エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

Antenna、Gunosy、vingowが「ニュース配信の未来」を公開討論~キュレーションサービスは今後1年が勝負

公開

 

(写真左から)「vingow」の米重克洋氏、「Antenna」の町野 健 氏、「Gunosy」の福島良典氏

Webニュースのあり方が、加速度的に変わりつつある。

人力による記事要約を売りに展開してきた『LINE NEWS』が今年11月末にリニューアルを行い、ほぼ同時期に『ヤフーニュース』もユーザーの利用状況に応じてレコメンドニュースが表示されるなどの大幅リニューアルを実施。また、グルメや音楽などの分野で新たなキュレーションサービスが登場し、話題を呼んでいる。

こうした中、以前よりスマホ向けニュース配信でこの分野を引っ張ってきたアプリサービス各社は、今後の展望をどのように考えているのか。『Antenna』、『Gunosy』、『vingow』(※50音順)のトップ3人に集結してもらい、互いへの思い、自社サービスの方向性、ニュース配信業界の未来などを語ってもらった。

プロフィール
株式会社JX通信社 代表取締役 米重克洋氏

株式会社JX通信社 代表取締役
米重克洋氏

1988年生まれ。高校時代から、日本のニュースメディアビジネスに対して強い問題意識を抱く。学習院大学在学中に、19歳でJX通信社を起業。社名の由来は「日本(Japan)からクロスメディア(Cross(X)Media)で世界に発信する」というもの。航空分野にも造詣が深く、将来は航空会社設立も目指している

プロフィール
株式会社グライダーアソシエイツ 代表取締役 町野 健氏

株式会社グライダーアソシエイツ 代表取締役
町野 健氏

1974年生まれ。日本ヒューレット・パッカードのシステムコンサルタントを経て、2003年、マクロミルに入社。海外事業やソーシャルアプリ事業の立ち上げなどを担当した後、2011年に海外キュレーションメディアの高まりを受け、Antennaの事業を構想。2012年にグライダーアソシエイツを設立し、同年5月にAntennaをリリースした

プロフィール
株式会社Gunosy 代表取締役 共同最高経営責任者(CEO) 福島良典氏

株式会社Gunosy 代表取締役 共同最高経営責任者(CEO)
福島良典氏

1988年生まれ。東京大学大学院在学中に、情報収集に高度な技術が必要とされるインターネットの在り方に疑問を感じ、関喜史氏、吉田宏司氏と共同でGunosyを開発。2011年に法人化し、代表取締役に就任した。現在は、経営者として事業全体の統括、エンジニアとしてリコメンドエンジンの開発/インフラ関連の管理を担当

ニュースアプリ分野は「生態系」が大きく変わりつつある

―― 本日は、ニュースアプリ分野を引っ張る3社にお集まりいただきました。それぞれのお立場から「業界の今」や「未来」について語っていただければと思います。まずは、この業界が置かれている現状について、どう感じていらっしゃいますか?

米重 まず感じていることは、ニュースのみならずインターネット上の「導線」、「生態系」が変わったということ。今は、Appleがすべて握っているという感じです。

福島 ちょっと前までは、GoogleがWebの入口であるのが当たり前だったんだけど、そのセオリーが完全に壊れてしまった。今や、App Storeがすべての入口ですよね。で、アプリって外部につながるリンクがないから、アプリからアプリに飛ぶことはない。だから、1つのアプリだけが使われ続ける傾向が強くなっていると思うんですよ(編集部注:この座談会は11月末に行われたが、12/4にはGoogleがアプリ内コンテンツも検索できるようになったと発表。「今後この流れは確実にくると思います」と福島氏は付け加える)。

町野 そうだね。ユーザーは1つのアプリに没入する感じだよね。

福島 これが要因で、アプリは「先行逃げ切り」がしやすくなっていますね。ユーザーに気に入られたら、ずっと使ってもらいやすくなってる。

町野 1人のユーザーが1日に使うアプリって、せいぜい5つとか、多くても7つくらいのものだと思うんです。その中の1つに選ばれるためには、企業規模なんて関係ない。ユーザーにどれだけの「心地よさ」を与えられるかが大事です。いかにストレスなく、欲しい情報を取れるか。

米重 スマホって画面が小さいですから、ユーザーに届けられる情報は限られてます。vingowは「自動要約」という手法を使うことで、小さな画面の中でもちゃんと伝えられるように工夫してますが、もっとテクノロジーを活用して向上を目指す余地はあるでしょうね。

―― 具体的には?

