エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

「霞が関のHP作成こそ若者に」正規雇用に就けない社会の行く末とは 【ちきりんの”社会派”で行こう!】

公開

 

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー”ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く”ちきりんワールド”をご堪能ください(※本記事は、『Chikirinの日記』に掲載されたエントリーを再構成したコラムです)。

■ 記事提供:『ビジネスメディア誠
プロフィール

おちゃらけ社会派ブロガー
ちきりんさん @InsideCHIKIRIN

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し”働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から”おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。ブログは『Chikirinの日記』 

以前は中高年の失業ばかりを問題視していた日本でも、最近はようやく若年失業者問題に注目が集まりつつあります。
 
中高年の失業は、彼らが一家の”稼ぎ手”であること、すなわち妻子を養い、住宅ローンを抱え、親の面倒もみなくてはならない年齢層だったため、大きな問題とされました。若者に対しては「就職できないならコンビニでアルバイトすればいい」という話になりがちなのに、中高年に関しては「一定水準以上の賃金が支払われる正規雇用の確保」が社会的要請と考えられていたのです。 
 
完全失業率の推移(出典:総務省)

完全失業率の推移(出典:総務省)

 

確かに中高年の失業は”今日食べるお金”の問題としてはより深刻です。しかし若年者の失業は、個人にも社会にも、より長期的かつ深刻な悪影響を及ぼします。
 
若いころに職業訓練が受けられないと、長期的なキャリア形成の土台が得られず、本人の経済力が長きに渡って毀損されることに加え、社会の人的資本の蓄積が進みません。報酬の低さから結婚や出産の動向にまで影響を与え、そういった人が多くなれば、今までとは異なる社会階層さえ作られてしまいます。
 
また、誰にとっても”報われる経験”が得られないまま努力を続けることは難しく、高じれば社会に敵対的な感情を持つ人も増加するでしょう。生活費を借金することに抵抗感がなくなる(というか、日常的にそうせざるを得ないので慣れてしまう)人も出てきて、貯蓄を通した社会資本の蓄積も行われなくなります。
 
こういったことから、今では日本でも多くの人が若年者の就業問題について、大きな問題意識を持つようになりました。
 

道をそれた人に厳しい日本社会

にも関わらず、いったんキャリア形成の道からそれてしまった人に対して、世の中はかなりシビアです。30代になってまともな職業経験のない人は、どんなに多くの企業に応募しても、書類選考で落とされてしまうことが大半でしょう。
 
彼らに対して”甘えている””親に依存している”と批判する意見もあるし、実際そう言われても仕方がない人もいるでしょう。けれど、たとえ多少、本人に非があったとしても、たかだか20代の時にちょっとした甘えがあったというだけで、その後の”一切のチャンス”を奪ってしまうのはいかがなものかと思います。
 
人間しか資源がない国として”もったいない”し、本人たちの人生は社会を恨んで無為に生きるには、まだあまりに長く残っています。けれど現実問題として、30歳まで定職経験のない人を雇う企業は多くはありません。
 
例えば、マンションの管理人の仕事は、定年退職後の人向けの再就職先ポジションとして定着していますが、「同じ給与でいいです」といって”30代で定職経験のない人”が応募してきても、60代の再就職派には勝てないのではないでしょうか?
 
日本は「長い間我慢してきた人」をとても高く評価します。現時点での能力ややる気や適性の前に、「過去にどうであったか」が重視されるのです。
 
たかだか数年間、生き方や仕事について悩んだり迷ったりしてきた人が、一生罰を受けなくてはならないほどの罪を犯したとは思えません。それでも彼らにはチャンスが与えられなくなってしまうのです。
 

若者に”公共事業”を!

ではどうすればいいのでしょう? ちきりんは、こういう時こそ”公共事業”が必要だと考えます。民間企業はそういう人を雇う余裕がありません。市場のルールでは生きていけない層をバックアップすることこそ、公的部門の仕事なのです。
 
これまでは中高年の失業対策として、大量の”箱モノ工事”に予算が付けられてきました。これからは公共事業で若者を大量に雇い、「その仕事に数年従事すれば、若者が民間企業に評価してもらえる労働実績を得られる」ような機会を、大量に提供すればいいのです。
 
ちきりんが一番疑問に思うのは、若年者雇用対策として”面接指導”とか”履歴書の書き方指導”が行われるという話です。企業は、面接や履歴書の書き方がうまい人を求めているわけではありません。仕事の経験や具体的な実績がある人を求めています。
 
つい先日『首相官邸ホームページ』更新費用に4500万円、というニュースが出回ったが、それを若手の仕事に回せば...

つい先日『首相官邸ホームページ』更新費用に4500万円、というニュースが出回ったが、それを若手の仕事に回せば…

例えば、地方公共団体や、霞が関の外郭団体のホームページ作成を”定職経験のない人”にやらせてみてはどうでしょう? そういった団体の広報目的のWebサイトなら、少々デキが悪くても問題はありません。

 
Webサイト作成のスキルのある人(プロジェクトマネジャー)1人とトレーナー1人に、定職経験のない若者10人を雇って、マネジャーが具体的な指示を出し、指導しながら、作業はすべて彼らにやらせるのです。そうすれば彼らは履歴書に「○○団体のホームページを作成」と書くことができるようになります。
 
年金の取り立て業務や、公共調査のためにあちこちに電話をする仕事、また、市民からの問い合わせを受ける電話作業にもそういう人を雇って、仕事の仕方を教えながら経験を積んでもらえばいいのです。
 
そうすれば民間企業の「集金業務」や「テレマーケティング」「コールセンター」の会社に履歴書を出す時に、アピールできる職務経験が手に入ります。
 
スキルや経験のないまま職を探している人に必要なのは、面接の練習やカウンセリングではなく、”数年の定職経験”であり、市場で需要の高い(日本人しかできない)仕事の具体的なスキルです。
 
特に不況期には”訓練が必要な人””経験のない人”の採用は民間企業にとって、大きな負担です。そういう時にこそ、公的部門の出番のはずなのです。
 
そんじゃーね。

<『ビジネスメディア誠』その他の記事>

>>  「日本は三流の国」と言われた――マイケル・ウッドフォード氏インタビュー
>> 電子文具の未来を占う――スマホで手書きのデジタル化は一般化する?

●Business Media 誠http://bizmakoto.jp/

2007年4月に創刊した、30代のビジネスパーソン向け総合ビジネス誌です。コンセプトは「ニュースを考える、ビジネスモデルを知る」。社会の構造が大きく変わりつつある今、伝統や慣習が参考にならない世の中を、自立的に生き抜こうとするビジネスパーソンに向けて、仕事革新・自己革新を支援するメディアです。

誠編集部では、毎月1回、ビジネス情報番組「ビジネステレビ誠」を制作し、Ustream&ニコニコ生放送で配信しています。次回放送日の確認と視聴はこちらのページから可能です。