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革新的なプロダクトは、3つの思考から生まれる~MAKER時代のプロダクトデザイン論【五十嵐悠紀×宮下芳明×渡邊恵太②】

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来春、明治大学中野キャンパスに新設される総合数理学部先端メディアサイエンス学科の教員となる五十嵐悠紀氏が、新たに同僚となる気鋭の研究者・宮下芳明氏、渡邊恵太氏の両名と座談会を実施した。

前編では、現在の日本では文化を創出するような「新しい体験」を提供できるプロダクトが生み出されていないこと。また、イノベーティブなモノづくりが可能になる環境がそろっていないことなどが議論された。そこで後編では、研究・開発者の視点で、変化の激しい時代の中でイノベーティブなプロダクトを生み出すための必要な条件について、3人で考えてもらった。

明確な答えのないこのテーマについて、目下「未来のモノづくり」デザインに挑戦している3人が示す方向性とは何か。彼らのモノづくり哲学を通して、イノベーションを起こすプロダクトデザイン論について掘り下げてみよう。

「作って満足」はNG!フィードバックが成長をうながす

―― 宮下さんは、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科のサイトで、新しい体験をもたらすプロダクトを作るために、「発想力」と「技術力」を磨くことが必要だと話されてましたね。

宮下 はい。これらは、ハウツー的に学べることではないと思うんです。自力で発想する経験をできるだけ多く積んで、「アイデアはこうやって生み出すのか!」と感じ取らなければ身に付かないでしょう。

五十嵐 ブレストなどをする時、人の意見をつぶさないというのは基本中の基本。思いついたことは何でも話して構わないんですが、誰かの意見を否定することだけはダメなんです。たまにいますよね、ブレストで人の意見をつぶしてばかりの人(笑)。そうではなく、人の意見にアイデアを加えて育てる経験を重ねることも、発想力を鍛えるためには有効ですね。とにかく、実践あるのみなんです。

渡邊 僕は基本的に、アイデアって誰しもが持っていると思っているんです。ただ、アイデアを人に話した後でつぶされるケースが多い(笑)。例えば、僕が最初に『CastOven』を思いついた時、「電子レンジでさぁ、待ち時間に動画を流せるようにしたらどうかな?」って人に話しても、みんなピンとこなかったんです。で、「それって面白いの?」、「そんな商品、もうあるんじゃない?」なんて言われてものすごくショックを受けたんです。

渡邊氏が発案・開発した『CastOven』。2009年には「Mash Up Award 5」にて優秀賞、審査員特別賞を受賞している

宮下 それはかわいそう。

渡邊 伝え方が悪くて、せっかくのアイデアがつぶれてしまうのはもったいないですよね。そこでお勧めしたいのが、「実際にモノを作ってしまうこと」です。われわれは、プログラミング言語という強力な道具を持ってます。

だから、話して人に伝えるんじゃなく、「動かして伝える」方が良いんですよ。実際にモノがあると、専門分野じゃない人にも魅力が伝わるし、ユーザーとしての意見がもらえる。モノを通じたコミュニケーションが生まれるんですよね。

五十嵐 でも、今のモノづくり系エンジニアの方って、モノを作る機会が意外と少ないんじゃないですか?

渡邊 そう思います。自分で考え出したものを、作り出せていないんですよね。あるいは、コードは書いているけれど、細分化されたフェーズだけを担当していて、本来の意味でのモノづくりには携われていないとか。

五十嵐 それから、モノを作ってそれで終わりというケースも多くありませんか? 何かを作り、それを人に見てもらうところまでは、なかなかできていないように思います。例えば何かのアプリを作った場合、それを使ってもらい、フィードバックが得られると、すごく参考になるんですよ。

最近は、アプリもたくさんあるので、ストアランキングで上位に入ったりしないとなかなか多くの人に使ってもらえませんが……。もうちょっと、「作る→使われる→フィードバックをもらう」という流れが気軽に体験できるようになるといいですね。

渡邊 研究者には、学会というアウトプットの場があるのが大きいですね。とにかく、アウトプットすることは重要だと思います。

宮下 僕もまったく同感ですね。学会でのフィードバックによって、さらに生産性が加速すると思います。
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