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「シャドーIT」全盛の今、SEがやるべき2つの新たな役割~『kintone』が好調なサイボウズに聞く【特集:2B Hack】

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企業向けグループウエアで知られるサイボウズの業務アプリクラウド『kintone』が、順調に契約社数を伸ばしている。2011年11月の提供開始から約2年が経った2013年末時点で、導入企業は1000社を突破。さらに3カ月後の今年3月末時点で1300社まで伸びており、勢いが増している。

好調の理由は、クラウドベースですばやく業務アプリを構築できる点と、カスタマイズ開発の容易さにある。

『kintone』でアプリを作るには3つの方法がある。【a】すでにアプリストアに用意されているアプリを利用するか、【b】業務で使っているExcelファイルをアップロードし、それを元に作るか、【c】マウス操作で必要なパーツをドラッグ&ドロップすることで、手軽に作ることができるのだ。

ノンプログラミングでも業務アプリを作成できる点や、新しいエンタープライズアプリサービスが直面しがちな基幹業務システムとの連携問題をAPIによって解消していることが、普及の糸口となっている。

さらに、今年6月8日に行ったアップデートでは、カスタマイズ開発の効率性を高める新機能「プラグイン」を発表。海外展開を見据え、クラウドストレージの『Box』やカスタマサポートソフト『Zendesk』との連携プラグインも同時リリースしている。

『kintone』は以前から、業務内容に合わせて柔軟にアプリ開発ができるよう、JavaScriptによるカスタマイズ機能を提供してきた。それが今回のアップデートで、複数のJavaScriptファイルをまとめて1つのプラグインとしてアプリに適用でき、GUIの設定画面も作成できるようになった。アプリ開発にかかる手間をさらに省き、改善スピードを高めるのが狙いだ。

エンタープライズITの世界では、情報システム部門が導入した既存のシステムがフォローしきれていない細かな業務を、各事業部(または社員)が別のIT製品を駆使して行うことを「シャドーIT」と呼ぶ。

『kintone』のようなクラウドベースのアプリプラットフォームが成長している背景には、このシャドーITに対するニーズが高まっていることがある。従来の情シス主導の業務アプリ開発に、限界が出始めているとも換言できるだろう。

そこで、『kintone』のプロダクトマネージャーを務める栗山圭太氏と齋藤晃一氏に、この“端境期”にサービス提供側=SIerやITベンダーのSEに求められる役割を聞くと、2つの変化があると明かしてくれた。

【1】業務部門の「ロングテールなニーズ」を把握すること
【2】「インストラクター型エンジニア」への進化

その理由を、2人のコメントから紐解いていこう。

「業務部門主導」のIT活用が進む中で出てきた多様なニーズ

『kintone』のプロダクトマネージャーを務める栗山圭太氏(左)と齋藤晃一氏(右)

まず、【1】のロングテールなニーズについて、栗山氏は「近年、多くの企業が情報システム部門の存在意義そのものを見直そうとしている」と明かす。使い勝手が悪かったり、業務の変化にスピーディーに追従できないなどで、導入したシステムや業務アプリが本来の目的どおりに活用されないことが多かったからだ。

事実、同社は『kintone』の提供を通して顧客企業から出てくるニーズを見聞きするうち、例えばエンドユーザーがExcelで管理している情報の部門間統合など、手間のかかる作業をシステムのサポートなしで強いられているケースがまだまだあると気付かされたという。

「kintoneの提供を始めた当初は、営業日報ツールのようなSFA関連のアプリニーズが多かったのですが、現在は販促品管理や関連企業間の人事情報共有、業務プロセス管理など、幅広い業務のためのツールとして導入いただく顧客が増えましたね」(栗山氏)

こうした現状を踏まえると、情シス部員やSEは今後、現場の細かなニーズ一つ一つに対して的確に要件を把握し、アプリを駆使した解決策を提示できるようにならなければならない。

「kintoneは業務アプリに必要な『データベース』、『コミュニケーション』、『ワークフロー』の3つの機能を標準搭載しています。そして、これらをJavaScriptを使ってカスタマイズするという設計思想で開発してきました。業務アプリにこそ、自由にカスタマイズできる柔軟性を持ったプラットフォームが必要だと考えたからです」(齋藤氏)

『kintone』が既存の基幹システムとセキュアに連携することを前提にカスタマイズ開発の容易さを追求してきたのも、エンジニアが業務理解に時間と手間を費やせるようにするためだと言えるだろう。

「インストラクター型」のプレーヤーが生み出す新ビジネス

『kintone』開発にかかわり続けてきた齋藤氏が考える「これからの業務系エンジニア像」とは?

続いて【2】について、『kintone』のような業務アプリクラウドがより普及していくと、「作って終わり」ではない開発が求められるだろうと栗山氏は言う。

「例えば、石川県金沢市にあるアリーナシステムというパートナー企業さまは、顧客先を訪問して求める業務アプリの内容を詳しくヒアリングした上で、kintoneを活用して短期間でアプリを開発・提供しています。しかも、他に活用できそうな部署や業務などを追加で聞きながら、カスタマイズ方法や使い方まで教えながら導入するという方法を採っていると聞いています」(栗山氏)

この事例は、まさに「インストラクターとしてのSE」という新しい役割が顧客に望まれていることを象徴している。

ほかにも、「予算が定額で、どのような業務アプリを開発・導入するか」といったコンサルテーションから入るディベロッパーも誕生しているという。

『kintone』を軸にこういった新ビジネスが生まれていることを考えると、これからのSEには「上流工程」だけでも「実装」だけでもない、両方を兼ね備えた動きが求められるようになると推察される。

「我々はこの時流を汲み、kintoneを軸としたエコシステムづくりに注力し始めています。地方のディベロッパーの方々が運営する勉強会をサポートしたり、栗山が紹介したような新たな動きをしている販売代理店へ積極的に情報提供をしていくことで、“インストラクターディベロッパー”をもっと増やしていきたいと考えています」(齋藤氏)

「北米型」にシフトした時に本格的な転換期が来る

『kintone』の営業促進を担う栗山氏は、クラウド型プラットフォームの持つ可能性を肌身で感じているそうだ

『kintone』の海外展開についてはどうなのだろうか。

「海外、特に北米企業へのヒアリングで分かったのは、企業内に“開発のできるエンジニア”が多いため、kintoneのように自由にカスタマイズできるアプリクラウドの需要が数多く眠っているということ。そしてもう一つ、エンドユーザーが直接触れる画面UIに対する要求が高いということです」(栗山氏)

前述したプラグイン機能の新搭載や、GUIへのこだわりは、この現状を受けての次なる布石ともいえる。齋藤氏が語る「エコシステムづくり」を、さらに加速させる形だ。

日本でも業務システム開発の内製化に動く企業が増えている昨今、いずれは「北米型」の業務アプリ開発が主流になると先読みしても、あながち間違ってはいないだろう。本格的に潮目が変わった時、ここで述べた2つの新たな役割がより重要度を増すのは想像に難くない。

企業内の情シス部員やSEは、今まさにキャリア形成の見直しを迫られている。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/玄樹

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