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[連載:NEOジェネ!] マイクロギフト『giftee』がローンチ1年で学んだ、ユーザーに愛される「トンがり」の作り方

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世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回登場するのは、マイクロギフトサービス『giftee』の2人だ。ソーシャルネットワークを使ってギフトを送るという斬新さで、2011年3月のローンチ前から話題を呼んでいた彼らが、1年の「運用期間」を経て得た、ある気付きとは?
株式会社ギフティ
(左)取締役 エンジニア  柳瀬文孝氏    (右)Co-Founder & CEO  太田 睦氏

日々の人間関係の中で生まれるちょっとした「ありがとう」の気持ちを、ソーシャルWebを通じてリアルな「ギフト」として贈る。それが『giftee』の発想の原点だ。

昨今注目のO2O(オンラインtoオフライン)を体現するこのサービスは、『giftee』に加盟するカフェやショップが提供するギフト=例えば1杯のコーヒーやスイーツとの交換チケットなどを、Twitter、Facebookで贈ることを可能にした(現在はEメールにも対応)。

2011年3月のローンチ前から話題を集めてきた背景には、エンドユーザーだけでなく、『無印良品』のようなソーシャルマーケティングを検討する企業側にも広く注目された点がある。そしてサービス開始から1年、『giftee』は約7000人の登録者と100の加盟店舗を得て、さらに一歩踏み出した。

東京限定のサービスから京都、名古屋エリアへの進出、auとの連携による『かんたん決済』対応、3月のAndroidアプリのリリースに続いてiPhoneアプリも4月予定で公開、スマホ対応サイトのオープンなどなど。オンリーワンのビジネスモデル確立へ、着々と歩みを進めている。

「2010年、Open Network Labの「第1期Seed Accelerator」参加で注目され、KDDI∞Laboの第1期生となった『giftee』は、これまではPCのみをプラットフォームとするサービスとして展開してきた。

開発の中心人物・柳瀬文孝氏は「今思うと順番が逆だったかも」と笑うが、2012年3月にはスマートフォンアプリをリリースして、いよいよモバイル対応を固める。苦心したのは、プラットフォーム拡大に適応するためのAPIを自ら作り上げた点だ。

『giftee』の根幹を成す、ネット上でのギフト購入決済から店舗でギフトを受け取る際のパスコード認証までを、マルチプラットフォームで行えるようにする開発は、「そもそもAPIを『利用する』のではなく『開発する』ためのドキュメントがあまり出回っていないこともあって大変だった」(柳瀬氏)という。

と同時に、「ギフトを贈られる側」の人にはいまだガラケーユーザーも多いことから、これを機にガラケー対応やメールのドメイン指定対応も行った。

ギフティはCEOの太田睦氏と柳瀬氏、小川剛氏からなるコアメンバーが中心となって運営しており、全員、前職はアクセンチュア。ローンチ直後は「アクセンチュア現職社員による兼業スタートアップ」という部分も注目されたが、今では3人とも退職し、ギフティに専念している。

米国『GROUPON』の日本進出によってフラッシュマーケティングが急速に世に広がった2010年、「これとは違う、もっとイノベーティブな事業モデルを」と考え、『giftee』は誕生した。こだわったのは、感謝を伝えるギフトの質。「安くて何でもあるサイト」ではギフトらしさを演出できないと考えたからだ。

こうしたブランドづくりの努力は、『giftee』のシンプルなサイトデザインなどにも表れているが、ローンチから1年が経った今、「利用率を高めるには、トンがるだけでなく、もっと丸くなければダメな部分もあった」(太田氏)と気付いたという。

彼らが到達した独自のバランス感覚とは、いったいどんなものなのか?

地道なマイナーチェンジと、多くの「Say No」が大切だった

新しいWebサービスなのに利用者の約4割が女性。これも『giftee』の成功を裏付けるデータといえる。ギフトを贈るという習慣の親和性は、男性よりも女性の方が高い。サービス成功のためには、女性ユーザーからの支持が不可欠だということは分かっていた。

「新規サービスはトガらなきゃいけない」と前置きしつつ、過去の

「新規サービスはトガらなきゃいけない」と前置きしつつ、過去の”偏り”を語る太田氏

「だからこそ、最初からブランド構築には最大限気を配っていた」と太田氏は言うが、先に説明したように「ローンチ当初の『giftee』はちょっとトガらせ過ぎちゃっていたので、途中で改善したんです」と笑う。

「例えば、『gifteeとは』を説明するコンテンツをすべて英語で書くなど。その方がカッコいいから、というのが理由でした(笑)。でも、利用するのは圧倒的に日本人なわけで、『どういうサービスなのか』を説明する大事な文章が英語じゃ、いくらパッと見がカッコ良くても、利用したいとは思いませんよね」(太田氏)

