくり取り組めるなと感じています。

初心者から玄人まで勉強になるプログラム

法林 今年のプログラムを企画するにあたっては、どんなことを考えましたか?「改めて“みんなの”インターネットを考えよう」という今回のテーマからは、間口が広い印象を受けますが。

平井 そうですね。幅広い話題を集めることを意識しました。初めての人も参加しやすく、また、その道の玄人にも興味を持ってもらえるメニューになったかなと思います。

『Internet Week 2014』のプログラム(クリックでサイトが開きます)

『Internet Week 2014』のプログラム(クリックでサイトが開きます)

法林 今年、多くの問題があった――といっても、少ない年はないんだけど――特にUDPを使った攻撃とか、OpenSSL関連とか『Internet Week』に参加する人たちが関わることが多そうな分野でのセキュリティの問題が目立ったので、そこが手厚くなっている印象を受けます。「T2」の「TCP/IP再認識~忘れちゃいけないUDP、ICMP~」などは、今年ならではのセッションですね。

平井 そうですね。個人的にもTCPよりUDPの方が好きなのでタイトル読むとドキドキします(笑)。

法林 それから「S14」の「サイト管理者が知っておくべきSSLのツボ」も注目です。SSLだけを2時間30分にわたって取り上げるのは、このイベントだからできることです。

法林 他に、平井さんがオススメするセッションはどこですか。

平井 まず、「T4」の「初めての人のためのインターネットルーティング」ですね。JANOGの川村聖一会長が直々に話します。

法林 珍しいですね。

平井 初心者に知ってほしいことがたくさんあるようです。これを企画したのはまだ20代の委員なのですが、イベントに参加する側だった時に、分からない人向けのセッションが少ないことが気になっていたようです。

法林 たしかに、経路制御を学べる場は案外少ないので、ネットワーク業界が初めてという人におすすめできますね。でも、川村さんの話などは、初心者以外にも聞き応えがあると思います。そのすぐ後の時間帯に行われる「S10」の「変化を乗り越える!インターネットルーティングセキュリティ」も面白そうですね。

平井 中国のネット検閲の仕組みはどうなっているかを分析した結果を、ソフトイーサの登大遊さんが話します。

法林 これは僕も楽しみ。それにしても、『Internet Week』のプログラムを見ると、トレンドがわかりますね。「D2」の「IP Meeting 2014~あらためて“みんなの”インターネットを考えよう~」などは、総まとめという印象を受けます。

ちょっと説明すると、IP Meetingというのは、『Internet Week』が誕生する前からあったイベントです。最近は、前半は今年のまとめ、後半は各セッションのサマリーなどを語るので、ここでこの1年を押さえることができ、このセッションにだけ毎年参加するという人もいるようです。あと、“社会派”のセッションも面白そうですね。

平井 「S12」の「クラウド時代の著作権について考える」では、ジャーナリストの津田大介さんも登壇しますし、自分の業務に関係がなくても聞きたいセッションがそろったなと思います。

インターネットガバナンスのセッションに出る“『Internet Week』らしさ”

法林 あと、平井さんが個人的に気になっているセッションは何がありますか?

平井 僕の普段の業務は、ソフトバンクBBのネットワークの対外接続の最適化と、それからいわゆる資源管理なので、インターネットは誰ものものかという議論にはとても興味があります。なので、「J4」の「第4回日本インターネットガバナンス会議」にも注目しています。

法林 このセッションの存在は、長く『Internet Week』に参加している人に「これまでと違うな」と思わせますね。一方で、『Internet Week』の主催がIPアドレス等のネットワーク資源を扱う、国内で唯一の組織であるJPNICだからこそ扱われるテーマでもあります。

平井 僕はJPNICも加盟しているAPNICの会議に何度か参加したことがあるんですが、これから発展する小さな国は、国策としてインターネットに取り組もうと考えているんですが、日本のような国はインターネットは民間が主導すべきだと考えているというか、それが当たり前なんですよね。だから、ここで改めてセッションを設ける意義があると思っています。

法林 確かに「日本では民間主導だよね」と指摘されないと気が付かないテーマですね。日本にいてはなかなか感じる機会がないテーマに出会えるのも、『Internet Week』のいいところだと思います。

平井 あとは、BoF(birds of a feather)ですね。通常のセッションとは別に『Internet Week』の参加者は誰でも出席できる場を用意します。

特定のテーマに対して話したい人が集まる「BoF」も両氏のオススメ

特定のテーマに対して話したい人が集まる「BoF」も両氏のオススメ

法林 これは要するに、通常のセッションではしゃべれないことをしゃべる場です。毎年やっているようなBoFもあるし、今年初めてのものもありますね。

平井 BoFの一覧を見ると、改めていろいろなコミュニティがあるなと思います。

法林 情報交換が必要なところには必ずコミュニティができるんですよね。

平井 地方在住のネットワークエンジニアのコミュニティなどはまさにそうですね。プログラマに必要な情報は地方でも手に入るようになってきましたが、ピアリングに関わるようなネットワークエンジニアは東京に偏っているので、地方でその仕事をしている人は苦労していると思います。

法林 だから『Internet Week』で情報を得ようと、地方から参加する人も多いですよね。

平井 BoFもそうですが、セッションにもできるだけ多くの人に参加して欲しいです。僕自身、プログラム委員をやるようになって、もっといろいろな有料セッションに参加しておけばよかったなと思いましたから。

他社との交流で得た、自社ネットワークを俯瞰で見る視点

法林 『Internet Week』に参加して、普段の仕事への姿勢は変わりましたか?

平井 もっと勉強しようと思うようになりましたね。会社の外に出ると強敵がいっぱいいることが分かります。その人たちと対等にぶつかろうとするには勉強しなくては、という気持ちになります。それから、自分の会社のネットワークが他社からどう見られているのかが分かるのも大きいです。

法林 確かに、自社のことを自社内から他社との相対で見るのは難しいよね。

平井 それが、社外に出ていろいろな人の話を聞くことで、外部の人から見た自社の形が見えてくるんです。当然、自分の会社のことだけでなく、相手の方の会社の話も聞くので、他社のネットワークの形も見えてきます。すると社内で「他社はどうなってるんだ」と聞かれたとき「こうみたいですよ」と答えるための情報も手に入ります。

法林 そういうコミュニケーションができるのは、『Internet Week』のようなイベントならではのことですよね。新入社員の時「JANOGへ行け」と言われた平井さんですが、今は社内で若手を誘う立場ではないですか?

平井 いろんな人を紹介するから行こうぜ、と誘っていますね。それで、50枚名刺を配れよ、と言っています。

法林 そうして次のプログラム委員が生まれるわけだ(笑)。

>> 2014年11月18日(火)~21日(金)開催、『Internet Week 2014』の詳細はこちら

>> 「法林浩之のトップエンジニア交遊録」過去記事一覧はこちら

取材・文/片瀬京子 撮影/佐藤健太(編集部)