米重 vingowでは、「タグ」つまりジャンルをフォローする形を取っていますが、vingowの側からお勧めのニュースを更に提案していく仕組みを模索していきたいと思っています。

福島 多くの人がスマホで情報を見るようになったことは、大きな変化ですよね。一画面に表示される情報が少なくなったから、ユーザーにとって最も興味のある情報が一番上に表示されてなきゃダメ。Gunosyでは、「この25記事だけ読めばOK」という仕組みにしています。

また、ユーザーにいかに習慣化してもらうかという点も大事だなあ、と。新聞なら、毎朝決まった時間に届いてそれを読む。LINEなら、新着通知が来るとメッセージを読みに行くという風に、習慣づけができていますよね。Gunosyも、そこを目指しています。

町野 僕たち以外にもニュースアプリやキュレーションサービスが乱立する中、テクノロジーも大事ですが、それ以外のアプローチも同じくらい大事だと思っています。僕らの役割は、雑誌などの記者さんが一生懸命作った記事を預かって、それを良い形で読者に届けること。だから、まずはアナログ的なキュレーションを大切にしたいんです。

もともと「キュレーション」という言葉は、博物館の「キュレーター」から来ている。この言葉の語源って、「世話焼き」ってことらしいですね。情報とユーザーの関係を良くするため、アナログな手法を使ってお世話を焼いていきたい。

Antennaは雑誌、Gunosyは新聞、vingowは専門紙

―― それぞれ違ったアプローチですよね。正直、皆さんはお互いについてどういった認識なのですか?

町野氏

3社それぞれの個性を分析する町野氏

町野 僕らは「ライバル」と呼ばれることが多いんですが、個人的には、業界を一緒に盛り上げる「仲間」だと思ってます。

Gunosyさんの強みの一つはレコメンドエンジン。vingowさんは記事の要約やリアルタイム性。それらが僕らのサービスと合体したら、さらに良いサービスができるんじゃないかな、と。

福島 お互いに特徴も違いますよね。例えるなら、Antennaさんは雑誌、vingowさんは専門紙、僕らGunosyは新聞かな。だから、どれか1つだけが選ばれるというより、それぞれが別の役割を果たしているんだと思います。

米重 わたしも普段から、AntennaさんもGunosyさんも読ませてもらってます。Gunosyさんの、ニュース以外にもレコメンドする試みが面白いなあと思いますね。また、AntennaさんはiPhone版でもPC版でも、デザインへのこだわりが素晴らしいと思う。美しい雑誌を見ているような気分になります。

町野さんと福島さんがおっしゃっているように、3つのサービスはそれぞれの特徴があると思います。近い将来、大手が上からまとめて取りにくるかもしれませんが(笑)、その前に何とか成長できるといいのかなと思いますね。

福島 そうですね。GoogleやFacebookがいきなり参入したりすると、一番怖い(笑)。そういう時でもがんばれるように、成長し続けなきゃいけませんね。

町野 Facebookは、参入するって噂がありますしね。

米重 Googleカレントも、キュレーションサービスを意識しているところは大きいんじゃないですか?

町野 資本力で言えば、大手は凄い。ただ、アプリケーションの面白いところは、先行して地位を築けば大手とも十分戦えるところですね。iTunesとかGoogle Playのランキングを見ると、資本の強くない会社のサービスも堂々と上位に入ってます。アプリを使う側からすれば、企業の規模なんてまったく関係ないですから。

米重 弊社の株主でもあるネットエイジの西川さん(西川潔氏。数多くの企業を立ち上げたネットビジネスインキュベーター。「渋谷ビットバレー構想」の提唱者)は、「やりたいことがあるなら、起業は早ければ早い方がいい」と、よくおっしゃっています。僕はまだ若いので、勉強しながら走っているという感じです。

福島 僕らの世代(福島氏と米重氏はともに25歳。町野氏は39歳)が恵まれているのは、2000年以降に起業して成功した方々からアドバイスをいただけるところですね。僕らには見えていないけれど、先輩には見えている落とし穴の存在を教えてもらえているのが大きい。

町野 いいなあ! 僕も20代で起業したかった(笑)。2000年前後といえば、楽天やサイバーエージェントなどが上場したころじゃないですか。この2、3年も、あのころと同じことが起きていると感じるんです。世界と互角に戦えそうな筋の良いベンチャーが、たくさん生まれている。いい時代だと思いますね。

―― もう少し各サービスの特徴についてお聞きしたいと思います。冒頭で、「導線」が変わってきたというお話がありましたが、実際にユーザーの意外な動きもあったのでしょうか?
(次ページへ続く)