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ミクシィはどこへ向かうのか?~代表・笠原健治氏に聞く、『mixi』と新規事業のこれから

公開

 

「低迷するミクシィ」

そんな見出しのニュースを多く見掛けるようになったのは、いつからだろう。ソーシャルゲームではグリーやDeNAがリードし、SNSではFacebookが日本を席巻。NHN Japanが提供するLINEにいたっては、提供からわずか1年7カ月で1億ユーザーを突破したほどの勢いだ。そんな中、ニックネーム制のコミュニケーションプラットフォームとしてのスタンスを崩さずに試行錯誤を繰り返してきた『mixi』への風当たりは、極端に強く感じる。

しかしながら、スマートフォン向け広告収入やmixiゲーム事業の好調が起因して、2013年3月期(上半期)の決算では業績が対前年比より改善傾向に。昨秋から「ユーザーファースト」を最重要テーマに掲げ、さらには新規事業開発にも本格的に取り組み始めた。

ミクシィが、動き始める。

2012年に見せた変化の兆しは、これからどんな展開を見せるのか。代表の笠原健治氏に、これまでの取り組みを振り返りながら、ミクシィの今後のビジョンや開発体制の変化について聞いた。

プロフィール

株式会社ミクシィ 代表取締役社長
笠原健治氏

1975年生まれ。東京大学・経済学部を卒業。1997年、大学在学中に求人情報サイト『Find Job !』の運営を開始。1999年にイー・マーキュリーとして法人化した後、代表取締役に就任。2004年2月、ソーシャル・ネットワーキング・サービス『mixi(ミクシィ)』の運営を開始。2年後の2006年に社名をミクシィに変更し、現在に至る

愚直にユーザーと向き合い、今の時代感に沿った『mixi』へ


―― この度は貴重な機会をいただきありがとうございます。取材の前(※取材は1月11日に行った)に、2013年1月1日に発表された年頭所感を拝見しました。

その中で特に強調されていたのが、「スマートフォンファースト」と「ユーザーファースト」という言葉でした。競合であるSNS提供各社もスマートフォンユーザーの獲得を本格化させている中、どのような思いでユーザーファーストを実現するのか。改めて笠原さんの考えをお聞かせください。

まず『mixi』の現状からお話しすると、現在スマートフォン経由での利用は、月間1400万ユーザーのうち約6割を占める863万人(2012年9月時点)となっています。これは、言うまでもなく、スマートフォンとコミュニケーションサービスの親和性の高さを表している。そのため、スマートフォン向けを優先してリリースしている新機能や、新サービスも増えてきています。

昨年以降、フィーチャーフォンを使っていた多くのユーザーがスマートフォンにシフトしたこともあり、スマートフォン向け広告の収益やmixiゲーム事業も昨年来、非常に良い立ち上がりを見せています。

しかし、『mixi』のサービス開始からもうすぐ9年を迎え、多くのユーザーに使っていただくサービスに成長できたものの、競合サービスの登場やユーザーの価値観の多様化によって次第にニーズも変化し、必ずしも対応しきれていない状況があったのではないか。

そうした思いから生まれたのが、愚直なまでに顧客と向き合うこと、つまり「ユーザーファースト」の実現を目指すべきだという決意につながりました。

―― 「ユーザーファースト」実現のために、具体的にはどのような方策を講じられたのですか?

2012年の8月に企業ポリシーとして「ユーザーファースト」を掲げて以来、あらゆる機会を通じてユーザーの声を聞く機会を設けました。まずは従来から取り組んできたユーザーアンケートやヒアリングの精度向上、そしてユーザーの声なき声を知るためのA/Bテストやログ解析の強化です。

さらに昨年11月には、ミクシィとして初めて行ったユーザー交流会『ユーザーファーストウィーク』も実施しました。

激励の言葉だけでなくご批判の声もいただきましたが、『mixi』への愛着がなければイベント会場まで足を運んではくださいません。厳しい言葉はユーザーからの愛情の裏返しなんだと、わたしを含め社員全員が真摯な気持ちで受け止めることができました。

これからは、ユーザーのみなさんと手を携えながら、『mixi』を今の時代感に合ったものへ改善していくことを最重要テーマとして取り組んでいきたいです。

世界展開の可能性も視野に

―― 今の段階で、「ユーザーの声」を反映して実現した機能にはどんなものがありますか?

コミュニケーションプラットフォームが多様化しても、「心地よいつながり」を持てる『mixi』の価値は変わらないと話す

細かいものを挙げればキリがないのですが、代表的なもので言いますと、『mixiボイス』のつぶやきを永続的に保存したり、旧足あと機能の代替としてリリースした訪問者機能のリアルタイム化、さらに『mixi』を支えるコミュニティ管理者向けに開発した便利な機能などは、いずれもユーザーのご要望に基づいてリリースしたものです。

今後も、既存ユーザーにとって使いやすいものに改良・改善していく作業を、優先的に行っていきたいですね。エンジニアによる日々の開発も、現時点では新機能の開発より、既存機能の改善にリソースを割くことが多いです。

―― FacebookやTwitter、LINEなど、コミュニケーションプラットフォームが多様化する中で、『mixi』は今後どんな方向へ進化していくのでしょうか?

方向性はサービス開始以来ぶれていないと思っています。目指すのは、身近な友人知人や、同じ趣味関心を持った人たちとの「心地よいつながり」を提供できるサービスです。

例えば、実名制を採用しているFacebookの場合、仕事関係の人から小学校時代の同級生まで、あらゆる属性の人と結びついてしまいます。そのためサイト内で発言しようとする際、どうしてもパブリックな場であるという意識が生じます。

しかし『mixi』はニックネーム制ですから、そういったプレッシャーを感じる必要はありません。実名でない分、ユーザー自身によってつながりをコントロールしやすいですし、サイト内にも弱音や愚痴を含んだ本音ベースの書き込みがしやすいというメリットもあります。

LINEともよく比較されるのですが、『mixi』が友だち全体の中の不特定多数に対するコミュニケーションであるのに対し、あちらは1対1のコミュニケーションに強みがあります。その性質から、携帯メールやメッセンジャーに近いサービスだと思っています。

相手が不特定多数になったとしても、心地よいつながりを保てる。それこそが『mixi』の価値であり、ほかのSNSにはない部分だと思います。

―― では、今取り組んでいる改善でも、『mixi』開設当初から掲げる「心地よいつながり」を改めて強化していく、と?
(次ページへ続く)