エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

OSSデベロッパーがTwitter Japan勤務の「次の一手」としてやってきたこと【2012年のインプットlog-山本裕介】

公開

 
業界で名の知れたプログラマーは、今年1年何を学んでいたのか? 2012年も残りわずかとなり、いよいよ「年忘れ」の時期になった今、あえて今年1年で学んだことを忘れる前に取材・記録しておこうという本企画。「同業者が役に立ったものは、自分にも役に立つはず」という仮説を基に、彼らの学びlogから、今年の流れと来年の動向予想をしてみよう!
プロフィール
yusuke-yamamoto2

フリーランスエンジニア
山本裕介氏 (@yusuke

Twitter APIのJava向けライブラリ『Twitter4J』や、トラブルシューティングツール『侍』などを開発してきたOSSデベロッパー。国内のITベンダーを経て、BEAシステムズやファストサーチ&トランスファ、Red Hatといったエンタープライズ系の外資企業に在籍。2011年9月よりTwitter社のデベロッパーアドボケイトに就き、今年9に退職。フリーランスとして活動中

山本氏の2012年はどんな1年だった?

「今年は例年以上にいろいろな言語やプラットフォームを試した年だった気がします」

そう話すのは、2012年9月にTwitter日本法人のデベロッパーアドボケイト(Twitter APIを利用する社外エンジニアのサポート担当)を辞し、10月からフリーランスエンジニアとして活動を開始した山本裕介氏だ。

Twitter4J

Twitter APIのJavaラッパとして有名な『Twitter4J

これまでTwitter APIのJava用ライブラリの『Twitter4J』やトラブルシューティングツールの『』など、OSSツールの開発者としても知られていた山本氏は、過去にも次の職場に転職をする合間にフリーランスの経験がある。

「ただ、最近は新しいサービスやアプリがどんどん開発されているので、フリーランスとして僕が次にやりたいことを探す上でも、情報収集は欠かせませんでした。だから、フレームワークやライブラリはもちろん、クラウドや開発ツール類は積極的に試すようにしていました」

中でも、

■ HerokuやCloud Foundry、OpenStackといったプラットフォーム型のサービス
■ Twitter社内でも使われていたJava、Ruby、Scalaの話題
■ JavaScriptの拡張言語として注目されるTypeScriptやDART、JSX

などの開発にまつわる最新トレンドは、できるだけもらさず吸収するよう努めたと話す。

「昔からライブラリやツールを作ってはOSSとして公開してきましたが、その方向性はフリーになっても変わりません。今後は開発者向けだけでなく、一般の人にも使ってもらえるサービスを作っていきたいので、当面は開発テーマを一つに絞らずいろいろ試していくつもり。そのため、なるべく幅広い情報に接するようにしているんです」

現在進行中の開発プロジェクトを見る限り、フリーになってからの山本氏の開発方針は、今まで以上に「手早さ」や「スピード感」の実現に傾いているようだ。

最近テストリリースしたジョークサービスの『カウントユースケ』や、幼い子へサンタクロースからのメッセージを届ける『@_santasan』を見れば、その軽やかなスタンスを感じることができるだろう。

countyusuke

自分のTwitterフォロワーに「ユースケ」が何人いるかを解析する『カウントユースケ

「最近気付かされているのは、プログラミングにすごく造詣が深いのに、ブログやTwitter、GitHubなどでアウトプットしていないエンジニアが非常に多いこと。『こんなモノを出したら笑われる』とか、『この程度のモノじゃ相手にされない』とか、やる前からあきらめてしまってる人が多い気がします」

エンジニアの世界は、より良いやり方を知っていればどんどん教えてくれて、協力を惜しまない人が多いと山本氏は感じている。

「そうした好意を受けない手はないと思うんです」

オープンにすること、情報発信することは難しくないし怖くない、そして大事なことだと示したいという意味も込めて、『カウントユースケ』や『@_santasan』も、「あえて荒削りな段階からオープンソースにしている」と話す山本氏(それぞれのGitHubは以下)。
https://github.com/yusuke/deathmar.ch/tree/master/countyusuke
https://github.com/yusuke/santasan

