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[特集] IT復興2.0 (3/3) アクセンチュア中村彰二朗氏「会津若松市スマートシティ化計画で、新産業と雇用を創出する」

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東日本大震災から4カ月余りが経った2011年7月下旬。会津若松市、会津大学との共同でITを活用した復興と産業振興、雇用創出に向けた取り組みを発表したのがアクセンチュアだ。

8月1日には同市内に「福島イノベーションセンター」を開設。5人の常駐スタッフを置き、復興への提言と具体的な施策づくりを推進してきた。その意義と役割について、センター長を務める中村彰二朗氏は次のように語る。

アクセンチュア株式会社
中村彰二朗氏

「東日本大震災によって、福島県はITインフラも大きな被害を受けました。一方で会津地方は地震や津波による被害がほとんどなく、放射線量も東京とほぼ変わらない数値であり、県内で先行して復興に向けた活動が開始できる数少ない地域です。首都圏に一極集中している現状から分散させることも含め、持続可能で、安心・安全な社会を実現する基盤づくりを支援したい。地域の産業振興、そして雇用創出に向けた支援を行うことが、わたしたちの目的でありビジョンです」

この構想を具体化するため、同センターでは会津若松市および会津大学と定期的に会議や検討を重ね、2011年中に復興提言として「17の施策」を策定。大震災から1年の節目となる今年の3月11日、会津大学で行われた復興シンポジウムの席上で、中村氏自らプレゼンテーションを行った。

「福島県内から避難している方たちへの生活基盤づくりのサポートをはじめ、地場産業や医療、観光を含めた振興といったものを、ITの活用によってどう実現していくのかをできるだけ具体的に提案しました。この提案を実現させ、短期間での復興支援ではなく中・長期的な産業振興と雇用創出に結び付けていきたいと考えています」

中村氏以下、常駐スタッフは5人だが、アクセンチュアでは延べ数十人のコンサルタントが同センターを拠点にプロジェクトに参加。地元自治体だけでなく関係する省庁などとの折衝が必要な場合は、東京オフィスなどでも対応に当たったという。

会津若松市をICT産業の一大集積地に

世界でも先端のスマートシティづくりに会津若松市が適している理由として、中村氏は会津大学の存在を挙げる。

「会津大学は公立大学として来年で開学20年になりますが、IT専門の大学として国内最大規模を誇ります。そこに集積されているIT技術のノウハウを活かせば、会津若松市をスマートシティのメッカにすることができるのではないかと思います。また、すでに地元で活躍する企業を中心に数10社を超えるIT企業がプロジェクトへの参加意思を表明しています。こうしたバックグラウンドに加えて、わたしたちが世界中のスマートシティプロジェクトで培ったPMOとしての経験を組み合わせることで、世界的な先端スマートシティが実現できるのではと思っています」

会津大学は、ICT産業の集積と教育・研究の一大拠点づくりを推進してきた。世界10数カ国から第一級の教授陣が集まり、英語での授業や、50を超える海外有名大学との連携など国際性も豊かな大学だ。また、ベンチャー企業輩出数では公立大学日本一を誇るなど、地域産業振興にも力を入れている大学である。

ここにアクセンチュアが参画して、先端のIT活用や普及に関する具体的な施策、新しいビジネスモデルを策定していくことは追い風になりそうだ。

「17の施策」のうち、ドコモのテストセンター設置など、既にいくつかの施策は現実的に動き始めている

「17の施策」のうち、ドコモのテストセンター設置など、既にいくつかの施策はすでに動き始めている

「周辺の多くの地域がいまだ復旧から復興へと向かっている中で、会津若松市はすでに復興フェーズに入っています。ここから復興を超えて世界有数のスマートシティや都市OS(スマートシティのIT基盤)づくりを発信していくことで、新たな市場開拓や企業誘致にもつなげていきたいですね」

こうした取り組みが、すでに一つ新たなビジネス創出にも結び付いている。今年1月下旬、アクセンチュアはNTTドコモと共同で、会津大学産学イノベーションセンター内にスマートフォン向けコンテンツ開発支援サービスを行う「リモートテストセンター」の設置を発表。3月下旬より順次サービスを提供していくとアナウンスしている。

これは、コンテンツプロバイダーがスマートフォン向けのアプリを開発する際、ネットを介して実機動作の検証が可能になるサービス。首都圏に一極集中するITインフラをグリッド化するためのサービス拠点を会津若松市内に設けた成功事例の一つだ。

スマートシティのメッカで、世界中から求められるIT技術者を育成

先に述べたような会津若松市スマートシティ化計画を推し進める上で、中村氏が重要なファクターとして挙げているのが、あるIT人材の育成である。

「現在考えているのは、防災・自治体・医療・介護支援といったさまざまな分野において、クラウド化したデータを分析・解析できるアナリティスクスエンジニアと、それらのデータをサイバーテロから守るためのセキュリティエンジニアの人材育成です」

会津大学では、ITに特化した教育・研究に加えて、世界十数カ国から教員を招くなど、世界標準を満たした人材の育成にも注力している。この教育環境を活用し、「ITと語学、基礎的な能力と資質を身に付けている若いエンジニアを対象に、アクセンチュアが持つ実績を通して世界でも最先端の技術を学び、発信できるITエンジニアを輩出したい」と中村氏は話す。

アクセンチュアはこれまで、世界で約70を超えるスマートシティづくりを手掛けてきた。こうした実績が、会津若松市を拠点にした壮大なプロジェクトの確かな推進力になっていることは間違いない。

会津若松市、会津大学、アクセンチュアという三者によるこのプロジェクトは、従来であれば「産官学連携」のケーススタディに過ぎなかったかもしれない。しかし、2011年3月11日の東日本大震災からの復旧・復興を所期の目的にした今回の取り組みは、中・長期的なビジョンを持つ持続可能な地域振興策の一つとして確かな広がりを見せ始めている。

「大震災からの復旧ももちろん大切です。しかし、その次の段階として、もっと中・長期的な視点に立つ必要性があるというのも事実です。そのためにも、その地域の持つ資源や特性を、ITを活用して魅力ある都市へと発展させていく。都市自体に魅力が生まれ、さらに最先端技術を学べる環境を整えれば、東京で働く地元のエンジニアたちのUターン転職も増えるでしょうし、わたしたちとしても歓迎したい。このプロジェクトを成功させ、新しい”都市戦略づくり”のモデルケースとして世界に発信していきたいですね」

取材・文/浦野孝嗣、小禄卓也(編集部)

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