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夏野剛×梅澤高明が”次の産業”のあり方を放談!「オープン・イノベーション」の可能性

公開

 

かつては名門と呼ばれた大手製造業が、巨額の赤字を抱えてリストラや身売りを検討している一方、ソーシャルゲームを代表格に新興のインターネット企業が過去最高の売り上げを記録するような時代。

これが示すのは、昨今のビジネスシーンでは、前例のないやり方で新しいものを生み出さない限り、企業も個人も活路を見いだせないということだ。そこで求められるのが「イノベーション」となるのだが、よっぽど突出した才能がなければ、独力で革新を生むことはできない。

では、どうすれば「新しいものを生み出す作り手」となれるのか。昨今注目を集めているオープン・イノベーションについて、ビジネス界に新風を吹き込む2人に語り合ってもらった。

※このコンテンツは、就職学生向け情報誌『就活type』(2012年11月1日発売予定)の巻頭企画「6人の賢人が語る『これからのビジネス』の話」からの転載となります。本誌情報は記事末尾にて。

プロフィール

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授
夏野 剛氏 

早稲田大学を卒業後、東京ガスに入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクールでMBAを取得。97年、NTTドコモに転職し、『iモード』の立ち上げに携わる。現在は慶應義塾大学で講義を持つほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、グリーなど数多くの企業で役員や顧問を務める。今年9月に始まったメルマガ(週刊『夏野総研』)も好評

プロフィール

A.T. カーニー株式会社 日本代表/グローバル取締役会メンバー
梅澤高明氏

日本を代表する戦略コンサルタント。東京大学を卒業、米マサチューセッツ工科大学・経営学修士課程修了。日産自動車を経て、A.T. カーニーの米国オフィスに入社、1999年に日本へ異動。全社戦略・事業ポートフォリオ、グローバル戦略、マーケティング、組織改革に関するコンサルティングを行う。経済産業省「クール・ジャパン官民有識者会議」委員

―― まずは読者に向けて、そもそもオープン・イノベーションとは何なのか、昨今のビジネスにどのような影響をもたらすようになったのかをご説明ください。

梅澤 本来の意味のオープン・イノベーションとは、メーカーが研究開発にかける時間を「買う」という目的で、他社から技術を買って製品づくりのサイクルを速めるところから始まっています。

夏野 今風に言うと、世界中の家電メーカーが、グーグルのAndroidを使ってスマートフォンを製品化するようなことですよね。

梅澤 そうです。ただ、1980年代を機に、企業のオープン・イノベーションの活用法が徐々に変化しだしました。技術だけでなく、それぞれの企業が持つさまざまなスキルも持ち寄って、新しい商品やサービスを生み出すようになっていったのです。

夏野 それが、2000年代に入って、いよいよ個人の間にも普及しだした。さらに、SNSが情報のプラットフォーム化した2010年代からは、個人同士が自由に交流して、新しいものを生み出せるようになってきました。

梅澤 SNSの普及で、個人と組織との関係も劇的に変わりましたよね。

夏野 僕はもう、ビジネスを企業軸だけで考える時代は終わったと思っています。アイデアと実行力のある個人が、オープンなネットを駆使して、ほかの能力ある個人とつながって新しいことを始めた方が、企業の動きよりも速いのは明らかです。

これからは「複雑系」のコラボが今まで以上進むはず

梅澤 さすが夏野さん、過激なことを言いますね。

夏野 でもね梅澤さん、想像してみてくださいよ。例えばFacebookが、どこかの大企業の新規事業開発チームから生まれていたと思いますか? たぶん無理ですよね。

梅澤 難しいのは事実ですね。

夏野 これって、創業したマーク・ザッカーバーグという「個」の力が、エスタブリッシュな大企業を上回ったという好例じゃないですか。さらに言えば、ザッカーバーグ自身、Facebookを立ち上げた当初は10億人ものユーザーが使うSNSになるとは予測していなかったはず。あるビジョンの下で作られたサービスが、ネット上でブラッシュアップされながら進化し続けて、今の形になっている。これぞ、現代のオープン・イノベーションだと思うんです。

―― では、このオープン・イノベーションの流れが、今後どんなビジネストレンドを生み出すとお考えですか?

最近は苦境をささやかれるZyngaだが、近代的オープン・イノベーションのあり方を示した先駆者であることに変わりはない

最近は苦境を囁かれるZyngaだが、近代的オープン・イノベーションのあり方を示した先駆者であることに変わりない

夏野 これからは、ビジネスのゴールを共有しない複数のプレーヤーがコラボレートして生み出す、「複雑系のイノベーション」が活性化すると見ています。

例えば、ソーシャルゲームのZyngaがFacebook上で利用できるアプリを提供して大成功したけれど、こういった動きは従来型の企業ではあり得ないものでした。ビジネスというのは、自社の中だけで設定した”閉じたゴール”に向かって動き、競合他社と競争するものだったからです。

