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[特集:スマートグリッドエンジニアって何?③-地熱発電] 普及のカギを握るのはネットワークエンジニア!?

公開

 
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富士電機株式会社 エネルギー事業本部
発電プラント 火力・地熱統括部
電気制御技術部 電気制御技術グループ
副主査

鶴峯順一氏

その名のとおり、地熱を利用する地熱発電。地下数キロまで掘削し、熱水や水蒸気を取り出すことで発電する。天候の変化に大きな影響を受ける、太陽光や風力とは異なり、一定の熱量が供給されるので安定した電力を得られる点で、大きな注目を集める発電方法だ。

すでに世界で多くの地熱発電所が稼働しており、2010年5月には、単機容量世界最大のナ・アワ・プルア地熱発電所が、ニュージーランドで運転を開始した。同発電所を建設した富士電機で、電気制御技術グループの副主査である鶴峯順一氏は、次のように語る。

「ナ・アワ・プルアは、幸運にも大規模な熱源が集中していたため、140メガワット(14万キロワット)という、世界最大規模の発電容量を誇ります。ただ、これほど大きな熱源はめったにありません。そのため、われわれが建設している地熱発電所は、20~50メガワット規模のものが多いですね。このことから、地熱発電は発電量に対する設備建設費が、火力発電と比べ割高だと敬遠される向きもありますが、地熱発電のランニングコストはメンテナンス費だけ。長期的に見れば、初期投資のコストを補ってあまりあるメリットを持っています

初期の設備建設費が割高になるのは、掘削の調査・実施に時間と経費がかかり、地熱源の温度が一般の火力発電に比べて低いので出力に対して建設費が高いことが主な理由です。

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ナ・アワ・プルア地熱発電所があるロトカワ地区は、ニュージーランドの北島、タウポ火山帯に位置する

「世界的に地熱発電所は増加の傾向にあり、主に海外から仕事を受注しています。しかし、残念ながら日本では2000年以降、地熱発電の建設は増えていません。立地候補地の約8割が国立公園内にあって開発できないことが大きな理由です。また、温泉への影響を懸念する事業者からの反対もあります。現実には地下構造により影響の度合いは異なると聞いていますが、地下のことは目に見えないので理解を得るのが難しい状況です。」

火山の熱を利用する地熱発電は、もっとも日本に適した再生可能エネルギーと考えられる。なぜなら、日本における地熱の潜在能力は、産業技術総合研究所の試算によると2054万キロワットで世界3位。およそ原子力発電所20基分に相当する。にもかかわらず、現在利用されているのは、その一部で日本の総発電量の0.3%程度だという状況である。

ITシステムに依存する割合が高い地熱発電

では、地熱発電におけるエンジニアは、具体的にどのような仕事をしているのだろう。将来、ITエンジニアがその業務の一端を担える可能性はあるのか。

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取材時、タイミングよく見学できたスマトラへ出荷直前の地熱発電用タービン。直径にして約2mほどの大きさがある

「地熱発電プラント建設にたずさわるエンジニアは、大きく3つに分かれます。タービンなどのハードを造る『機械』エンジニア、発電機や変圧器などの電気部分を担当する『電気』エンジニア、そしてそれらをつなぎ、コントロールするシステムをつくる『制御』エンジニアです」

富士電機の制御エンジニアの場合、機械と電気の担当者から受ける要請に従い、オペレーター(発電所で施設の動作を確認、操作する人)が制御室でコントロールするためのロジックを設計、開発することが役割となる。

ITエンジニアがかかわるのは、制御エンジニアの組み立てたロジック通り、オペレーターがコンピュータで操作できるよう、システム化する際に限られているのが現状だ。

「ただ、地熱発電所の特徴として、中小規模のものが多いというのは、当初お話しした通り。発電量が少ないため、ランニングコストをいかに抑えるかが、地熱発電普及のカギを握っています。そのため、施設に待機するオペレーターは少ない方がよく、他の発電所に比べ、システムに依存する割合が高いのです。今後、できるだけ自動化してコストを抑えたいというニーズは、どんどん増えていくでしょうね」

SEの「保守・運用ノウハウ」。それを電気業界は求めている

発電システムの自動化。そこに、ITエンジニアが入り込む余地がある。

「日本の一般的な火力発電所にはプロフェッショナルなオペレーターがいて、24時間体制で発電設備を監視しています。そのため、システムに問題が起こったときの対処は、人に依存するところが大きかった。一方、海外の発電所では、何かの問題が起きれば、できるだけ自動で停止するよう、システムを自動化してほしいという要望が多い。良くも悪くも、システムの方が信用できるというスタンスなんですね(笑)」

鶴峯氏は話を続ける。

「こうした現在の地熱発電を取り巻く状況は、今後の発電システムのあり方に、示唆を与えてくれます。これから自治体やコミュニティは、大手電力会社に頼らない『地産地消』の発電ネットワークづくりを推進していこうとするでしょう。そうなれば、発電所は従来のような大規模・少数集中型ではなく、小規模・大量拡散型に移行する可能性が高い。発電所は小規模であるほど、ランニングコスト抑制が重要になってくる。しかも、自治体が運用する小規模な発電設備ではプロフェッショナルなオペレーターに頼らなくてすむように、システムをできるだけ自動化するんです」

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2010年、富士電機ホールディングス(現・富士電機)は、地熱を利用したバイナリー発電設備の販売を開始した

(クリックすると、別ウィンドウで大きな画像が開きます)

鶴峯氏によれば、「地産地消」の流れの中で、その土地に適した自然エネルギーを効率よく活用して安定した電力を供給する必要がある。そのために、地熱発電、バイナリー発電、太陽光発電、風力発電などの発電システムを並行して導入するはずだという。そうなれば、地熱・太陽光・風力などの再生可能エネルギーを組み合わせて発電システムをトータルに制御する、コーディネーションが重要性を帯びてくる。

「これら、今後増えてくるシステムの要件をひとつなぎにして、管理できるシステムを構築できるITエンジニアの需要が増えるのは間違いありません。キーワードは『コーディネーション』です。例えば、コンピュータネットワークの保守や運用に従事しているネットワークエンジニアなど、『ネットワークシステムの設計・保守・運用・監視』が業務という意味では、電気業界に新たな可能性を見つけられる方も多いのではないでしょうか」

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