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『カイブツクロニクル』生みの親とカヤックが語る、「面白くて採用もできる」サイトの作り方

公開

 

(写真左から)ミューテーションズ スタジオの代表取締役 CEO・桑田一生氏、面白法人カヤックのクリエイティブディレクター三好拓朗氏、同アートディレクター佐藤ねじ氏

―― 今回、カヤックさんと一緒に自社のWeb制作することになったいきさつについて教えてください。

桑田 会社を作って、いざ人の採用をしようと思ったら、人材紹介会社の女性営業担当者に言われたんです。「Webサイトがないと採用が難しいですよ」って。「え、そうなの?」って聞き返したら「そうです」って断言するので、「じゃあ作ります」って答えたのが最初です。それでカヤックさんに声を掛けました。

―― どうしてカヤックさんに?

桑田 ちょうど一年前くらいだったかな。前職のアドウェイズ時代に、カヤックさんが作った『ナカマップ』(現Lobi)の担当プロデューサーだった片岡さんと知り合いました。「今度一緒に仕事しよう」と言っていたのですが、その時はチャンスがなくて。それで、今年の初めにWebサイトを作ることになったので、彼に声を掛けてみたんです。良いゲームを作ろうと思ったら、良いゲームを作る会社と組む。面白いWebサイトを作ろうと思ったら、面白いWeb制作会社と組むのが自然かなと思って。

TOPページに大きく登場する「『面白い』が、制する。」というキャッチコピーが、今回のテーマでもあったという

三好 まずは桑田さんに会社に来ていただいて、会社設立の想いとか、いろいろとお話しさせていただこうと思ったんですが、ほとんどゲームの話しかしませんでしたね。登山ゲームがマニアックで好きだとか、あと何でしたっけ? 格ゲーで斬られると一発で死ぬヤツ……。

桑田 『ブシドーブレード』ですね。

三好 ああ、そうでした。今思い返してみても、なかなかすごいミーティングでしたね(笑)。

佐藤 いやいや、ゲームの話にも意味があったんですよ。

桑田 そうなんですか?

佐藤 そうですよ! 「採用」の一環として自社サイトを作るという話ではありましたが、今回の企画では桑田さんそのものをいかに表現するかってことに懸かっていると睨んでいたので、好きなゲームについて目一杯話をしたんです。

三好 へー、そうだったんだ。

佐藤 三好さんまで!

一同 笑

桑田 まぁ、確かにコーポレートサイトを作るためのミーティングにしては、雑談が多かったかもしれないけど、以前、社長の柳澤さんと会った時もマンガの話しかしなかったですからね。カヤックさんって、僕なんかが言うまでもなくWeb業界で有名な会社だし、そのせいかどうか分からないけど、柳澤さん以下、出てくる人出てくる人が皆ちょっと頭がおかしいんです(笑)。

メンバーを見れば、おのずと会社の器って分かると思っていて。今回のコーポレートサイトにしたって、自分たちでも確かに作れるんですが、専門家が作るものより絶対クオリティが下がるのは目に見えていたし、どうせだったら一緒に働きたいって思える会社に頼みたかったんです。だからカヤックさんにお願いしました。

自社サイトなのに社長すら知らない仕掛けがたっぷり!?

―― 制作のポイントは何だったんですか?

三好 桑田さんにお会いしてひしひしと感じた“面白さ”を、そのままサイトで表現することでしたね。ただ、Mutationsさんはできたばかりの会社なので、リリース済みのゲームがない。それで、どうしようかと思っていた時に、コピーライティングを担当した田村から『「面白い」が、制する』ってコピーが出てきて、サイトのコンセプトが固まりました。このコピーとサイトの表現でこの会社の面白さを語り尽くそうということになって、往年のRPGを思わせる表現が採用されることになったんです。

「軸が通っていて、メッセージが伝わればそれでいい」として、サイト制作の一切をカヤックに委ねた桑田氏

桑田 田村さんとは3~4時間くらい雑談をしました。もちろん雑談していただけだから、自分が話した言葉をサイトにそのまま載せることはできなかったと思うけど、話し相手になってくれた彼がそんな風に感じて書いてくれたので、それでいいと思ったんです。

三好 こちらとしても、彼が桑田さんからどんどん面白い話を引き出してくれたので、最終的にはそれらをどう並べれば効果的かを考えればよかった。コンセプトが固まってからは、悩むようなことはありませんでしたね。

佐藤 桑田さんとのオリエンテーションで、一番印象に残ったのは「面白ければいいよ」っていう一言。今感じている気持ちをそのまま表現すればいいんだって、桑田さんの言葉に背中を押された感じがしましたね。

