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[トークLive開催レポ② 1/2] これからのゲーム業界を読み解くキーワード。それが「ネットワーク」と「アジャイル開発」だ

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(写真左から)長瀬慶重氏、山本直也氏、増井雄一郎氏と、業界経験豊富な面子が集結

(写真左から)岩間崇氏、田村祐樹氏、川方慎介氏。ゲームの未来を語り尽くす

10月15日(土)、『エンジニア適職フェア』の会場内で、トークLive「エンタメ×ITの未来開発会議」が、二部構成で開催された。第一部にあたる【Part-1】はWebサービス、第二部の【Part-2】はゲームの未来にフォーカスし、各業界のリーディングカンパニーを率いるキーパーソンが、パネルディスカッションを展開した。

>>【Part-1】の開催レポはコチラ

【Part-2】のパネラーは、アクワイアで開発本部長を務める岩間崇氏、gumiの技術開発部を率いる田村祐樹氏、gloops(旧・GMS)のソーシャルゲーム事業本部長である川方慎介氏の三名だ(パネラーの詳細プロフィールはコチラ)。

今、IT業界で最も盛り上がっているジャンルといえるゲーム開発の未来とは? ヒットゲームを生む企業の開発責任者たちに、業界の行く末を先読みしてもらった。

競合との差別化はゲーム演出の”リッチさ”にかかっている

――今回は、ソーシャルゲームとコンシューマーゲーム、それぞれでご活躍されていらっしゃる方たちがパネラーです。まずは各企業の現状と、今後の展開について、お話を伺えればと思います。

岩間 アクワイアは、17年前くらいからコンシューマーメインでずっとやってきまして、去年ちょっとだけ実はソーシャルも手掛けました。結果から言うと失敗ということで、今はちょっとソーシャル自体から手を引いているという状況です。

実際にソーシャルをやってみて、コンシューマーのゲームと内容がやっぱり違うというか。やっぱりずっとコンシューマーゲームの開発をしてきたメンバーからすると、遊び方や楽しみ方の違いが、頭では理解できるものの身体で理解できないというジレンマがあって。最終的には、今はやっぱり自分たちが「楽しみ、面白い」と思えるコンシューマー家庭ゲーム機のところで注力していきたいという考えです。

ただ今後は、スマートフォンやソーシャルといった新しいプラットフォームに対しても積極的に取り組みたいですね。

田村 gumiはもともと、SNSなどもやっていた会社ですが、途中でソーシャルアプリをやり始めまして、昔は『キャバウォーズ』とか『幕末英雄伝』とかいったタイトルを出していました。最近は、『任侠道』や『デュエルサマナー』といった人気タイトルのシリーズものも出しています。

そういったシリーズものも含め、これからは開発もや業務プロセスの効率化や、スマホに対するリリース時からの対応もこれからどんどんと進めていくほか、Facebookさんのようなプラットフォームも意識しつつ、世界に対して進出していければと考えています。

川方 gloopsも3年前くらいは自社でSNSをやっていて、まだ「ソーシャルアプリ」という言葉がない中でゲームを提供していました。1年半くらい前にモバゲーさんでAPIが公開になったタイミングで、『渋谷クエスト』というコンテンツを載せました。すると、それまでユーザーを獲得するというところに非常に苦労していたんですが、プラットフォーム側で2500万人という巨大なユーザーがいたこともあり、大成功を収めることができました。

ここ1年半くらいの中で12コンテンツくらいリリースしていて、スマートフォンに対応したものも同時にリリースできる体制になっています。今は、国内である程度一定の地位を確定できたと思っているんですが、今後はやっぱり、国内だけでなく世界に自分たちの価値を届けていきたいという思いが強いですね。

――スマホがさらに普及すると、今までコンシューマーゲームのユーザー層とケータイゲームのユーザー層がマッシュアップされ、特定のプラットフォーム内における競争が激しくなることが予想されます。そんな状況の中、どうやって他社と差別化を図ろうとしているのでしょう?

「ガラケーでは、

「ガラケーでは、”リッチな”演出をうまく加えられなかった。しかし、スマホは違う」(川方氏)

川方 gloopsはガラケーでずっと勝負をしてきたんですが、それゆえに“リッチな”演出をあまりうまく加えられてなかったんですね。そこが、スマートフォンになることで、もっとユーザーがアッと驚く体験をさせられるのではないかと。

田村 gumiもやはりガラケーメインだったので、Flashでの表現力というのは限られていました。これからは、スマートフォンのインターフェースを活用できることで、表現力の幅が広がってきていると感じています。例えば、トランジションでいろんなエフェクトを掛けたり、あっと驚くようなアニメーションを入れてみたり――今までFlashではできなかった表現をやっていきたいですね。

岩間 アクワイアだけ、お二方とはだいぶアプローチが違いますね。ガラケーと比べスマートフォンの方が、表現力が増してきているというのがある一方で、コンシューマーでやってきた弊社としては、スマートフォンはどちらかというとコンシューマーでやっているような動きや表現、操作に近いことがスマートフォンでなら実現できるのではないかと考えています。

ゲームの中身にしても、コンシューマライクな作りに似た方向からアプローチをして、そこにソーシャル的な要素やネットワーク的な要素を付与していくアプローチでやっていきたいと思っています。

“つなぐ”ゲームが主流になり、ネットワーク技術の価値が上昇

――コンシューマーゲーム会社が、ソーシャルゲーム業界にどんどん進出している中、ソーシャルゲームをガチでやってこられた2社としては、今後どういった形で対抗していくお考えですか?

