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「作家性のない者は滅ぶ」トップクリエイター2人が語る広告づくりの未来【特集:New Order‐清水幹太×真鍋大度】

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デジタルテクノロジーの発展やスマートフォンの普及により、広告コミュニケーションの世界は激しい変化を遂げている。従来型の広告が消費者に届きにくくなる一方、新たなタイプの広告手法が次々と現れ、効果を上げているのだ。そんな業界の先端を走り続ける2人のクリエイター、清水幹太氏と真鍋大度氏が対談。彼らが抱える危機感とは何か? そして、広告の未来はどうなるのか?
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PARTY Chief Technology Officer
清水幹太氏 

イメージソース/ノングリッドにて、テクニカルディレクターとしてさまざまなフィールドにわたるコンテンツ企画・制作に携わった後、2011年、クリエイティブラボ「PARTY」設立にクリエイティブディレクターとして参画。カンヌ国際広告賞、ADFEST、東京インタラクティブ・アド・アワード(TIAA)、One Show Interactiveなど、受賞多数

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ライゾマティクス アーティスト/プログラマ
真鍋大度氏 

プログラミングを駆使し、多彩な映像プロジェクトに参加。2011年度Prix Ars Electronica、インタラクティブ部門準グランプリ受賞。第13、15回文化庁メディア芸術祭、優秀賞受賞第16回大賞受賞。NHK紅白歌合戦の演出を行ったことでも話題に

清水 真鍋さんって今、広告の仕事をどのくらいやってるんですか?

真鍋 おそらく、年に3、4本くらいだと思います。昨年だとロッテのガム『ZEUS』のCMでアイデアと装置(あごに電極を装着し、ガムを噛むごとに音楽をスクラッチさせるもの)を提供したり。ただ、広告を手掛けているっていうよりも、普段やっている仕事の延長上にたまたま広告があるという感じです。ライゾマ全体だと広告をメインにしているメンバーも多いですが。

清水 うらやましい(笑)。仕事で作っている素材の中で、「これは商業コンテンツになるぞ!」というものを見つけて、それが使われた場所がたまたま広告だったということなんですね。

真鍋 わたしがYouTubeにアップしている映像を、広告代理店や企業の方などが見て、この手法を広告に使わせてほしいと依頼されるパターンもあります。顔に電気を流すやつなんかは数百件という単位でオファーが来ましたけど、オープンソースにしていたので回路やソフトを送って自由にやってくださいとお願いしてました。アップして4年くらいして初めて面白そうな企画が来たので、実際に自分が開発にかかわってやってみた感じですね。先日公開された『illion』のミュージックビデオがそれです。

メディアアートとして作った作品が、「広告に使いたい」といった企業や広告代理店などからのオファーにつながると話す真鍋氏

口にLEDを入れて光らせる仕掛けは、広告やミュージックビデオからたくさん引き合いがあったんですが、2年くらいしてやっと面白そうな企画が来たので提供しました。

植村啓一さんが手掛けたラフォーレ原宿グランバザールのTV CMです。ファッションの文脈に乗せれば、さらに面白くなりそうだなあと思ったんですが、米NY Times、英Guardianをはじめとした海外メディアで東京で流行っているファッションとして取り上げられて、予想を超えたバズりっぷりでした。

清水 なるほどなぁ。PARTYはクリエイティブラボとしていろいろやっていますが、企業から依頼を受けて広告を作ることが多い。だから、広告が本業というわけではない真鍋さんとは、ちょっと立ち位置が違いますね。

デジタル広告賞は滅亡!? スマホ・SNSが広告に向かない理由

真鍋 わたしは純粋な広告屋ではないのでわりと新鮮な気持ちで見ているつもりなのですが、日本の広告ってすごく面白いと思うんですよね。

清水 面白い。ただ、例えば純粋なデジタル広告にカテゴライズされるものは、世界的に見ても軒並み頭打ちの傾向が見えてますね。デジタルのスクリーンで流れるだけの広告には、表現の限界が見えてきているような気がします。また、ソーシャルメディアなどで展開される広告も、「ステマ」という言葉に象徴されるように、多くの人から邪魔者扱いされがちです。だから、どうやって広告を作ればいいのか、みんな悩んでるんじゃないかな。

実は、たまたま昨日(※編集部注:対談は3月19日に実施)、アジアの広告賞(第16回 アジア太平洋広告祭)の結果が出ていたのですが、純粋なインタラクティブやモバイル部門の受賞作はものすごく少なかったです。屋外広告とか、ほかの分野でデジタルをうまく使っているものの方が多い。

―― そうなんですか。SNSやスマートフォンの登場によって、新しい広告の形が見えたりするものだとばかり思っていましたが……。

「スマホやSNSは生活の一部となり、広告の入る余地はなくなりつつある」(清水氏)

清水 スマホやSNSに関しては、すでにわたしたちの生活に根付いてしまっているんですよね。例えばアプリにしても、企業のロゴが付いたアイコンのアプリなんて、よっぽどのことがなければ自分のスマホに入れたくないのが普通です。そういう意味では、生活との距離が近い分、広告くさいモノが排除されがちな場所じゃないかと思うんです。

真鍋 分かる気がします。

清水 だからわたしは、「インターネット広告」という分野の未来についてはかなり悲観的です。少なくとも、作り手や企業が「言いたいことを言う」ための表現広告は、インターネットにおいては絶滅すると思う。「モノを売るための表現」への拒絶反応が半端ない。

真鍋 多分、「インターネット広告」に関して言えば、Googleの広告モデルって、ものすごく秀逸ですよね。検索して、それに関連する広告を流すというのは、100年に1回クラスの発明だと思います。それに比べて、既存のコンテンツに乗っかって広告を出すというやり方はネタ切れになりつつありますね。だから、多くの人がスタートアップなどに走るのは、よく分かる気がします。プラットフォームを作って、そのデータをマーケティングに使うやり方は、下手な広告よりも効果的です。

だから、今後は行動データなどを効率よく取って、それをターゲティングにつなげる仕組みを生活の中に敷き詰める動きが加速するでしょうね。

現在はスマホが主流ですが、将来は生体センサになるんだろうなと。生体情報とそのほかのセンサを組み合わせれば、この人はよくランニングをしてるから、こういうシューズを勧めようとか、そういうことになる。こういうランニングをしている人はこんなシューズを買っています、とか口コミよりも信憑性ありますしね。データありき、マイニングありきの戦略ですね。

清水 そういう中で、インターネット広告の「見せ方」みたいなものは、どんどん重要じゃなくなる気がしますね。

トップクリエイターが語る、「作家性」を失うことの怖さ

―― なるほど。ところで、冒頭で清水さんと真鍋さんはそもそも立場が違うとおっしゃっていて、清水さんは真鍋さんをうらやましい、とおっしゃっていたじゃないですか。そこはどうしてですか?

(次ページへ続く)