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LINE開発者が明かす、大人もハマるLINEスタンプ“ヒットのヒミツ”―稲垣あゆみさん×藤井佐和子さん対談企画【from Woman type】

公開

 

キャリアカウンセラー・藤井佐和子さんが、自分らしく仕事を楽しんでいるステキなビジネスウーマンを毎回ゲストに迎えてインタビュー。

ゲストの実績や体験談から、女性ならではの「ビジネスを生む力」やワークライフバランス充実のヒントなど、長~く良い仕事を続けていくためのエッセンスを学んでいきましょう!(※記事提供:『Woman type』)。
プロフィール

株式会社キャリエーラ 代表取締役
藤井 佐和子(ふじいさわこ)

大手光学機器メーカー事務職を経て、インテリジェンスで女性の転職をサポート。現在はキャリエーラを設立し、キャリアコンサルタントとして女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティーサポート、大学生のキャリアデザインなどに携わる。カウンセリング実績は1万2000人以上。オフィシャルブログ『藤井佐和子のキャリアカウンセリングブログ』も好評

プロフィール

NHN Japan株式会社 ウェブサービス本部 UXチーム
稲垣 あゆみさん

大学時代に数社のネット関連企業でインターンを経験した後、韓国系ベンチャー企業の立ち上げに参加。その後、中国のIT企業の日本法人に転職し、検索サイトの企画や新サービス開発を手がける。2010年5月、Naver Japan(現在のNHN Japan)に入社。2011年より、『LINE』の企画開発に携わる

リリースからわずか1年半で、登録ユーザー数は1億人を突破

藤井 稲垣さんの会社が提供している『LINE』、ものすごい人気ですね。わたしも友人たちから「まだやってないの?」と言われて、1カ月ほど前から使い始めたんですよ。

稲垣 2011年6月にサービスを始めて、2012年11月末で登録ユーザー数は8000万人を突破しました。公式発表はまだですが、おそらく12月末までには9000万人を超える見込みです(編集部注:対談が行われたのは12月下旬。2013年1月18日に世界1億ユーザーを突破)。

藤井 1年半でそれだけ増えるなんて、すごい伸び方ですね。稲垣さんは、どのような形でLINEのプロジェクトに携わっているのですか。

稲垣 一言で言えば、プロジェクト全体のディレクションですね。どの課題を優先して解決するかを判断し、新しい機能を追加する時には技術者やデザイナーに企画意図や仕様を伝えて開発してもらったり、PRやユーザーサポートにリリースの文書やヘルプ内容を作ってもらったり。

個人情報や規約に関する更新や改訂が必要な場合は、法務やセキュリティのチームにも動いてもらいます。プロジェクトが滞りなく進行するよう、LINEに関わる大勢の人たちを動かすという、いわば交通整理みたいな仕事をしています。

藤井 LINEのプロジェクトは、いつ頃から始まったんですか。

稲垣 2010年の11月頃に、会社として「新しいソーシャルビジネスを手掛ける」という方針が決まって、そこからわたしたち企画チームが動き出しました。

最初の時点で、Facebookやtwitterのように不特定多数の人と交流するものではなく、コミュニケーションの相手がもっと限定的で、リアルな人間関係をベースにしたサービスにしたいという方向性を決めたので、まずは各年代の男女が誰とどんなコミュニケーションを取っているのか、その際によく使っているサービスやUIはどんなものか、といったリサーチや行動分析を始めました。

限られた時間の中の企画開発。リリース当日まで綱渡り状態が続いた

藤井 なかなか大変そうな作業ですね。

稲垣 でも、けっこう楽しかったですよ。半日はメンバーそれぞれが情報収集をして、残りの半日は会議室に全員で集まってディスカッションをする、という毎日でした。いろいろなアプリやサービスを持ち寄って、そこからどんなヒントや気付きを得られるかを毎日5~6時間くらい話し合いましたね。

アプリも100以上はチェックしたと思います。そんな作業を2カ月くらい続けて、最終的にわたしたちのサービスは「メッセージ」と「写真の共有」の2本柱で行こう、ということになりました。そして、まずは写真のアプリから先に出そうということになり、準備を進めていたんです。

藤井 そうなんですか?

稲垣 えぇ。でも、3・11の東日本大震災が起きて、方針が変わったんです。あの状況の中で、わたしたちもメッセージが交換できる機能の重要性を改めて実感しましたし、ユーザーのニーズも今後ますます高まると判断して、メッセージングのサービスを最優先で開発することが決まりました。それが4月末くらいで、リリースは6月23日でしたから、1カ月半ほどの短期間で開発を進めたことになります。

藤井 それって、実はものすごく大変なことなのでは?

稲垣 はい、大変でした(笑)。しかもiPhone用のアプリは、Appleの審査を受けて、OKが出ないと一般の方たちに提供できないのですが、その審査の期間が2週間くらいかかるんです。しかも、最初の審査で不備を指摘されて、1回戻されてしまったので、再審査でさらに時間がかかることに……。なのにマーケティングチームからは、「もう広告の枠を買っちゃったから、23日には絶対にリリースしてね」と言われちゃって。

結局、何とか間に合いましたが、正直言ってかなり泣きが入りました。

女子高生モニターの反応で、スタンプはヒットアイテムになるという確信が

藤井 でも、そのかいあっての大ヒットですよね。わたしの周りでも、40代の男性が結構ハマっているんですよ。LINEのスタンプって、ちょっとグロテスクだったり、ギャグっぽいものも多いでしょう? 男性は何歳になっても、ああいうのが好きみたい(笑)。

稲垣 うちの社内でも、最近出たばかりの『稲中』(漫画の『行け!稲中卓球部』)のスタンプが大流行してます(笑)。

藤井 スタンプ機能は、どういう経緯で生まれたんですか。

稲垣 LINEはメッセージングサービスとしては後発だったので、とにかく市場に出すことを最優先にしていたんです。世界的に見れば、すでに「Skype」や「Viber」など、先行するメッセージングアプリや無料通話サービスはたくさんありましたから。

なので、最初はとりあえずシンプルなテキストメッセージでリリースして、ユーザーからフィードバックをもらいながら、色々な機能を追加していけばいいという考え方だったんです。ですからスタンプも、サービスのリリース後に企画を進めて、4カ月経った2011年10月に新しい機能として追加されました。

藤井 では、やはりユーザーからの要望で?

稲垣 いえ、実はユーザーからは「絵文字や顔文字を使えるようにしてほしい」という声が多かったんです。それで、絵文字と顔文字を追加した際に、ついでというわけではありませんが、一緒にスタンプも出してみようということになりました。

ただ、わたしたちも企画はしたものの、本当にニーズがあるのか、自信が持てずにいたんです。上がってきたデザインは、なぜか絵柄やキャラクターがシュールで過激なものばかりだったし(笑)。「これが本当にユーザーに受け入れられるのか?」といった迷いは正直ありました。

藤井 それでも出そうと決断したのは、なぜですか?

稲垣 モニター調査での反応が決め手になりました。会社に若い世代のユーザーを呼んで、スタンプの原案を見てもらったんです。男性グループや女子大生のグループの反応はいまひとつでしたが、最後の最後に見てもらった女子高生にスタンプが大ウケで。「何これ、チョーやばいんだけど!」みたいな感じで、すっごく盛り上がってくれたんです。

女子高生のあの反応がサービスリリースを決める最後の一押しになりました。「これだけリアクションがいいなら、絶対にいける!」という自信が持てたんです。

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取材・文/塚田有香 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)