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NHN JapanのUXルームに、「UX至上主義」の本気を見た

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『LINE』ユーザーの1億人突破を祝った1月18日からわずか1カ月。すでに海外展開の強化を明示したり、分社化を決定したりと、話題に事欠かないNHN Japan。

そんな同社のオフィスには、日本でも数少ない自前のユーザーリサーチルーム(以下、UXルーム)があるのをご存知だろうか?

NHN JapanのUXルームを紹介してくれた、UXデザインチームの此川(このかわ)祐樹氏

昨今のWeb/モバイルアプリ開発では、リリース後のユーザーフィードバックをもとにした機能改善やUI改善が、サービスを成長させるためには欠かせない。

NHN Japanも、「UX(ユーザーエクスペリエンス)がブランドを作る」と代表の森川亮氏が話すように、各サービスのターゲットユーザーの声を吸い上げ、より早いサイクルでサービスに反映させることを重視している。それを体現しているのが、このUXルームだ。

同社は渋谷ヒカリエにオフィスを構える前にもUXルームを構えていたが、今回のオフィス移転を機に、以前のUXルームから設計を変更したポイントがあるという。それが、以下の4ポイントだ。

1. 天井の2点にカメラを設置
2. 特注の可変式テーブルの採用
3. マジックミラーの撤去
4. モニタールームの拡大

このポイントに注目しながら、まずは、UXルームがどんなモノなのかを紹介しよう。

一見普通のミーティングルームのような部屋。天気が良ければ夜景を眺めながらリラックスした雰囲気でテストに参加できる

窓側から撮影した風景。「リビングルーム」をコンセプトに、ユーザーが緊張しないようなデザインを心掛けているそうだ

「座った人と同じ高さの目線」を意識して埋め込んだカメラ。こちらも、一見してカメラと分からないように工夫を凝らしている

天井のカメラは、部屋全体を撮影するだけでなく、ユーザーがスマホを操作する手元の様子を高解像度でズーム撮影

スマホ、タブレット、PCなど、さまざまな端末に対応できる接続端子がテーブルに収納されている

壁にある木板の部分は当初マジックミラーになる予定だったが、テストユーザーに圧迫感を与えるということで変更に

オーダーメイドのテーブルは可変式。テストするサービス、デバイス、人数によって、柔軟に変化するのが特徴

向こうのテーブルでディレクターとテストユーザーが会話する声を、手前のテーブルで議事録を取る、というスタイルもある

UXルームで行われているテストを監視するモニタールーム

モニター映像の切り替えや録画操作を司るこのソフトも自社開発。録画データは数年前のものも全部残っているという

モニターを自由自在に操る此川氏。ここで、手元や表情など、自分が重点的にチェックしたいポイントにフォーカスさせる

見たいポイントにフォーカスし、5つの画面で映す。「大画面で見た時にしか見えない課題も、ここで明らかになる」(此川氏)

オフィス移転とともに、UXルームも「スマホ対応」に

UXルームの設計から携わる此川氏いわく、「設計において重視したポイントは、スマホ対応とユーザーのストレス軽減」だという。冒頭に話した以前のUXルームとの変更点も、この設計思想に基づいている。

「前のオフィスのUXルームは、PC向けサービスのテストを中心に行うために設計されたものです。しかし、スマートフォン向けサービスの開発・改善が欠かせないものとなった今、それに合わせてUXルームもしっかり『スマホ対応』させる必要がありました。ですので、スマートフォンを操作している手元にズームしても鮮明に映せる高性能カメラを用意したり、テストユーザーとディレクターが近い距離感でやりとりできるように可変式のオーダーテーブルを設定したりしているのです」

さらに、以前のUXルームはマジックミラー越しにテストユーザーの行動を確認できたが、「見られている感があり、緊張してしまう」という声があったため撤去を決定。モニタールームの拡大も、以前は6名程度しか入れなかったスペースが、15名近くも入れるように。これは、UXルームを利用するチームが快適に使えるような環境を設計していることが伺える。

UXルーム見学に協力してくれた此川氏と、今回の取材を実現してくれた人事部・柳 喜俊氏(写真左)

此川氏にこの部屋のコンセプトをたずねてみると、「家のリビングに見立てている」と答えてくれた。

「ユーザーリサーチに協力していただくユーザーが、普段の利用シーンと同じ雰囲気の中でサービスを使えないと、テストとしては成立しません。だからこそ、リビングでリラックスしながらスマホをいじるような雰囲気を味わってもらえるような設計を心掛けました。利用された方からは、まだ緊張すると言われることもあるので、これからもっとリビングっぽくしたいと思っています」

UXルームの基本レイアウトからUXデザインチームがかかわることによって、「UXルームを利用するユーザーが快適に使えるような」デザイン設計がなされているのだ。

「おかげさまで、このUXルームの利用頻度も増えました。サービスのリリース前にテストを行ったり、リリース後のスマホゲームのチューニングをしたり、ニュースサイトであれば導線設計を見直したり……。サービスによって用途はさまざまですが、今はユーザーテストをやる前提でサービス設計を組み立てられているので、多くの社員が利用してくれています」

UXデザインチームは今、UXデザインを行う此川氏に加え、3名の制作メンバーを合わせた4人体制となっている。UXやBX(ブランドエクスペリエンス)をさらに強化するためにも、同ポジションの採用を促進しているという。

中でも、LINEに関するあらゆるサービス・マーケティングをグローバルに展開するアートディレクター、サービスのUI分析・設計から、リサーチ・評価までを行えるUXデザイナー、そして、印刷物などのオフライン媒体のブランドデザインなどを中心としたデザイン業務を担当するBXデザイナーを積極的に募集しているそうだ。
(応募はこちらのメールアドレスまで→dl_recruit@nhn.com

「ユーザーが楽しく利用するサービス」づくりに奮闘するNHN Japanの門を叩けば、独り歩きをしている感が否めない「UX」という言葉が本当に意味するモノが分かるかもしれない。

取材・文・撮影/小禄卓也(編集部)