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[特集:ナイスアイデア生誕の地④-PG英単語] The・王道ブレストスタイル~ホワイトボードをアイデアで埋め尽くせ

公開

 

基本に立ち返る、アイデア1000本ノック
――『PG英単語』の場合

ナイスアイデア#4 『PG英単語
【概要】
2011年5月16日にリリースされた、プログラマが英文技術資料で最新の情報収集ができるように、英文技術資料でよく使われる英単語をピックアップした辞書アプリ。頻出順に200語を収録。発売当初はカテゴリランク最高15位と、まずまずの出だしを見せるが、6月9日にAppbankに取り上げられると、そのままカテゴリランク1位、有料総合26位を獲得するなど、スマッシュヒットアプリへと成長した。

【開発者】
クオラボ岡山忠利氏
(他に、『動物だあれ?』『乗物なあに?』『ベビードラム』など多くのiPhone・iPadアプリをリリース)

Appbankで紹介されるやいなや、プログラマの心をわし掴みにし、Appstoreのカテゴリランキング1位に輝くなど、一気に注目を集めたiPhoneアプリがある。それが、プログラマ向けの例文を収録した英単語辞書『PG英単語』だ。

authentication:名詞

【意味】
認証

【例文】
Automatically choose between NTLM and Kerberos authentication.
NTLM認証かケルベロス認証のどちらかを自動的に選択。

※『PG英単語』より引用

NTLM認証やケルベロス認証など、おそらく一般的な英単語集や辞書では出てこないような単語が堂々と、何だったら中心的な役割を担っているこの英単語辞書。日本語文献が少ない言語を扱うプログラマをはじめ、多くのプログラマをうねらせる例文が魅力だ。

そんな話を聞くと、このアプリの誕生は、「プログラマが英語の仕様書を作るときに不便に思ったから生まれた」なんてことを想像してしまいそうになるが、そんなことはない。『PG英単語』を企画したのは、意外にもコードを書いたことのない、アプリ開発会社の代表なのである。

ほど良い緊張感が生み出すユニークなアイデア

作りたいアプリのアイデアは、今でも尽きないそう

種も仕掛けもないフツーの会議室。特別なことをしなくても、アプリのアイデアは尽きないそうだ

『PG英単語』誕生の地は、大阪にある普通のマンションの、よくある会議室。”自然をコンセプトにした空間”でも、”日常の通勤電車”でもない、どこにでもある会議室だ。

企画者のクオラボ・岡山忠利は、そこで週に1回メンバーと2~3名でブレストを行う。ブレストのスタイルもいたってシンプルで、会議室のホワイトボードに思いつく限りのアイデアを書き出してい――。特別なことは一切していない。

そんな彼らがアプリをリリースするまでのプロセスは、以下の通り。

① アイデアを、ホワイトボードが埋まる程出す
② 既出のサービスかどうかを、Appstoreでしらみ潰しにリサーチ
③ ①~②の繰り返し
④ 市場に出ていないアイデアならば、即開発
⑤ 1週間後を目安にリリース

今回の『PG英単語』が誕生した時も、ご多分に漏れずこの流れを汲んでいる。

『SmartTub』や『Togetter』など、ユニークなアプリ・サービス開発の裏側には、ふと思いついたり、SNSからひらめきをもらったりすることが多いが、岡山氏の発想法は王道のスタイルだった。

「辞書系アプリの市場は、TOEICものの英単語アプリや国語辞典アプリといった王道のアプリはすでに大手がリリース済み。しかし、以前『古典単語』アプリをリリースしたときにウケが良かったこともあって、ニッチな辞書系アプリは需要があることは経験値として持っていました。

そこで、ブレストの場で『辞書系アプリ』をいろんな角度から切り口を考えたのです。その先に生まれたのが、『PG英単語』でした」

一見するとオールドスタイルなミーティングに感じるかもしれないが、週に1回、時間と場所をかっちり決めてブレストの機会を設けることで、良い緊張感が生まれ、頭が研ぎ澄まされるのかも知れない。

取材・文/小禄卓也

■クオラボ住所

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企画者談

『PG英単語』を思いついたときは、企画としては面白いと思いましたね。ただ、ちょっとマニアックすぎるからカテゴリランキングのTOP25位に入ればいいと、控えめに考えていました。

実際のところはランキングとか売り上げよりも、アプリをリリースする楽しさや購入者の反応をみたい欲求が先行していました。しかしAppbankさんの影響力はすごいですね。それまではカテゴリランキングでも最大で15位くらいだったのですが、Appbankさんに取り上げられて一瞬で1位になりましたから(笑)。

新しいアプリを生み出すことを最優先に考えているため、既出のアプリに機能追加をしたり、Android向けアプリをリリースしたりすることはほとんどありません。しかしながら、『PG英単語』だけは、今後もテスト機能を追加したり、Android版を作成したりして育てていこうかなと考えています。

僕らがアプリを生み出す上で信条として掲げていることは、「”レッドオーシャン”の中に隠れるブルーオーシャンを見つけ出し、スピード感を重視してアプリリリースすること」。ここに、全精力をかけています。アプリも、週1本のペースでリリースする予定です。

例えばTwitterのクライアントのように、すでにヒットアプリが何本も出ているようなマーケットは当然、競合が多く存在ます。仮に僕らが同じようにTwitterクライアントアプリを出すとすれば、先駆者や利用者にそうきたか!と思わせられるようなニッチな要素を盛り込むと思います。大きなマーケットを、利用シーンや利用者の属性を限定的にしてしまうなど、あえてニッチ化してしまう。それが後発の僕らの活路になるんじゃないかと考えています。

今後も、しばらくはこのスタイルでiPhoneアプリを生み出していく予定です。直近で考えているのは、『特殊小型船舶免許(水上オートバイ)学科試験問題集』。ニッチなマーケットで小さなヒットをこつこつ積み上げて、将来的には、ソーシャルゲーム市場などの大きなマーケットに参入していきたいですね。

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