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[トークLive開催レポ 2/2] 良いアプリを作り続けるカギは、世代を超えて「最高の補完関係」を作ること

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――なるほど。では、スマホアプリ開発の世界で長く活躍できるエンジニアになるためには、ほかにどんな条件があるとお考えでしょうか。

長瀬 この分野では、年齢だけを見ても、二極化が進んでいる印象を持っています。30代後半で、今までC言語をバリバリ駆使してきた人もアプリ開発の世界で活躍しているし、かたや学生や、若い人の作ったアプリが何10万、何100万ダウンロードを記録していたりもする。サイバーエージェントでも、20代前半の若いスタッフと30代後半のベテランが協力し合って成果を上げています。

山本 『Corona SDK』なんかは、長瀬さんの言う「Cをバリバリやってきた」という世代の人でも、あっという間にマスターできてしまうと思います。問題は、未経験からアプリ開発の世界に飛び込む際の”気持ちの壁”じゃないかと。

長瀬 どういうことですか?

山本 40代、50代にもなると、「今さらObjective-Cを覚えなきゃならないの?」と考える人もいて、ハードルを感じてしまう方もいるようです。ただ、そういう方たちに会った時、わたしはJavascriptやLuaといったスクリプト系の言語から勉強してみるのをお薦めしています。びっくりするほど楽だし、それでアプリが動いたりしますから。前に大阪で開催したアプリ勉強会で出会った50代のエンジニアの方も、「(Luaをベースとする)Coronaは使いやすいね」って驚いていました。

増井 僕らと同じ30代だと、おそらくJavaやJavaScriptを学んできた人が多いですよね。で、そういう人たちって今はマネジメントサイドに回っていたりする人が多いと思うんですが、SDKの普及で再び開発現場に戻ってくる人もけっこういます。これ、面白い現象ですよね。

異業種からの参入組は「どう開発に携わるか」のスタンスが肝要

―― 皆さんのお話を聞いていると、若手が多いイメージのあるスマホアプリの世界が、実は年齢に関係なくチャンスのある世界のように思えてきますね。

長瀬 実際、サイバーエージェントでは30代・40代のエンジニアが若手と一緒にワーワー言いながらやっています。そして、そういう企業はこれからどんどん増えると思っています。前職を問わず、ベテランエンジニアの「経験」が生きてくる時代が来るのではないでしょうか。

「わたしも40代になりましたが、若い世代の感性を共有するよう心掛ければ、年齢問わず適応できると思う」(山本氏)

「わたしも40代になりましたが、若い世代の感性を共有するよう心掛ければ、年齢問わず適応できると思う」(山本氏)

山本 わたしも、たとえ異業種から来たエンジニアの方でも、これまで積んできた経験は十分に活かせると思っています。まぁ、若い人たちと一緒に開発していくための体力が必要なので、健康面での配慮は必要不可欠でしょうが(笑)。

―― なるほど(笑)。

山本 加えて、世代の違う人たちとも、ライブ感を持って「これ面白いね!」と楽しめちゃうノリというか、気持ちの若さがないと難しいでしょうね。

長瀬 自分は技術を極めたいのか、それともビジネスパーソンになるのか。アプリ開発の世界に飛び込んでも、そこは腹決めをしなければいけないと思います。出世を考えた場合、今までの日本企業の多くはCTO的ポジションの人物が経営トップになる確率はすごく低かったと思うのですが、さっきも言ったようにこれからは違ってくると思っています。少なくてもサイバーエージェントは違いますし、グローバルなテクノロジー企業のようにCTOが経営上の発言権も強く持つケースが増えていくはずです。

増井 だからこそ、技術を追求してそうなるのか、企画やマネジメントを突き詰めてチームをドライブしていくポジションを目指すのか。それを決めておく重要性が増していく。

長瀬 そうです。もし、技術を極めるキャリアを志向するなら、そういうキャリアパスを許容する風土や制度があるかが非常に大事になるので、企業選定がものすごく大事になってくる。そう思っています。

