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[レポ] マーク・ベニオフ講演に見た、ソーシャルエンタープライズ時代に活躍する「マルチテナント型エンジニア」とは?

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2011年12月14日と15日、米セールスフォース・ドットコムが主催するイベント『Cloudforce 2011 JAPAN』が、都内で開催された。そこで目玉となったのが、同社会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏による基調講演だ。

1999年の創業時から、一貫してエンタープライズ領域のクラウドコンピューティング化を推進してきたベニオフ氏。その講演内容から、2010年代にあるべきコンピューティングモデル像と求められるエンジニアの姿が見えてきた。

2011年のソーシャル革命は「ソーシャルデバイド」を引き起こした

講演冒頭、ベニオフ氏が特に強調していたのが、「2010年代は『ソーシャル革命』の時代だ」ということ。

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「2011年はソーシャル革命が世界を巻き込んだ年だった」(マーク・ベニオフ氏)

ソーシャルメディアのユーザー数はいまや17億におよび、コミュニケーションツールとしてメールのユーザー数を上回った(出典:comScoreDoubleClick Ad Planner)。しかも、Web利用者のWeb利用時間のほとんどが、Facebookの利用に使われているという(comScoreの調査にもとづくBen Eloxwitz {Wetpoint CEO}の記事より)。

中東の民主化運動やウォールストリート占拠、日本の反原発デモなどは、ソーシャルメディアなしには成し遂げられなかった――これらの事象を例に挙げた上で、「2011年はまさにソーシャル革命が起こった年だった」とベニオフ氏は言い、次のように続ける。

こうしたソーシャル革命の特徴を表すキーワードが

■Speed(スピード)
■Open & Transparent(オープン・透明性)
■Collaboration(コラボレーション)
■Individuals(個人)
■Alignment(連携)
■Leaderless(リーダーが存在しない)

だ。これらの特徴を無視して、ソーシャルメディアを活用した
ビジネスを展開することはできない
ソーシャル革命は『ソーシャルデバイド(分離・分割)』を生み出した。
例えば、企業単位で見たとき、
ソーシャルメディアを活用する顧客や社員に対し、
それを活用していない企業や製品に関しても
同じソーシャルデバイドが引き起こされている。
そこでわれわれが提案するのが、お客さまと社員を笑顔にする
新しいアプローチ=『ソーシャルエンタープライズ』

エンジニアがエンタープライズ分野での成否を決定づける

マーク・ベニオフ氏が提唱する、「お客さまと社員を笑顔にする新しいアプローチ」イメージ

マーク・ベニオフ氏が提唱する、「お客さまと社員を笑顔にする新しいアプローチ」イメージ

ベニオフ氏によれば、ソーシャルエンタープライズは3つのステップによって実現される。それが、
■ステップ1‐顧客のソーシャルプロフィールを作成
■ステップ2‐社員のソーシャルネットワークを構築
■ステップ3‐顧客と製品のソーシャルネットワークを構築

だ。

噛み砕いて言えば、
①「顧客のソーシャルプロフィールを作成」し、
②コラボレーション、
③顧客とつながって販売、
④サービス・会話への参加、
⑤自動化・拡張することで、
⑥「社員のソーシャルネットワークを構築」を実現。さらに、
⑦ソーシャルアプリケーションを用い、
⑧ソーシャルマーケティングを駆使することで、
⑨製品、パートナーを巻き込んだ
⑩「顧客と製品のソーシャルネットワークを構築」
するのだという。

これらのサイクルを生み出すことができれば、ソーシャルエンタープライズは企業が陥りがちなソーシャルデバイドを回避することができるだろう。ただ、これら仕組みの構築が、口で言うほど簡単なことではないのも確かだ。

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「顧客を満足させるために、まずは顧客のLikeを知ること」(マーク・ベニオフ氏)

例えば、顧客のソーシャルプロフィールを作成には、顧客を知り、彼らの好み=Likeを把握することが必要となる。FacebookやTwitter、LinkedIn上に公開される投稿情報などのデータを抽出し、分析、フィードバックを行わなければならない。

欧米ではすでに「データサイエンティスト」に対する需要が高まっているというが、ソーシャルエンタープライズの世界では、まさにデータ解析やそれを支援するシステムを開発できるエンジニアの働きが求められるようになるだろう。

クラウドとエンジニア、双方に求められるオープンさと拡張性

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では、具体的にどんなエンジニアがソーシャルエンタープライズの世界で活躍できるのだろうか? それを推察する上で、参考になるのが、以下に引用するベニオフ氏の言葉だ。

ソーシャルエンタープライズの柱は、
『マルチテナント型のクラウドコンピューティング』である。
すなわち、

■スピーディー:ハードウエア/ソフトウエアが不要
■利用が簡単:自動アップグレード、利用に応じた課金モデル
■オープン:ロジックやデータを移植可能、あらゆるデバイスをサポート
■誰にでも手が届く:企業規模を問わない、経済的、環境にやさしい

ことを特長として備えているエンタープライズクラウドコンピューティングだ

ベニオフ氏が言及しているのは、あくまでソーシャルエンタープライズで求められるクラウドコンピューティングについてだ。しかし、同じことが人材に関しても言えるのではないか。

つまり、ソーシャルエンタープライズの普及で求められるようになるのは、「マルチテナント型のエンジニア」であり、
■スピーディー:サービスの企画から開発まで一手に担える
■利用が簡単:特定の言語や技術分野に固執しない「拡張性」を持つ
■オープン:外部への情報発信やコミュニティへの参加に積極的
■誰にでも手が届く:顧客を選ばないフレキシビリティーを持つ

といった特徴を備えた人材であると。

少々「意訳」が過ぎる見方かもしれない。とはいえ、冒頭で挙げた「ソーシャル革命の特徴を表すキーワード」を踏まえれば、あながち間違いではないだろう。

取材・文・撮影/桜井 祐(編集部)