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15万いいね!の『マッチアラーム』が教える、エンジニアだから可能なユーザー獲得の極意【連載:NEOジェネ!】

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世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回話を聞いたのは、Facebookアプリ『マッチアラーム』を運営するQrunchの2人だ。20~30代限定の恋活・婚活マッチングサービスで、毎朝8時に独自のアルゴリズムで選定された異性が一人だけ通知される。いわゆる「出会い系」のイメージを払拭するためのこだわりや開発・運用のポイントについて紹介していこう。
株式会社Qrunch
(左)代表取締役 相原千尋氏
(右)取締役 久須美 和太氏

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マッチアラーム』はFacebookを活用した実名非公開で利用できる、20代・30代限定の恋活&婚活マッチングアプリ。

2012年7月に招待制でリリースを開始し、同年9月より誰でも参加できるように。オープン版のリリースから約3カ月経った2013年1月現在で、Facebookの「いいね!」が15万を超えており、日本発のFacebookアプリとしては破竹の勢いで成長を続けるマッチング系サービスの一つだ。

特徴は、「待つだけ」で自分に合った異性とのマッチングが毎日行われること。Facebookのアカウントで登録しておけば、Facebook上のソーシャルグラフを元に、毎朝8時にベストマッチな異性を選出。自分と相手の間をつなげてくれる。

相手の情報を見て興味を持ち、お互いの管理画面に用意されている「好きかも♡」ボタンを押せば、そこからチャットが始まり、会話から2人の仲を深めていけるという仕組みだ。

登録や毎朝のマッチング、メッセージの交換などは無料で利用可能。そのほか「好きかも♡」送信や、次回マッチングの先行抽選権といった一部コンテンツのみ、コイン課金制を採用している。

アイデアの出発点:Fbで“つながらない”サービスを作る逆転の発想

「学生時代、教養のためと考えてプログラミングを独学で始めた10年くらい前から、『人と人をつなぐサービスを作りたい』という気持ちがあった」

そう話すのは、『マッチアラーム』を提供するQrunchで代表取締役を務める相原千尋氏。2011年の9月に、それまで働いていたWeb系のベンチャーを辞め、独立して自社サービスを立ち上げようとした際も、「人と人をつなぐ」というコンセプトが常に念頭にあった。

「最初はシリコンバレーの『Quora』を一般ユーザー向けに落とし込んだようなQ&Aサービスを作ろうとした」(相原氏)ものの、ユーザーニーズをつかみ切れずに挫折。改めて、人の「他者とつながりたい」という欲求が最も強いジャンルが何なのか考え直したところ、「やはり恋愛関連だろう」(久須美和太氏)と考え、恋活&婚活マッチングのサービスを作ることを思い至ったという。

「決定打となったのは、日本におけるFacebookの浸透です。Facebookを利用することで、どんなマッチングサービスができるのだろう? と考えていた時、『マッチアラーム』の構想を思い付きました」(相原氏)

「出会い系」で画像検索をした結果を見ても、アダルト関連の画像ばかりが表示される。『マッチアラーム』はこうした現状に立ち向かう

恋愛を前提とした、いわゆる“出会い系”のマッチングサービスは数多く存在する。

しかし、サクラが多かったり、何だかグレーな印象があったりと、初心者からすれば、興味はあってもなかなか利用しづらい雰囲気があった。しかもSNSを利用する場合、常に「身内バレ」の可能性がつきまとう。

しかし、実名登録が前提のFacebookを使えば、「すでに『友だち』になっている知り合いとマッチングしてしまう身内バレを回避できる上、極力サクラを排除することができる」(相原氏)ことに気付いたのだ。

それは、現実での「つながり」をネット上で展開するFacebookの性質を逆手に取り、「つながらない」サービスを作るという逆転の発想だった。

開発のポイント:[システム✕人力]による高精度な認証体制

元来、エンジニアという人種は「合理的ではない、めんどうくさいこと」を最も嫌うため、煩雑な作業があれば、可能な限りシステム化しようとする。しかし、こと『マッチアラーム』に関して言えば、事情は大きく異なる。

「『マッチアラーム』を作る際、掲げた目標の一つに『クリーンなサービスを提供する』ということがあります。『おおっぴらに利用しない』という出会い系マッチングサービスの性格上、従来はどうしてもグレーな印象が拭えませんでした。でもそれだと、純粋に出会いを求める人たちが利用を躊躇してしまいます。そこで『マッチアラーム』では、システムによるユーザー認証のほか、実際にわれわれが登録者のソーシャルプロフィールを確認する、2段階の認証を必ず行なっています」(相原氏)

いくら実名制が基本のFacebookとはいえ、実名で登録していない人や、素性が明らかでない人は相当数存在する。そういったユーザーをネットワークから除外するためには、システムに頼らない、人力での認証が欠かせないと判断したのだ。

「一度ユーザーを認証したあとでも、常にユーザーの動向に注意を払い、恋愛するつもりがない人はすぐに排除するなど、人力でのパトロール作業は確かに大変です(笑)。今後、作業の一部をアウトソーシングするといった策を講じる可能性はありますが、システムと人力の2段階認証という体制は続けていきます」(相原氏)

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「認証のような重要な決断はシステム任せにしない。代わりに、データ入力画面のUIは常に改善している」(久須美氏)

