エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

NHN Japanの快進撃を支える“危機感”とは -代表・森川亮氏インタビュー

公開

 

2013年も、NHN Japanが止まらない。

1月18日に、『LINE』はサービス開始後1年7カ月という驚異的なスピードで1億ユーザーを突破。SNS黎明期に誕生したTwitterやFacebookなどのモンスターサービスと比較するのは野暮なことではあるが、それでもLINEの普及速度は圧倒的だ。

ほかにも、国内オンラインゲームでトップクラスのシェアを誇る『ハンゲーム』や、順調にユーザーを増やす『NAVERまとめ』、ブログメディアを中心にニュースで強みを見せる『livedoorブログ』など、NHN Japanは幅広い分野のインターネットビジネスで存在感を見せている。

そんな、現在最もHOTなインターネット企業であるNHN Japanの代表・森川亮氏に、快進撃の秘けつと今後の展望を聞いた。

プロフィール

NHN Japan株式会社 代表取締役社長
森川 亮氏

1967年神奈川県生まれ。1989年筑波大学第3学群情報学類・情報工学専攻を卒業後、日本テレビ放送網に入社。ネット広告事業や映像配信、モバイル事業などにかかわる傍ら、1999年に青山学院大学大学院・国際政治経済学研究科修士課程を修了してMBAを取得。その後ソニーを経て、2003年にハンゲームジャパン(現・NHN Japan)に。ゲーム事業部事業部長、取締役を歴任し、2007年に代表取締役社長に就任

競合が真似しきれないスピードで開発するしかない

—— まずは『LINE』1億ユーザー達成おめでとうございます。

ありがとうございます。

—— 2012年はプラットフォーム化やタイムライン導入など、『LINE』にとって大きな節目となる年でした。何かやり残したことはありましたか?

それはたくさんあります。例えば7月に開催したカンファレンス『Hello, Friends in Tokyo 2012』で発表した中で、『LINE サウンドショップ』などはまだこれからですし、やり足らないことだらけです。

—— その理由は?

いくつか要因はあるのですが、市場環境変化に合わせてあらかじめ準備していたサービスやコンテンツを作り直したり、18歳未満のユーザーの「出会い問題」、キャリアへの負荷対策を優先したという面も少なからずありました。加えて、ライセンスをお持ちの会社さんとの細かな交渉もありますし、優先順位というのはどうしても前後してしまいます。

期日を優先して中途半端なモノをリリースするよりも、ユーザーの皆さまに喜んで使っていただけるサービスを提供することに価値があると思います。もちろん、「やる」と宣言したものについては、当然のことながら実現に向けて準備を進めています。

—— 今年は『LINE』をどのような方向で発展させようとお考えですか?

続々と新たな展開を見せる『LINE Channel』は、スマホビジネスの観点からも高い評価を得ている

国内においては『LINE Channel』の展開を充実させながら、昨年末にリリースした店舗・メディア・公共団体向けのビジネスアカウント『LINE@(ラインアット)』サービスを通して、『LINE』を活かしたO2Oビジネスも強化していきます。

一方、海外では、現在好調に推移しているアジア・中東だけでなく、北米やヨーロッパ市場においても積極的にビジネス展開していきたいですね。

—— 『LINE POP』や『LINE バブル』といったゲームアプリや、『LINE Tools』や『LINEアンチウイルス』などのユーティリティアプリも好評です。こうしたさまざまなサービスを短期間でリリースできる秘けつを教えてください。

社内に蓄積された開発リソースを活かせていることは大きいですね。

LINEプロジェクトチームだけでなくNHN全体が持つ開発リソースを活用することができ、過去に開発したモノを『LINE』向けに提供できるだけの蓄積もありますから、だいたい3カ月ほどでサービスや機能をリリースすることができる体制になっています。

新しい開発に取り組むにしても、必ずしもゼロから作る必要がないというのは大きな強みです。

—— 競合についてはいかがでしょうか? 『カカオトーク』や『comm』のほか、最近ではFacebookもメッセンジャーアプリで無料通話機能の提供を開始しました。

もちろん意識はしますが、考えても仕方ないですしね(笑)。結局のところわたしたちにできるのは、他社より一歩先んじてサービスを開発し続けることしかありません。

『LINE』が先行している部分については、他社もいずれ追随してくるでしょう。だからこそ、真似しきれないように開発スピードを上げている、という部分もあります。

逆に、わたしたちが彼らのサービスを使ってみて良いと感じる点があれば、その理由を徹底的に掘り下げて、『LINE』の価値や『LINE』らしさに置き換えて作るようにしています。当初はメッセージだけだった『LINE』も、そうやってスタンプや無料通話、ゲーム、タイムラインなどの機能が加わり、段階的に成長してきました。

今は『LINE』の価値を最大化させることが最優先

—— 『LINE』が次の目標として掲げられているTwitterやFacebookのようなモンスターサービスに並ぶには、どうすれば良いとお考えですか?

それが分かったら苦労しません(笑)。わたしたち自身、『LINE』がここまでのサービスになるとは思いませんでしたからね。

一つ言えることは、コミュニケーションサービスとしては、英語圏や中国語圏といったそもそも使用人口の多いエリアを押さえる必要がある、ということ。

あとは、インターネットの世界で「日本発の世界的サービス」の前例がないので、仮説検証を繰り返しながら、一つの仮説が当たったらそこに集中投資していきたいと思います。

—— 今の発言を踏まえて、冒頭で少し触れられた海外展開についての具体的な構想はあればお教えいただきたいのですが。

今まで、海外展開についてはユーザーの自然増加に頼っていたところがありました。台湾やアジア諸国に関してはすでに拠点を現地化し、独自プロモーションを行っていたのですが、今後は欧米諸国をはじめ、まだ浸透していない地域に対して積極的にビジネス展開を行う予定です。

具体的に何をするかまではまだお話しできないのですが、ある程度準備はしているので、もしかしたら来週突然リリースされるかもしれませんね。

—— それは楽しみですね。では、好調な『LINE』のビジネスモデルや成功体験を、『ハンゲーム』のような他事業に活用する可能性はあるのでしょうか?

『LINE』ユーザーはもともとPCやインターネットに詳しくない方が多い一方、『ハンゲーム』のユーザー属性はネットリテラシーの高い方が多いです。このように、サービスによってそもそも利用者属性が全然違いますし、デバイスも違いますので、無理に連携や活用することは考えていません。

『ハンゲーム』については、すでに国内オンラインゲーム市場においてトップクラスのシェアを持っているので、PCの分野でさらにサービス強化を進めていく方向です。ですので、基本的に『LINE』で築いたエコシステムは『LINE』にとどまらせますが、他事業とマッシュアップできそうなものがあれば使ってみる、というイメージです。

—— となると、他事業の今後の構想についてはどうお考えでしょう?

まだお話しできないことが多くて恐縮ですが、構想はいろいろとあります。とにかく、『LINE』がヒットしているからといってむやみやたらにほかの事業と連携するのではなく、それぞれの分野でエッヂを立たせ、それぞれがNo.1サービスになるように突き詰めていく予定です。

—— 現段階で新規事業の構想はお持ちですか?

特にありません。今は、『LINE』に投資して、できるところまで大きくしていきたいと思っています。
(次ページへ続く)