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テラモーターズ代表・徳重徹氏に聞く、モノづくりベンチャーで優秀な人材を集めるシンプルな方法

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モノ×ITの融合をキーワードに開催される、メイカームーブメントのけん引役としても期待が掛かる『Makers Summit』。第1回が昨年末に開催されてから、約1カ月半。来週1月21日に、早くも第2回目が開催される。

2013年に入ってからも「メイカームーブメント」はさまざまなメディアで取り上げられているが、こうしたムーブメントが始まる以前より、モノづくりベンチャー企業としてビジネスシーンで活躍していた企業も少なくない。

設立3年目にして電動バイクの国内最大手メーカーとなったテラモーターズも、そんな企業の1つだ。

今回『Makers Summit Vol.2』にも登壇する同社代表の徳重徹氏は、あるメディアで「おかげさまで優秀な技術者が集まってくれている」と、テラモーターズのリクルーティングの現状を話していたことがある。

多くのベンチャー企業が苦戦する、優秀な人材の確保。なぜ、同社には集まってくるのだろうか。世界を目指すベンチャーをサポートする本も出版する徳重氏に、メイカームーブメントの今後の可能性と合わせて聞いた。

垂直統合から水平分業へ。家電業界の端境期は今後も続く

渋谷にあるシェアオフィスに、オフィスを構えるテラモーターズ。「創業時の情熱を忘れないため」だという

徳重氏は、大手生命保険会社を退職後、米国ビジネススクールでMBAを取得。留学中、シリコンバレーのベンチャー企業にインターンをしている中で、「日本人として新しい産業界のリーダーになりたいサムソン、アップルを超えるのは、日本発のスーパーベンチャーしかない」と思い立ち、2010年に電動バイクメーカーのテラモーターズを立ち上げている。

徳重氏は、「テラモーターズ自体は、メイカームーブメントの潮流とは少し違う文脈で生まれているんですが……」と前置きしながらも、家電ベンチャーに対して大きな期待を抱く。

「わたしが電動バイクを作ろうと思った当時は、自動車業界の生産方式が垂直統合から水平分業へ移ろうか、という端境期だったのです。多くの自動車メーカーが、車のモデルごとにすべてを新しく作り上げる垂直統合のモデルから抜け出せずにいる中で、テラモーターズのようなベンチャー企業であれば、既存の枠組みにとらわれることなく水平分業を行い、プロダクト開発のスピードアップ、コストダウンを推し進めることができました」

今の家電業界も、「まさに端境期だ」と話す。

「日本の家電が衰退しているのも、自動車のような垂直統合から脱却できていないからです。例えばアメリカのテレビ市場では、ソニーやパナソニックよりも、VIZIOというメーカーのテレビがシェアの多くを占めています。2005年に設立し、2007年にサムソン社を抜いて北米でシェア1位となりましたが、当時の社員数はたったの90人。

彼らは、商品企画をアメリカで行い、台湾で生産をしている。技術としては何ら難しいことではなく、日本からこうした製品が生まれてもおかしくありません。要は、メンタリティの問題だと思います」

大手メーカーは、過去の戦略や成功体験を悪い意味で引きずってしまい、新しい取り組みに対して二の足を踏んでしまうのだという。だからこそ、規模の小さい家電ベンチャーが大手メーカーの製品を打ち負かす、ジャイアントキリングの可能性が大いにある。

「メイカームーブメント自体はもう少し個人に寄った話なので、現段階ではビジネスとは切り離して考える必要があります。ただ、それでもアイデアやビジョンのある家電ベンチャーにはもっと台頭してほしいですね」

ビジョンなきベンチャーに、人は集まらない

モノづくりベンチャーがスタートダッシュを決めるためには、「最低1500万円くらいの資金と、優秀な人材が必要(Cerevo代表・岩佐琢磨氏)」だとされている。資金については方法はいくつかあると思うが、問題は「優秀な人材」である。

モノづくりの世界にいる技術者たちに「フリーランス文化」や「脱・大手依存」の意識は薄く、多くは大手メーカーの枠に収まり、開発に従事しているため、家電ベンチャーを立ち上げたところで優秀なエンジニアを確保するのは至難の業だと言える。

それでも、「テラモーターズには自然と優秀な人材が集まる」、と徳重氏は話す。

「おかげさまで、パナソニックやトヨタといった大手メーカーに所属していた優秀な技術者から、『ウチで働きたい』とお声掛けいただくことが多いんです」

その背景にあるのは、テラモーターズが掲げる「ビジョン」だ。

「若手の人材育成にも力を注いでいきたい」と話す徳重氏。そのため、20代の若手メンバーが多く、彼らに大きな仕事を任せているという

「かつてシリコンバレーに滞在していたころに感じたのは、ベンチャー企業ほど優秀な人材がいる、ということでした。それは、起業家だけでなく、メンバーも優秀でないといけません。では、優秀な人を集めるためにはどうすればいいか? という時に必要なのが、リーダーが持つ『ビジョン』と、リスクを賭した結果得られる、お金以外の大きなリターンです。

その意味で、テラモーターズにやってくる技術者たちは、『日本再建』や『世界市場で闘える』、『新しい産業の創出』といったところに強く共感してくれていますし、実際に実現可能性の高さを感じてくれているのだと思います」

しかし、自身の会社に優秀な技術者が来ることがうれしい半面、残念にも思っているという。

「結局のところ、今のモノづくりベンチャーで面白い企業が少ないんだと思います。大手メーカーにいる若手技術者たちは、少なからず現状に危機感を持っているんだけど、面白そうなベンチャーが受け皿として少ないために、現状維持にとどまってしまう。志が高くて若い人ほど、行き場のない焦りを感じていると思います。だから特に若い技術者たちにはもっともっと外に目を向けてもらいたいんです」

その意味でも、今回開催される『Makers Summit』に期待していることがある。

「モノづくりベンチャーが台頭するためには、もっと成功事例が必要です。わたしたち自身もまだまだ志半ばではありますが、少しでもリードしている先輩として、『Makers Summit』のようなイベントで、できる限り情報発信していきたいです」

取材・文・撮影/小禄卓也(編集部)

≪徳重氏が登壇する「Makers Summit Vol.2」開催間近!≫
Makers時代の自動車ベンチャーの挑戦~21世紀の自動車革命とは~/ Makers Summit Vol.2

■日時:2013年1月21日(月) 19:30~22:30(19:00開場)
■定員:150名
■参加費:2000円(社会人)、1000円(学生) ※当日受付にて
■会場:野村證券渋谷支店 セミナールーム