「システム面での改善に関して言えば、現在は人力認証をもっと簡単にするための管理システムのUI改善に力を入れています。最終的な可否を判断するのは人ですが、それを入力するインターフェースを簡易にするだけで、作業効率は大きく変わってきますから」(久須美氏)

一方、主にRuby on Railsで行っているマッチングエンジンの開発など、サービスの根幹を担うシステムに関しては、特別目新しい技術を使っているわけでも、特に技術的なこだわりがあるわけでもないという。

「もちろん、サービスのキモであるアルゴリズムには最大のこだわりを持っています。毎日の出会いを楽しくするための心理的な演出をいかにシステムに反映できるのか? といった研究は日夜欠かせません。とはいえ、コードは書けば書くほどバグるもの。できるかぎりシンプルなコードを書くように努めています」(久須美氏)

「枯れた技術が好きだ」と話す久須美氏。機能ありきの開発ではなく、「演出ありきの機能実装」を念頭に置いた開発スタイルこそ、『マッチアラーム』における最大の開発のポイントといえるかもしれない。

Webエンジニアと業務系エンジニアのタッグが、最適な開発体制を生む

「技術的なこだわりは特にない」と話す2人だが、今や『マッチアラーム』ユーザー数は数万人(2013年1月現在)。膨大な量のユーザーデータをやりくりする優秀なバックシステムと、多くのユーザーにとって快適なフロントシステムが整備されていなければ、なかなか達成できない数字だ。

メインで開発したのは、相原氏と久須美氏のたった2人だったにもかかわらず、半年足らずの短期間で、なぜこれだけの仕組みをゼロから作り上げることができたのか?

「2人ともエンジニアなので、要件さえ決まればあとは実際に手を動かしながらサービスを作っていける。これが、開発スピードを速めていると思います。あと、わたしがバックエンドから、相原がフロントからと、それぞれの得意分野から作り出してきたことも、効率的に開発を進められた一因かもしれません」(久須美氏)

結果的に功を奏したこの開発体制が形作られた背景には、2人のこれまでのキャリアが大きく関係している。

「プログラミングを始めたのは教養のため」と言う相原氏。自身の志向について「エンジニアよりも企画者に近い」と話す

「教養として」学生時代にプログラミングを始めた相原氏は、在学中からベンチャー企業に出入りし、Webサービスの開発に携わった。一方の久須美氏は、大学卒業後に就職したSIerで本格的にプログラミングを始めた。

サービスの企画ありきで開発を始めることが多いWebエンジニアと、土台の部分からがっちりストラクチャーを組んでいくことが多い業務系エンジニア。

2人でQrunchを始めるにあたって、特に意識はしていなかったというが、新しいサービスを企画・開発するスタートアップとして、このチーム編成は理想的な形の一つだといえる。

「確かに、僕は数撃つタイプで、何か企画を思い付けば、すぐに表側から作っていく。今までに100個以上はサービスやサイトを作っています。でも、表から作ったサービスは土台がしっかりしていないことが多いので、扱うデータが大きくなるとどうしても不具合が出てしまいます。そこを『マッチアラーム』では、久須美が同時並行してバックから作り込んでくれたことで、絶妙なコンビネーションが生まれたんでしょう」(相原氏)

エンジニアだから可能だった、関連アプリを用いたマーケティング

16万に届こうとしているFacebookページの「いいね!」数

サービスや開発体制以外にも、『マッチアラーム』が他サービスと一線を画する特徴がもう一つある。15万を超える「いいね!」の多さに代表される、集客力の高さだ。

「資金を投入してバンバン広告を打てば、金額に比例して集客力は高まります。もちろん将来的にはリスティング広告なども活用するつもりですが、言ってもわれわれはスタートアップ。潤沢な広告資金があるわけではありません。そこで実験的に始めてみたのが、独身男女の生活を支援する関連アプリの提供です」(相原氏)

出会いの場の提供だけでなく、さまざまなアプリを提供することで『マッチアラーム』の認知を高めようとする試みだ。

「それまでスマホアプリを作ったことがなかったため、アプリ開発の勉強も兼ねて、利用者に満足してもらえそうな恋愛関連のAndroidアプリを開発しました。Facebookアプリも含めると、10個以上は作ったと思います」(久須美氏)

こうした「ちりも積もれば山となる」方式で、こつこつとシンプルな単体アプリを開発、リリースしていったQrunch。

「『マッチアラーム』は完成途上」だと話す二人。本格的な始動に向けた準備は着々と進んでいる

一般的なマーケティング手法とは異なるやり方だったため、成否の見通しは不透明だったが、蓋を開けてみれば認知度の指標である「いいね!」の数を増やすことに奏功した。

とはいえ、「まだまだ『マッチアラーム』は完成途上のサービス。今も日々試行錯誤をしている」と話す相原氏。

「マッチング系サービスは、常に手元で情報を確認、更新できるスマホ用のアプリがあってこそ、その本領を発揮できると考えています。一定以上の認知度とユーザー、スマホアプリ開発のノウハウを獲得できた今、スマホ用アプリを開発を始める条件はそろいました。『マッチアラーム』の第2章は、これから始まるんです」(相原氏)

※編集部注:2013年2月1日16:00 Qrunchからの要望により表現を一部修正いたしました。

構成/桜井祐(東京ピストル
取材・文/くわ山ともゆき(東京ピストル) 撮影/竹井俊晴

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