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[特集] IT復興2.0 (1/3) ボランティアを、「社会のための活動」から「自分のための活動」へ

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2011年3月11日に発生した、東日本大震災から1年が経った。あまりにも多くの人生を変えてしまったあの日以来、現地での復旧作業と数え切れないほどの復興支援活動が行われてきた。その一つとして、IT技術を活用した復興支援に力を注いだ人や団体も多数見受けられた。

被災直後から今まで、変わらぬ気持ちで復興支援活動を行う人たちは少なくない。しかし、マスで見た場合、「どうにかして復興の手助けをしたい」という想いとは裏腹に、日にちが経てば経つほど復興支援活動に割く時間や労力が減っていく傾向が散見されているのも事実だろう。

継続的に復興支援を行うために必要なものは、一体何なのだろうか。そのヒントが、ボランティアインフォ藤代裕之氏を中心とするメンバーが立ち上げたWebサービス『skillstock』に隠されていた。

「ボランティア」の概念を変えるプラットフォーム『skillstock』

ご当地キャラクターがスキルを登録するなど、誰でも、どんなスキルでも活かせることが『skillstock』の特徴だ

ご当地キャラクターがスキルを登録するなど、誰でも、どんなスキルでも活かせることが『skillstock』の特徴だ

藤代氏が旗振り役となって立ち上げた『skillstock』は、まさに「個人が無理なく継続的に復興支援活動を行えるように」という想いから生まれたサービスだ。

「ボランティアをする、という言葉には、独特のハードルの高さがあるじゃないですか。だから、もっとハードルを下げて誰もが参加しやすい仕組みを作りたいと思っていたんです。そこで生まれたのが『skillstock』でした」

これは、震災直後から長くボランティア活動を行ってきた藤代氏だからこそ言える指摘だろう。

『skillstock』の特徴は、専門性の高いスキルだけでなく、自分のできること、やりたいことを何でも良いからスキルとして登録することができること。スキルを登録すると、『skillstock』のページに自分のスキルに合ったボランティア情報が表示されるようになっている。そこで興味が湧いたボランティアがあれば参加するというのが、サービス利用の一連の流れだ。

「例えば、『子どもと遊ぶ』や『本を読み聞かせる』といったことも、活かせるスキルとして登録できます。もっと言えば、自分のスキルに自信がないけど興味があることを登録して、ボランティアに参加しながらスキルを磨いても良い。できること、好きなことを通して、楽しみながらボランティア活動をしてほしい、というのがこのサービスの理念です」

「どんなことも『自分へのメリット』がないと続かないのではないか」

藤代氏(写真中央)を中心に、企業に所属しているメンバーや大学に通うメンバーなどが集まり、プロボノ的に『skillstock』プロジェクトを立ち上げた

藤代氏(写真中央)を中心に、企業に所属しているメンバーや大学に通うメンバーなどで立ち上げた『skillstock』

『skillstock』が目指すのは、「プロジェクトを経験することで得られるスキルの蓄積」だ。分かりやすく言えば、そのプロジェクトに参加すれば、直接エンジニア(またはビジネスパーソン)としてのスキルを身に付けられるということ。

例えば、『skillstock』の開発でページデザインを担当したのは、検索サービス『かわいい検索!』の開発にも携わっていた女子大生だという。彼女たちは自ら手を挙げ同サイトのデザインを担当することで、同時にデザインスキルを実践的に磨くことができた。

また、次ページで取り上げた復興支援ネットショップ『南三陸deお買い物』の記事を読んでもらうと分かるように、運営者の勝又伸一氏は継続的に復興支援を続けていくうちに、その活動内で得た知見を、自身のビジネスにも活かせる経験値として蓄積することに成功している。

従来の「ボランティア」という言葉には、どうしても「自分が他者に貢献する」という印象が強かったように感じるが、藤代氏の言葉を借りれば「そこに奉仕としてのボランティアの限界が見える」のではないだろうか。

つまり、ボランティアする側がもっと得をしても良いということだ。藤代氏はこう続ける。

「誤解を恐れずに言うと、どんなことでも自分にメリットがないと続かないのではないか、ということをずっと考えていました。震災が発生してから精力的に支援活動を続けている人もいますが、多くの人は時間と労力を割けずに支援活動と疎遠になっていく。ボランティアに参加しながら自分の持つスキルを磨き、普段の仕事にも役立つようになれば、続くのではないかと考えたのです」

プロジェクト型社会へのソーシャルシフトが進んだら……

加えて藤代氏は、3.11以降の人々の働き方に、あるソーシャルシフトを感じ始めている。

「以前から注目されているコワーキングやノマドといった組織に所属せずに働くスタイルが、3.11を機にさらに注目を集め始めました。そうした働き方を実践できるのはスキルの高い人だけだと言われますが、夜や週末にコワーキングスペースに集まり、スキルを活かしてプロジェクトに参加するビジネスパーソンがいてもいいのではないでしょうか」

一つのプロジェクトに、組織の枠を超えて人が集まる。これは、エンジニアの技術コミュニティと似ている。技術者にとって親和性の高いこのスタイルが、広く社会一般にも普及するかもしれないと言う。

「わたしたちのチームも、『skillstock』というプロジェクトを通じて多くのことを学んでいます。市場がシュリンクしている企業に所属する若い方たちにとって足りないのは、プロジェクトの経験数と成功体験ではないかと思うんですね。であれば、ボランティアは社外で経験できる一つのプロジェクト。『skillstock』を利用して、成功体験を積んだり、スキルを磨く機会を得られるわけです」

異なるバックボーンを持つ人同士が集まるプロジェクトから多くを学び、自社や自分にもメリットがある形で、復興支援を続けていく。そんな貢献の形こそが、2012年の「3.11」以降に求められる、サステナビリティー(持続可能性)の高いスタイルなのかもしれない。

次ページでは、実際にこの「IT復興2.0」を体現するエンジニアの一人、勝又伸一氏の支援スタイルを紹介したい。

>>[特集] IT復興2.0 (2/3) 「南三陸deお買い物」運用を通して勝又伸一氏が得た、隙間市場と事業への応用
>>[特集] IT復興2.0 (3/3) アクセンチュア中村彰二朗氏「会津若松市スマートシティ化計画で、新産業と雇用を創出する」

【「IT復興2.0」を体現する技術者を紹介してください!!】

本特集のテーマである
「自分たちにもメリットがある形で、復興支援を続けていく」
を体現する活動を応援していく目的で、
支援活動と自身の利益(※)を両立してきたエンジニアを募集します。
(※スキルアップ、マネタイズなど、仕事面で活かせるものなら何でもOK)

自薦・他薦は問いません。
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