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「東大阪の町工場とWebベンチャーが融合されるような場作りを」関西Tech界を活性化させる『ITisKANSAI』がスタート

タグ : MAKERS, スタートアップ, 勉強会, 家入一真, 関西 公開

 

大阪にある、とある串カツ屋にて。

学生 「(スマホをいじりながら)俺な、こんな製品が作りたいと思ってんねん」
友だち 「それ、オモロイやん。でも、こんな機能があればもっと……」

~しばらく続く議論~

隣の席にいた町工場の職人 「お兄ちゃん、それなら○○すれば作れんで」
学生 「ホンマに!! じゃあ、おっちゃん、こんなんは作れる?」

~しばらく続く議論~

職人 「で、その製品をいくつ作りたいねん?」
学生 「まぁ、俺ら用に2~3個あればエエと思ってんねんけど」
職人 「そらムリや。工場ちゅーのは、もっと大量発注でないと動かせへんで」

~しばらく続く講釈~

職人 「ところでお兄ちゃん、そのスマホアプリって何ができんの?」
学生 「おっちゃん知らんの!? 今ってこんなことできんねんで」

そんな会話がそこらじゅうで行われるようになったら、関西が生まれ変わるのではないか? 神田智広氏は、そんな理想像を描きながら、『ITisKANSAI(イッツ関西)』を立ち上げた。

メーカーや町工場のモノづくり人材と、IT・Web人材の交流が狙い

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『ITisKANSAI』の発起人・神田智広氏

『IT is KANSAI』とは、関西地区にある大手メーカーや町工場の人たちと、IT・Web界隈のエンジニアが交流する場を作ることで、新しいビジネスの種を生み地域活性化を支援する非営利プロジェクトだ。

発起人の神田氏は、2012年末にそれまで職場としていた東京の飲食店を辞め、今年から生まれ故郷の大阪で同プロジェクトの運営に取り組んでいる。

「ITisKANSAIの発起人となった数名と、以前から『関西には世界的な電機メーカーや技術力のある町工場があるのにもったいない』、『もう一度元気な経済圏にできないものか』と話をしていたんですね。

メーカーや工場が不振にあえぐようになった原因はさまざまあると思いますが、一つだけ間違いないのは、技術的に優れたモノづくりの担い手がたくさんいるということ。そこで、彼らと異業種の人たち、特にIT・Web系の人たちが交流する場を作ることで、何か突破口が開けるんじゃないかと思ったんです」

神田氏によると、高度成長期に隆盛を誇った東大阪の町工場も、最近は世代交代が進み、経営難で工場をたたむ人も多いという。

だが、中には2代目、3代目の社長が従来の「メーカーの下請け事業」から転換を図ろうと、新しい自社プロダクト開発に励み、積極的に営業展開をしている工場もある。

『ITisKANSAI』は、そういった熱意ある町工場や各種メーカーに在籍するモノづくりエンジニアの力を発火材として、IT・Web界隈の作り手たちやビジネスディベロップメントに長けた人たちとのマッシュアップを通じて、新しいモノづくりのアイデアを生み出したいと考えている。

プロジェクトは神田氏のポリシーに共鳴した数名で運営されており、中には女性向けのファッションアプリ『papelook(パペルック)』と『pape.mu girls(パペムガ―ルズ)』を展開するパぺルック取締役・松浦和博氏などの名前も。松浦氏は東京を拠点に活動しているため、関西と東京にブレーンが分散している形だ。

「こういう運営体制にしているのは、今は東京の一極集中状態となっているWeb界隈の人たちが、いずれ関西のモノづくりエンジニアと交流しながら新しいビジネスを作る、といったようなこともできるはずと考えているからです。関西地区に散在する『モノづくりの知恵』をオープン化して異業種コラボレーションを実現するには、僕ら運営側が地区を限定せずに活動する利点があるのではないかと思っています」

異業種コラボに立ちはだかる、「共通言語」の違いをどう埋めるか?

だが、『ITisKANSAI』が目指す理想形を実現するまでには、険しい道が待っていることを神田氏は理解している。「地域活性化」や「メーカー人材とIT人材のマッシュアップ」とは、口で言うほど簡単にできることではないからだ。

ITisKANSAI-vol1

2012年6月に行われた『ITisKANSAI vol.1』の模様はUstで公開されている

事実、昨年6月に大阪のコワーキングスペース『Osakan Space』で行った『ITisKANSAI vol.1』は、モノづくりエンジニアの来場者が極端に少なく、狙っていたようなシナジーが生まれなかったという。

「やはり一番の障壁は、“共通言語”がないという点だと思っています。Web系開発のようにネット環境があれば多くの人とコラボして素早くリリースできるサービスづくりと、モノ系のプロダクト開発はやり方が異なりますから。加えて、Web界隈では数多く開かれている勉強会やハッカソンも、モノづくりの人たちにはなじみの薄いものです。どのような場作りが最適か、僕たち自身も試行錯誤しながら探っていくしかありません」

その試行錯誤の一環として、2月9日に開催されるvol.2と、3月開催予定で調整しているvol.3では、それぞれ開催テーマを分けている。

vol.2は「ゼロからWebサービスを作る」と題してIT・Web系エンジニアにターゲットを絞り、全10回のワークショップ(月2回程度/平日夜や土日に開催)でサービス開発をするのが目的。一方のvol.3では、メーカー人材に訴求できる内容を検討中だ。

ワークショップでは開発とビジネスディベロップに精通するメンターを立てる構想だが、vol.2はWebビジネスの経験が豊富な人を、vol.3ではモノづくり系の専門家を予定している。

「まずは『ゼロからサービスを創る』という思いの部分で共感し合える人に集まっていただき、それぞれのエコシステムがある程度でき上がった段階で両者を橋渡しする考えです。もちろん、僕らは『場作り』をするのが主眼なので、もし参加者同士が早い段階でマッシュアップを望む場合は、プロジェクト内容を適宜変更していきます」

冒頭の会話にもあったように、普段はまったく違う生活圏&文化圏にいる作り手たちも、「Make」という一点を通じてであればコラボレーションが生まれる。だが、そこから新しいビジネスを創出するまでには、お互いの技術や商習慣を学び合ってソリューション開発をしていくことが必要不可欠だ。

その場作りが、草の根で動き出している。

≪IT is KANSAI vol.2開催概要≫
ITisKANSAI-vol2

■開催日:2月9日(土)18:30~
■会場:中央会計株式会社(大阪市中央区)
■概要:上記した内容で「ゼロからサービスを作る」ためのキックオフとなる初回は、ゲストスピーカーに

Liverty代表/Web起業家 家入一真氏
富士山マガジンサービス CTO 神谷アントニオ氏
MONOspace 代表兼Webデザイナー 板橋聡氏

を迎え、Webサービスの企画・開発ノウハウや体験談が展開されるという。
詳細は以下URLにて。
http://itiskansai.com/

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)