田村 そうですね。コンシューマーゲームと違い、弊社はほとんどオリジナルタイトルで勝負しています。そのため、自社のプラットフォームを活用したシリーズものや、シリーズものの連動イベントなど、ゲームのソーシャル性を高めやすい環境にはあると思います。

コンシューマーの場合、やっぱりもともと1人で遊ぶものというイメージが強く、『ニンテンドーDS』や『PSP』が出てきてようやくネットワーキングが機能として注目されるようになった一方、ソーシャルアプリは最初からソーシャルで、皆で楽しむものでした。そういったところがやはり強みだと思いますし、今後も発展させていきたいところですね。

――今まで培ってこられたノウハウを基盤にしつつ、グラフィックだったり操作性だったりといった点をプラスしていく、と。

田村 それと独自の世界観ですね。例えば『任侠道』なら、任侠という今までになかったテーマとして、gumiならではのタイトルとして育てていきたいというのはあります。

川方 gloopsで言うと、ソーシャルゲームといっても、ゲームとは思っていないんです。ゲームとなると、やっぱりコンシューマーゲーム会社さんにはどうしても絶対勝てない。ですので、僕たちはソーシャルゲームを「コミュニケーションツール」として位置付けています。そこをぶらさず、いかに簡単に、話のネタとしてユーザー同士がつながるかというところを徹底的にやっていきたいと思っています。そこはスマートフォンという新しいデバイスが出てきても、ベースになる発想としては変わりませんね。

岩間 スマートフォンなら、ネットワークも常時つながっているので、そういうユーザー動向に関するデータマイニングや対処は行っていきたいと思います。でも、実はコンシューマーの方でも、それに近いことをやり始めているところもあるんです。

例えば、どのくらいの時間プレイしたかとか、どういうステージをプレイされている回数が多いのか、どういうアイテムが使われているかとか――そういった情報を収集し、次の作品に参考にすることはありますね。これからは、例えコンシューマーの世界でも、情報収集して分析する流れは、今後さらに強まっていくでしょう。

「スマホのUIは、これが最適という答えがない。試行錯誤を繰り返しながらユーザーと一緒に作っていくという発想が大事」(田村氏)

「スマホのUIは、これが最適という答えがない。試行錯誤を繰り返しながらユーザーと一緒に作っていくという発想が大事」(田村氏)

田村 ソーシャルアプリの一番の利点は、やっぱり思い付いたらすぐ直せることですね。例えば朝に、「ちょっとこのゲームやっていて、この辺が気になる」となれば、お昼までに直して入れるといったように、すぐアップデートしてユーザーさんの反応を見ようということがけっこうできるんです。でも、コンシューマーだとそれが次回作になってしまう。

ソーシャルアプリはユーザーさんの反応を見つつ、いつでもどんな風にでもアップデートできるし、逆に戻すこともできる。特にスマートフォンのUIに関しては、試行錯誤の繰り返しだと思うんです。これが最適という答えがあるわけではなく、ユーザーさんと一緒にコンテンツを作っていくというのが、これからのソーシャルアプリのあり方だと思います。特にガラケーと違って変わってきたところだと痛感していますね。

――開発のプロセスや、コーディングしていく時のやり方みたいなところに関しても、やはり変化は起きているんでしょうか?

川方 開発のやり方は、サーバーサイドのエンジニアとクライアントサイドで動かすエンジニアという形で分かれてくるかと思います。ただスピード感とか業務の進め方というところで考えると、大きくは変わらないんではないでしょうか。

田村 Webエンジニアだとよく耳にする、ウォーターフォールとアジャイル開発っていうのがあるんですが、弊社もかっちりと作り込んだ仕様書はありません。「こういうことがやりたい、こういうのって面白いよね」というものから、どれだけそれを膨らませられるかというのが大事なんです。

そのためには、やっぱりアジャイルのプロセスのように、振り返って、これがどれだけ良かったかというのを評価して、さらにより良いものに繰り返していく。そういう細かいコミット、細かいイテレーションを繰り返す開発サイクルにどんどんなるでしょう。開発を全部決まった順番でやるのではなく、適時いろんなものを差し替えつつ、フレキシブルに開発できる体制になっていくと思います。

岩間 その流れでお答えすると、アクワイアはお二方のやり方とは対極です。ます、制作費が億単位で、期間が1年2年という、すごく長期のスパンなんです。企画、仕様というプロセスもしっかり踏んでいき、大量人数で作り上げていくというプロセスを踏んでいます。

ただ、スマートフォンになってきた場合には、おそらくそのやり方だと通用しないのかなというのはありますね。やっぱりスピード感というのが一番重要になってくると思うので、弊社の中で違ったアプローチをしていかないといけないのかなと考えています。

あと、今後はネットワークを利用したゲームが増えると見られるので、ゲーム会社が自社で作ったネットワークを使ったテストという部分が、重要になってくるかなと。ネットワークを使った場合、ネットワークが常に最善の状態であるとはかぎらない。今まで、ネットワーク機能がなかったころはテストもそれほどかけずにできていたところが、ネットワークが必要になってくると、ある程度そこのテストをしておく必要があると思います。

2/2に続く

 

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>>[トークLive開催レポ② 2/2] ゲーム開発責任者がエンジニアに「柔軟性のある信念」を求める、たった一つの理由