これから面白いゲームを作ろうって言っている会社のサイトが、ロイヤリティフリーの写真ばっかりだったらみんなガッカリすると思うんですよ。制作側としては、桑田さんの言葉を信じてそのまま作ればいいんだって思えたのは、とてもうれしいことでした。

―― ただ、制約が少ないって仕事は、かえって難しさを感じることってないですか? 「お任せします」というクライアントに限って、後から文句を言って来たり。

佐藤 確かに(笑)。普通の会社だったらそういうこともあったかもしれません。でも、ミーティングの時に「必要なら、会社のロゴ変えてもいいですよ」って言ってくれる会社はそうはないですよ。これは桑田さんの言葉通り信じてやり抜くべきだと思いましたね。

三好 確かに度量の深い社長がいるっていうのは安心感につながりましたね。最初に方向性を2パターンくらい見ていただいた後、デザインを一回確認してもらってからは、どんどんアイデアを膨らませていったのですが、変に表現を抑えるようなことをせずに済んだのは「絶対大丈夫だ」って安心感は常にあったからだと思います。正直、桑田さんは完成するまでどんなモノが仕上がるのか、あんまり分かってなかったんじゃないかな。

佐藤 何しろお客さんから「何をやってもいい」なんてインパクトのある言葉をいただけることなんてそうはないですからね。最終的には仕事でお願いされたからやってるっていうより、半ば自分のためにやっているような気持ちにもなったんですよ。自己満足に陥らないように注意はしていましたけど、そもそもコンセプトが『面白い』が、制する」でしょ。「だったらいいか」みたいな部分もありましたね(笑)。

―― プレゼンを受けた時、正直どんな風に感じられました? 

桑田 もちろんブレがなかったし面白いと思いましたよ。

佐藤 よかったです。だから言うわけじゃないですが、実はね、トップページにおそらく桑田さんも知らない仕込みもしてあるんですよ。ほらここです。

TOPページのマントの男にマウスオンすると浮かび上がるコード。ここにもちょっとした仕掛けが…!?

桑田 (画面を見ながら佐藤さんから説明を受ける)え? ウソ知らなかった。どうなってるのコレ? スゴいですね!(詳しくはコチラ

三好 実はほかにもお知らせしていない仕掛けがあるんです。僕も仕事が終わるまで聞いてなかった仕込みをいくつも見つけたくらいで(笑)。

桑田 最終的には面白いヤツが興味を持ってくれて、採用に結び付けばいいっていう軸がブレなければ、究極的に何でもいいって思っていました。逆にこういう仕掛けを細かく考えてくれたっていうのは、正直ありがたい限りです。

三好 ミューテーションズさんはあくまでゲーム制作の会社。サイト更新にお手間を掛けさせるのは違うと思っていたので、こうした細かな仕掛けや演出も、なるべく皆さんの負担をかけずに採用に結び付けるためのものとして考えたました。だからリクルーティングへの導線は見た目よりもしっかり作られているんですよ。

佐藤 普通のコーポレートサイトだと、リクルーティングのページってなんてなかなか見てもらえないじゃないですか。なので、仕掛けや演出でなるべくほかのサイトとの違いを明確に出したかったというのもあります。最初のころは「あの『カイブツクロニクル』を作った桑田さんが作った会社」って打ち出しの仕方もアリかなと思ったことはありましたけど、今回の目的に立ち返って考えると、「やっぱり違うだろう」と。だからサイト自体を面白くする道を選んだんです。

桑田 そもそもリクルーティングがすべてだったので、そこがブレていなければ文句を言うつもりはありませんでした。実際コンセプトの説明を受けてもブレを感じなかったし、単純に「いいな」って思いましたね。

何が面白いかは、歴史が教えてくれる

―― 面白さのポイントって人それぞれです。どうやって形にしていかれたんですか?

佐藤 来てくれた人にミニゲームで遊ばせてしまう面白さは、今回のサイトには合わないだろうという考えは最初からありました。それだと面白さの意味が、すごく小さいものになってしまうし、本来やるべきことからもズレているように思えたからです。僕らが目指したのは“情報をゲーム化する”ってこと。その微妙な違いを理解してくれる人に来てもらえればと思って作っていました。

三好 あとは本当に好きなようにやらせてもらいましたよね。

佐藤 そうですね。自分にウソ偽りなく面白いと思えるものが作れれば、それでいいんじゃないかって思いましたね。コーポレートサイトを見に来る人はさまざまです。来てほしい人にだけ刺さればいいというものでもないだろうし。そこはゲームの世界と同じじゃないですか?

桑田 そうかもしれないですね。僕はゲームを作っていく中で、歴史の流れを見ていれば、面白さを生み出すのってそんなに難しくないって思っているんです。

―― どういうことですか?

(次ページへ続く)