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MWC、SXSWに参加したスタートアップが見てきた、スマホビジネス「次の展望」~Beatrobo&FULLERのCEOに聞く

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世界中のニュースをネット経由で手軽に入手できる今は、スマートフォンと通信回線さえあれば、誰でも容易に大量の情報にアクセスできる。

しかし、見知らぬ人々と直接会話を交わしたり、その地特有の熱気を肌で感じるというような非日常的な刺激に晒されなければ、得られない“情報”もある。

2月下旬にスペイン・バルセロナで開かれる『Mobile World Congress(以下、MWC)』、そして3月中旬に米テキサス州オースチンで開幕された『South by Southwest(以下、SXSW)』も、こうした情報を入手できる場の一つだ。

毎年、日本のスタートアップも多数参加することで知られるこれらのイベントだが、今年かの地に行っていた彼らの目に、現地の動向はどう映ったのか。毎年1月初旬に米ラスベガスで開催された『Consumer Electronics Show(CES)』でソニーが初めて行ったサードパーティ向けのコンテストを勝ち抜き、MWCでSonyブースに出展していたBeatroboの浅枝大志氏と、MWCとSXSWに行っていたFULLERの渋谷修太氏に話を聞いた。

「MWCに出展して感じたのは、ここ最近のものに比べるとイベントの熱量が少し落ちていたかな、と。今年は、世界中の話題をかっさらうような大型プロダクトが登場しなかったせいでしょう」(浅枝氏)

浅枝氏とは別ルートでMWCにブースを出展した渋谷氏も、似たような感覚を持ったという。

「昨年は新型のAndroid端末の発表が続いたこともあって、ハードメーカーや通信キャリアのブースが人を集めていました。が、今年はどちらかというと、コンテンツやサービスへの関心が集まっていたように感じます。そのせいか、僕たちのようなベンチャーに興味を持ってくれる参加者も多かった。落ち着いてビジネスの話ができた、という印象です」

一方、渋谷氏が参加したSXSWでは、『Google Glass』や、井口尊仁氏の新会社telepathyの『Telepathy One(テレパシー・ワン)』のようなウエアラブル・デバイスがお披露目され、日本でもたくさんの報道記事が出回った。

「SXSWはもともとIT関係者のお祭り的な雰囲気のイベントなので、音楽や映像コンテンツも豊富で、ビジネスライクなMWCとはまったく違いましたね。個人的に楽しめたのは、どちらかというとSXSWの方でした」(渋谷氏)

では、両氏が各イベントで注目したものは何だったか? 共通していたのは、スマートフォンの進化と普及で、ソフトコンテンツを生むスタートアップのビジネスチャンスが広がっていると感じた点だ。

Beatrobo浅枝氏「NFCがもたらす可能性は想像以上だった」

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Beatrobo, Inc.のCEO&Founderである浅枝氏

Beatroboの浅枝氏は、NFC(近距離無線通信)の使われ方が印象的だったと話す。すでに技術面では注目を集めているNFCだが、とあるフランスのスタートアップがNFCを利用したプロモーションを展開しているのを見て、驚かされたそうだ。

「たまたま訪れた『Lifeshow Player』という写真アプリを展開するスタートアップのブースで、シールタグを貼ったプロモーション用のビジネスカードをもらったんです(写真参照)。カードの上にAndroid端末を置くとアプリがダウンロードされるというもので、『NFCもここまで使えるようになったのか』と感じました」(浅枝氏)

彼らにタグシールはどう作るのか聞いたところ、「1枚1ドル程度で買える」、「スマホのNFCタグエディターを使えば、かざすだけで内容の書き換えもできる」とのこと。

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浅枝氏がMWCで入手してきたNFCタグ内臓カード

これが一般に普及すれば、プロモーションやサービス開発の分野に新しいビジネスチャンスが生まれるかもしれないと浅枝氏は言う。

「アプリのDLやコンテンツ表示の際にこれまで発生していた『1クリック、1アクション』を省略できるのは、とてつもなく大きいと思います。今後、例えばカフェの机に設置してあるカードにスマホをかざすとオリジナルコンテンツが表示されたり、電車の吊り皮にプロモーション用のNFCタグを埋め込んでおくなど、さまざまな使い道が考えられます。スマホでデータ交換ができる“NFC名刺”を作って日本の名刺交換文化を終わらせる、というプランも面白いかもしれません(笑)」(浅枝氏)

自身が現在手掛ける『Beatrobo』でも、サービスの特徴の一つであるユーザーオリジナルの「楽曲プレイリスト」をカード一枚で交換できるようにできるなど、うまく利用すれば新しい展開が生み出せるかもしれないと話す。

「実はちょうど今、これまでPC(とWindows 8 アプリ)メインで展開してきた『Beatrobo』のスマホアプリ版を開発している最中だったので、NFCタグを利用したゲリラ的なプロモーションも考えてみようかと思っています」(浅枝氏)

新しいBtoBサービスへの手応えを感じ取ったFULLER

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FULLERのFounder & CEO・渋谷修太氏

他方、FULLERの渋谷氏は、MWCに持ち込んだローンチ前の新サービスへの反応を見て、渋谷氏とは切り口の異なる可能性を見出していた。

「FULLERは今年4月以降、新規サービスとしてスマホアプリのデータアナリティクスサービスを展開する予定なのですが、この新サービスのプロモーションビデオをインフォグラフィック風の動画で来場者に披露したところ、とても好評でリリースに自信がつきましたね。世界的に見て、スマホが一定の域まで普及したことで、アナリティクスのようなBtoBサービスのニーズも顕在化してきたと実感できました」(渋谷氏)

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メインキャラのおじさんが外国でもウケた『ぼく、スマホ

また、前述の通りコンテンツ関係の来場者が多いSXSWでは、すでにリリースしているAndroid向け消費電力改善アプリ『ぼく、スマホ』で用いる“おじさんキャラクター”に、「Cool」だという声が集まったそうだ。

「日本のキャラクタービジネスの可能性も感じることができた」と振り返る。

こうして新ビジネスへの気付きを得てきた渋谷氏は今、変わりつつあるサービストレンドの中で、どう自社サービスを開発・展開していくかに考えをめぐらせている。その上で貴重な糧となったのは、SXSWで講演をしていた米スタートアップの有名起業家たちの言葉だ。

「『SpaceX』のイーロン・マスクや『Evernote』のフィル・リービン、著名投資家のピーター・シールなどの話を直接聞けたのが大きかったですね。例えばイーロン・マスクは、自社が開発するロケットをちょっとだけ地上から浮かせる動画を見せながら楽しそうに話していて、『フロンティアを開拓する人たちは遊び心があるなぁ』と感じていました。

また、フィル・リービンは『スタートアップ成功のカギは“シンプルさ”と“データを大事にする姿勢”』だと指摘していまし、ピーター・シールもマクロな視点で日米中の起業家分析を展開するなど、勉強になることだらけ。彼らの言葉で、改めてFULLERの進む方向性を考えるきっかけをもらいました」(渋谷氏)

彼らが参加したイベントは、来年も開催される。現在起業を考えている人や、今後のビジネス展開に頭を悩ませている起業家は、次こそ参加してみるのもアリかもしれない。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