スタートアップ企業のサービスとして注目を集めるには、オリジナリティーを構築するのが何より肝心――。こうした「定説」を意識し過ぎた結果のトガり過ぎを是正する改善作業は、Open Network Labの第1期Seed Accelerator通過直後から参加した柳瀬氏との議論も通じて、細かに行われてきた。

それが奏功し、利用ユーザー数や加盟を希望する店舗からのオファーは、ローンチから1年が経過した今年になって急速に伸びているという。

どんなサービスでも、一定の時間を経なければ本当のリアクションにはつながりにくいし、O2Oであるがゆえにネット完結型サービスよりも定着に時間がかかった、と分析することもできる。とはいえ、最も大きな理由は、地道なアクセス解析やTwitter上での反響を見ながらマイナーチェンジを繰り返してきた部分にあることは間違いない。

大きな夢や構想を話す太田氏に対して、柳瀬氏が現実的な「ツッコミ」をするなど、バランスの取れたチームだ

大きな夢や構想を話す太田氏に対して、柳瀬氏が現実的な「ツッコミ」をするなど、バランスの取れたチームだ

だが、こうしたマイナーチェンジを行う際も、『giftee』がユーザーに愛されるための軸だけはぶらさず貫いてきた。太田氏は、特に加盟店選びの際に重視してきたことをこう語る。

「おかげさまで、開始当初からこれまで、『ギフト提供者として加盟したい』というカフェや店舗さまからかなりのオファーをいただきました。でも僕らは、場合によってはお断りする機会も多かったんです」(太田氏)

すべての判断基準は、ギフトとしてふさわしいユーザー体験ができるかどうか(※取り扱っているギフト一覧はコチラ)。その軸から逸脱しそうな場合は、勇気を持ってNoと言う。

「本当に良いお店に厳選して提携していくことが『giftee』の生命線になるため、申し訳ないことに8割くらいの加盟依頼を断ってきた」(太田氏)

ある意味、リアルな店舗の経営に近いかもしれない。どこまでユーザーフレンドリーに徹して丸くなり、敷居を下げるかを考えるのと同時に、サービスとしてのオリジナリティーをどこで担保していくかも考える。問題はバランス、塩梅だった。

エンジニア的には”後ろ向き”なことも必要とあれば即実行

機能にもこだわりを持っているが、「ギフトを受け取る側の自由度」を上げる開発は必須と柳瀬氏

機能にもこだわりを持っているが、「ギフトを受け取る側の自由度」を上げる開発は必須と柳瀬氏

「デバイス、プラットフォームをようやく拡大したこと、auのキャリア決済に対応したことなどは、”丸くなる”方の部分ですね。僕もそうですが、『あの人にギフトを贈りたい』って思う場面は、何もPCに向かっている時だけじゃない。むしろ、外出中だったりする。それもあって、Andridアプリのリリースに始まるモバイル対応が急務だったんです」(柳瀬氏)

話題先行型で注目されたものの、その後の拡大やマネタイズに苦心するスタートアップベンチャーは少なくない。本ローンチ後の1年を、試行錯誤の末に乗り越えてきたからこそ言える言葉が、二人の口から次々と出てくる。

「”キャズム超え”を狙うための今後の課題は、ギフトをもらった側の変換率の部分。これを営業面と技術面の両方から、どう上げていこうか考えているところです」(太田氏)

『giftee』でギフトを贈ると、もらった側のSNSやメールに通知が行く。それを加盟店舗の店頭で見せることで、コーヒーが飲めたり、贈り物を受け取れたりする仕組みだが、何らかの理由でせっかく贈られた交換券をギフトに変換していないケースもまだまだある。

「ですから、ガラケー対応も、エンジニア的には”後ろ向き”の対応かもしれませんが、デバイスの自由度を高めて変換率を上げるために必要と判断しました」(柳瀬氏)

今後は、例えば「ギフトをもらった人が利用可能店舗の近くに移動したらプッシュ通知するような位置連動機能」(柳瀬氏)であったり、「ポイントとして蓄積していくことでギフトの中身がグレードアップするような仕組み」(太田氏)なども検討中とのこと。

「ただし、加盟店舗や機能をいたずらに増やすことはしません。これは意味があるからやる。これはやらない。というジャッジはこれまで以上にきちんとやっていかないと」(太田氏)

この判断軸こそが、2人が1年間サービスを運営して得た財産かもしれない。

取材・文/森川直樹 撮影/竹井俊晴

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