そんな同氏が、「フリーとして食っていくための地盤固め」として収集していた情報は、以下のような内容だ。

今年の山本裕介を支えた、注目インプットlog

【1】 JavaOne
http://www.oracle.com/javaone/index.html

ネット以外の情報収集の中で、もっともお金も時間もかけたインプットは『JavaOne』でした。技術動向だけでなく実際の「温度感」を把握するには、こうしたカンファレンスに足を運ぶのが一番手っ取り早いので、JavaOneにはここ3年ほど通っています。

もちろん『JavaOne』以外にも、気になるカンファレンスやイベントがあればできるだけ参加するようにしています。最近参加して印象的だったのは『Cloudforce』。Salesforce周辺の熱気を感じることができてよかったですね。

そういう肌感覚を持ちながら、「自分の持っている知識・技術を何か活かせる隙間がないか」と考えたりしています。

【2】 『Hacker News』
http://news.ycombinator.com/
【3】『DZone.com』
http://www.dzone.com/

dzone

愛読するプログラマーが国をまたいで数多くいる『DZone

RubyやScalaの最新動向のようなテクノロジー系の話題をチェックするのは、ベーシックですが、RSSリーダーを愛用しています。

RSSリーダーと合わせて重宝しているのは『Hacker News』や『DZone.com』です。特に『DZone.com』は、AgileZoneやmobileZoneなど、テーマごとにトピックがカテゴライズされているし、Voteボタンの数値でどれだけ話題になっているエントリなのか判断がつきやすいので気に入っています。

こうしたサイトで、聞いたことがないライブラリやフレームワークを知ったら、まずは英語で「知りたい名称+cheatsheet(カンニングペーパのこと)」とか「知りたい名称+getting started」とググってみて、アウトラインをつかむようにしてますね。

【4】 『JIRA』
http://www.atlassian.com/ja/software/jira/overview
【5】 『IntelliJ IDEA』
http://www.jetbrains.com/idea/

IntelliJ IDEA

チェコのJetBrains社により開発されるJavaの統合開発環境『IntelliJ IDEA

Twitter、Red Hat、ファストサーチでも使っていた課題管理ツールの『JIRA』や、チェコの会社が作っている開発環境『IntelliJ IDEA』など、イチ開発者として見た時、「日本でもっと普及したらエンジニアが助かるな」と思うツールがたくさんあります。

過去にベンダーで勤めていた際、自分ではイマイチと思っている製品でも何とか良い点を見いだして、お客さまに推さなければならないというジレンマがありました。今の僕はフリーなわけですし、自分が本当に良いと思える製品をニュートラルな立場で勧められる環境にあるわけです。

そこで、これらのツールの知識を深めながら、直接ベンダーに掛け合って“社外エバンジェリスト”のような形でプロモーションの一端を担わせてくれないかと打診しているところです。

フリーランスのエンジニアとして手っ取り早く収益を上げる方法は受託開発です。しかし、受託開発と平行して、自分で新しいサービスを育て上げるのは難しいのではないかと。そこで、フリーランスエンジニアとしてはやや特殊かもしれませんが、“社外エバンジェリスト”を収益源の一つとしながら、自分のサービス開発を進めていきたいなと思っているんです。

さらには自分が勧めたツールに関する情報は、巡り巡って自分の次のインプットにつながるはずです。

2013年は、「サービス・アプリケーション自体のOSS化」が増える?

さて、2013年に山本氏がフリーの開発者という立場でモノづくりを本格化させるにあたって、一つだけ決めていることがある。それは、これから提供するサービスも、OSSとして提供すること。

「フレームワーク、ライブラリをOSSとして公開する事例は多いですが、サービスそのものをOSSとして提供している事例は、CMS系のソフトを除いてほとんどありません。自分としては、これをやりたい。だから小粒なサービスでも良いのでどんどん公開していこうかと」

それらを気に入ってくれた誰かがpull requestを送ってくれることで、サービスが充実していったり、コードをフォークして新しいサービスが生まれたりなどのエコシステムを生み出すことができたら面白くなりそうだと考えている。

「大げさな言い方になりますが、OS、ミドルウエア、ライブラリといったプラットフォーム・部品にとどまらない『サービス・アプリケーション自体のOSS化』は、ソフトウエアの世界をさらに次のステージに引き上げる可能性を含んでいるのではないかなと考えています」

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/伊藤健吾(編集部)

>> 増井雄一郎氏の「2012年インプットlog」はコチラ
>> 和田卓人氏の「2012年インプットlog」はコチラ