梅澤 競争から共創にシフトしたことで、それぞれが違うゴールを持ちながらも、かかわるプレーヤー同士が利を得られる流れに変わりつつあるということですね。

夏野 そうなんです。

梅澤 そこに、日本経済に成長力を取り戻す上での、一つのヒントがあると考えているんです。

日本を救うかもしれない「クリエイティブ」立国への道

梅澤 わたしがかかわっているクール・ジャパンの活動で、常々感じることがあります。アニメでもファッションでも食でも、日本人は面白いものをどんどん取り込み、自由自在に混ぜ合わせて編集し、新たなコンテンツに昇華するのが非常にうまい。その結果、日本の文化コンテンツは、世界に誇るべき多様性と質の高さを持っています。

夏野 ゲームやアニメでは間違いなく世界の最先端を行っているし、何よりコンテンツマーケットが成熟していますよね。グリーの海外展開なんかを見ても、日本の成熟したマーケットでもまれたコンテンツは、世界に向けた”商材”として大きなポテンシャルを秘めていると感じます。

製造業の国際競争力が落ちる中、日本の

製造業の国際競争力が落ちる中、日本の”ミックス・カルチャー”を発信していくことで光明を見出せると話す梅澤氏

梅澤 ですから、文字通り”ワールド・イズ・フラット”となった今、日本のカルチャーをオープン・イノベーションによってビジネス化し、世界に送り出す。これが、「クリエイティブ立国」による日本の再生を可能にすると思うんです。

―― では、今お話しいただいたようなイノベーションを創出するには、何が必要だとお考えですか?

梅澤 大前提として必要になるのは、個人や企業、さまざまな立場のプレーヤーが、その垣根を越えてオープンなやりとりができるプラットフォーム作りです。

夏野 プラットフォームは本当に重要ですね。でも、日本人はこれを作るのが下手なんだよなぁ。

―― なぜ、日本から世界的なビジネスプラットフォームが生まれてこなかったのでしょう?

夏野 今までは「カネ」と「ヒト」がなかったからでしょう。もともと日本の企業は世界的なプラットフォーム作りをゴールとして設定していませんでしたから。でも、今後は好む・好まざるにかかわらず、内部留保しているお金をリスクマネーに投じなければならなくなるはずです。それが一つの打開策になるんじゃないかと思います。

梅澤 「ヒト」の面でも、冒頭で夏野さんが言われたように、「Will(意思)」を持つ個人がそれを表明し、企業や組織の枠を超えて表舞台に立ち、リーダーシップを発揮することが増えてきました。

震災時のイレギュラー対応に、未来への示唆があった

イノベーションを育むプラットフォーム作りが急務という意見で2人は一致。それを果たすのは誰か!?

イノベーションを育むプラットフォーム作りが急務という意見で2人は一致。それを果たすのは誰か!?

夏野 あとは、そういう個人を支える社会システムが必要になりますね。

梅澤 でも、それすらたくさんのWillが集結すれば作れてしまうということを、くしくも昨年の3.11大震災が示したと思うんです。Willを持つ個の発信から始まったものが、瞬く間に広がり、多くの企業やNGOを巻き込んだ大きなうねりになったじゃないですか。

夏野 確かに、あれはすごく迅速だったし、個のパワーがうまく集結して機能したケースでしたね。

梅澤 わたしがかかわった活動で言うと、3月14日に『Project KIBOW』が発足し、シビックフォースや(社会起業・起業支援を行うNPO法人)ETIC.などさまざまな団体とコラボしながら、一気に復旧・復興支援の活動が始まった。あれはすごく躍動的だったし、頼もしさを感じました。

夏野 それまで個人も組織もいわば”レギュラー対応”だったのが、3.11大震災が起きてイレギュラー対応を求められた。それがうまく機能したのだから、今後のビジネスに活かさない手はないですよね。

梅澤 そうなんです。あの震災で、企業はもちろんですが、多くの個人が自分で考え、自分の意思で動くことの大切さを痛感したはずです。これからのビジネスを担う若い皆さんにも、直感を信じて自分の好きなこと、やりたい分野に飛び込み、思い切り暴れてほしいと思います。

夏野 そうそう。過去を生きてきた上司や先輩の言うことなんて聞いたフリだけしておいて(笑)、どんどん若い世代にイノベーションを生み出すリーダーシップを発揮してほしいですね。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴

●雑誌『就活type』とは?

2007年に創刊した、就職活動に臨む学生に向けた就職情報誌です。「働くの本質を考える」を媒体コンセプトに毎年1回の雑誌発刊と関連する就職イベントの開催を行っています。

2012年11月1日(木)発売予定の雑誌では、本対談のお2方のほか、ライフネット生命保険の岩瀬大輔氏や元グーグル日本代表の辻野晃一郎氏(現・アレックス創業者)、前刀禎明氏、茂木健一郎氏、小林弘人氏などトップビジネスパーソン&知識人へのインタビューを多数掲載しています。販売は全国主要大学の学生協ほか、大手書店にて(290円)。
詳しい情報はWebサイト『キャリアビジョンtype』でご覧いただけます。