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[コラム] 「ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミット」レポ~月商1億のアプリを生む3つの鉄則とは?

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多くの人が一度はあこがれるだろうヒットサービスの開発。しかし、技術の世界のトレンドは、ものすごい勢いで変わっていく。山口百恵やマドンナなど、芸能界ではある時代のアイコンとなったスーパーアイドルのことを、敬意を込めて「時代と寝た女」と評することがあるが、サービス開発でも良い意味で「時代と寝る」スタンスが欠かせないのかもしれない。

ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミットは、平日夜の開催でも200名の会場が満席に。この業界の熱気が伝わる

ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミットは、平日夜の開催でも200名の会場が満席に。この業界の熱気が伝わる

10月6日、ベンチャー・カフェ主催で行われた「ソーシャルゲーム・リーダーズ・サミット『トップ3が語るソーシャルゲームの未来/月商1億円アプリの作り方』では、急成長するソーシャルゲーム業界で、開発者たちが「時代と寝る」ためのヒントがたくさん語られた。

登壇企業は、『真・戦国バスター』や『キャプテン翼~つくろうドリームチーム』などのヒットゲームを輩出し、先ごろIPOも果たしたKLabと、あの『ビックリマン』をソーシャルゲーム化して話題のドリコム。そして、『任侠道』、『海賊道』といった”道シリーズ”のほか、多数の人気ゲームを持つgumiの3社。

2011年時点で2000~2500億円規模と目される(※三菱UFJモルガン・スタンレー証券調べ)ソーシャルゲーム市場で、イベントタイトルどおり大きな収益を生み出している3社が、それぞれの考えるヒットの法則や世界展開についてホンネを披露してくれた。

イベント詳細は、ベンチャー・カフェによる開催レポートと、約200名もの参加者たちによる実況Tweetまとめに譲るとして、3社のトークセッションから読み取れたのは、多くのファンを惹きつけるサービスづくりにはやはり共通項があるということだ。

それは、おおむねこの3つにまとめられる。

【1】 競合から得るインスパイアと細部へのこだわりが差を生む

「類似モデルのアプリも多いこの業界で、どのように差別化を図るか?」というトークテーマで、3社が異口同音に語ったのがこのキーワードだ。

写真左から、gumiの國光宏尚氏、ドリコム長谷川敬起氏、KLab森田英克氏。全員が業界内で知られる有名人だ

写真左から、gumiの國光宏尚氏、ドリコム長谷川敬起氏、KLab森田英克氏。全員が業界内で知られる有名人だ

各社ともに、ヒットを生むには独自の世界観とシナリオづくりが最も大切と前置きしつつ、

「他社にインスパイアされてアウトプットする部分は現実としてある。それを『模倣』で終わらせずに『オリジナル』にしていくのは”品格”の問題」(KLab取締役・森田英克氏)

「根本は似ていても、ユーザーが喜ぶかどうかはディテールの作り込みで変わってくるもの」(ドリコム執行役員・長谷川敬起氏)

「ディテールへのこだわり、作り込みは日本人の強み。それを大前提に『イイもの』を取り込み合うことで、新しい遊び方が生まれていくんじゃないか」(gumi代表取締役社長・國光宏尚氏)

と話していた。また、3社すべてが世界進出も視野に入れていると話す中、細部の作り込みの丁寧さは日本のゲームならではの強みになるはずと意見が一致。開発者にとって、基本となるのはやはり「こだわること」にありそうだ。

【2】 ヒットを生む土台は、「希有なセンス」ではなく「徹底力」

ソーシャルゲームの世界では、先に挙げた「世界観とシナリオ」でファンの気持ちをつかむことはもちろん、リリース後に改善を加えるスピード感も大きく売り上げを左右する。

こうした特徴もあってか、「成功と失敗の境界線はどこにあるか?」というトークテーマで3社が挙げたのが、「徹底力」の重要性だった。

他社の良い部分を学び、自分たちの作るゲームの特色は何かを考え、何がユーザーに刺さるのかチームで徹底議論する。それを形にした後は、ユーザー動向の調査結果をしっかり観察した上で「穴」をふさいでいく――。

KLabの森田氏は、この一連のPDCAサイクルを「組織としてスピーディーにやり抜く徹底力を大事にしている」と述べ、ドリコム長谷川氏やgumiの國光氏も、企画・開発・分析チームが全体でこれらに取り組むことがヒットの条件と強く同意していた。

この「徹底力」として、國光氏は「ユーザーとしての努力も必須」と補足。他社のヒットゲームはどこが優れていて、何が支持されているのかは、自分自身が徹底的にやり込んでみないと分からないと語った。開発にどっぷり浸かると、忙しさや作り手特有の思い込みで「ユーザー体験」がおろそかになりがちだが、遊ぶことの初期衝動を忘れない行動習慣も大切というわけだ。

【3】 「中二的&ジャンプ的」な視点を忘れるな

そのココロは、日本国内でも海外でも、結局ユーザーは何を好むのか? という本質を見極めようとする意識を持ち続けなければならない、ということ。開発者自身が「ユーザー体験」を重視すべきという上の話にもつながる部分だ。

「流行るテーマは時代によって変わるけれど、流行るコンテンツの本質は変わらない」と國光氏は力説していた。開発コンセプトや描くシナリオの部分で、普遍の本質をつかむことこそが、ヒットゲームを”連続して”生むための源泉になるからだ。

今回のトークセッションでも、3人が最後に盛り上がっていたのは、「ソーシャルゲームづくりのキーワードは『中二的』と『ジャンプ的』だ」という話題。つまり、時代が移り変わっても『週刊少年ジャンプ』が数々のメガヒット作を生み出せるのは、「友情・努力・勇気」という編集コンセプトを守り続け、それが少年たちのココロをつかんできたから、ということだった。

競合他社が急増しており、流行り廃りも激しいソーシャルゲーム業界だが、「時代と寝続ける」には、至極ベーシックなメカニズムを理解し、立ち戻るべき原点として都度振り返らなければならない。逆説的ではあるが、これがヒットメーカーたちの結論だったのは、新鮮な発見だ。

オフレコ前提の秘話も数多く披露されたこのイベントは、第2回開催も計画されているようなので、より深くヒットゲームの世界を知りたい人は次回ぜひ足を運んでみては?

取材・文/伊藤健吾(編集部)