―― 異業種での経験も活かせるのだとすれば、課題は最新動向のキャッチアップになりますね。歳を重ねていくと、技術面、トレンド面の双方で「最新」をキャッチアップしていくのが難しくなっていくのが業界の定説。その中で、どうキャリア形成していくかが重要になります。

山本 そのためにも、さっきお話したライブ感をどう保っていくかは、各々工夫していかなければならないと思います。ソーシャルメディアをうまく活用したり。

長瀬 サイバーエージェントで最近編成したアプリ開発のチームを例に説明すると、20代前半~半ばの若手が企画を担当し、その周りで30代のエンジニアたちがUnityなどを使いながら開発を進めていくようなケースが増えています。こういった編成にすることで、開発陣がただゴリゴリと作っていくものとは、違う可能性が出てくると考えてのことです。

「技術史」を知っているベテランにこそ果たせる役割がある 

――ベテランエンジニアの持つ「経験」と、若手の持つ「発想力」をうまくミックスしていけるということですか?

3人とも異口同音に「年齢が上の未経験エンジニアでも、スマホアプリ開発の世界に適応するのは可能」と話す

3人とも異口同音に「年齢が上の未経験エンジニアでも、スマホアプリ開発の世界に適応するのは可能」と話す

長瀬 そうです。ちょっと話は反れますが、当社では年に1回、社内で「アプリコンテスト」を開催していて、中にはエンジニアからの提案もあります。が、少なくない提案者が「企画はもういいや(笑)」と言ってきます。

増井 理由は何なんですか?

長瀬 本来は技術にのめり込みたいタイプのエンジニアが、いざ企画から携わってみると、肌に合わない場合もあるようです。そういう志向の社員には、エンジニアとして持っている豊富な経験を開発の面で活かしてもらった方が、企画から携わってもらうよりも良いというのがわたしの持論です。

増井 僕も、技術のバックグラウンドをもとにアイデアをふくらませていくのは得意なんですが、例えばユーザー側の気持ちを考えてアイデアを出していくようなことはあまり得意ではない。じゃあ、どうすればいいのかと言えば、サイバーエージェントさんが実践されているような「補完関係」を作っていくのが一つの解決手段だと思うんです。

山本 仮に勤め先がそういう体制になっていないとしても、スマホアプリ関連の勉強会やハッカソンにどんどん参加して、異なる得意技を持つ人たちと交流を持っていけば、独自の補完関係を作り出すことができますしね。

増井 僕もそう思います。勉強会の効果は大きいですよね。それに、僕にしても山本さんにしても、ある日突然、新しい技術を手に入れたわけじゃありません。AndroidにしたってコアはLinuxだし、iOSだって元を正せばBSDとかUNIXの系統から生まれている。こういう歴史を知っているからこそ、新しい技術に対する理解を深められるんです。

長瀬 30代、40代のエンジニアは、若手とは別の視座で新しい技術を理解できますから、最先端の技術を使いこなす若手エンジニアとは違った開発ができる可能性もあるわけですからね。

山本 増井さんの言う「歴史を知っていること」は、わたしもキャリア形成上の強みになると思います。今後業界としてどう動いていくか? についても深い考察ができますしね。過去にあったプロダクトと比較して「Flashはこれからこう進化していくんだろうな」とか。それらを若手の持つ感性やアイデアとうまくミックスさせながら仕事をしていけば、アプリ開発の世界で”長寿なエンジニア”になることもそう難しくないと思いますよ。

――本日は短い時間で興味深いお話をありがとうございました。

【補足tips】 Q.スマホアプリ開発で必要なのはスピードか質か?
動画をご覧になれない方はコチラ(YouTube)よりご覧ください

取材・文/森川直樹 撮影/玄樹 開催協力/株式会社HatchUp

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