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[連載:高橋信也⑨] 仕事と私生活、両方で「モテキ」を呼び込む習慣

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PMOの達人・高橋信也のプロジェクト最前線
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株式会社マネジメントソリューションズ  代表取締役/CEO
高橋信也

外資系コンサルティングファーム2社を経て、大手メーカー系システム会社へ転職。PMとしてグローバル案件などを手掛けた後、2005年に各種プロジェクトマネジメント支援を行うマネジメントソリューションズを設立。著書に『PMO導入フレームワーク』(生産性出版/税込2310円)がある

起業するまでのわたしは、内向的で対人コミュニケーションにコンプレックスを抱えていた、というカミングアウトを前回の連載でしました。それなりに反響をいただいたので、今回はその話の続きから始めましょう。

コンプレックスというものをわたしなりに分析すると、「過去の失敗経験で味わったトラウマを解消できず、そのまま抱えている状態」ということになるでしょう。振り返れば、子どものころのわたしは、自分のわがままを通す手段として泣くことを多用していました。

典型的な「わがままし放題の駄々っ子」で、幼少期は周囲から浮いていたという高橋氏(※写真はイメージ)

典型的な「わがままし放題の駄々っ子」で、幼少期は周囲から浮いていたという高橋氏(※写真はイメージ)

自分の主張が通らず、気に入らないことがあるとすぐに泣く。典型的な駄々っ子です。小学校に上がっても、泣いたりイジケたりを繰り返し、気付けばいわゆるイジメられっ子に。「わがままを通そうとするあまり、皆に受け入れてもらえなくなった」。これがわたしの最初のトラウマになったのです。

そこで、中学に入るころから、ようやく自分なりに考え始めました。生まれて初めてのコンプレックス脱出作戦です。作戦その1は体力強化。運動音痴という、イジメられる大きな原因を払しょくしようと、水泳に没頭しました。ボールゲームなどと違って、水泳は運動神経の良しあしとはそれほど関係がないはずだ、と。

作戦その2は、大学生になる前後から開始しました。それは、しゃべりの強化です。わがままな自分を変えようとせずに、わがままを通す手段を身に付けようとしたわけです(笑)。

人も組織も、「強烈な反省論」がないと変われない

似たような経験を持つ人は共感してくれるでしょうが、これってそう簡単なことではありません。口ベタな人間が、ある日突然弁が立つようにはなれませんから。それでも、ヒントをくれるものがあった。当時人気を集めていたTV番組『朝まで生テレビ!』です。

今も続くこの番組は、わがままの権化みたいな人たちが登場して、自分の意見を通すためにしゃべり倒しますよね? 話すタイミングを心得て、皆を納得させる内容を上手に素早く口にする技術。これを持っているか否かで、議論に差が出てしまう様子を、学生のわたしは食い入るように観ていました。

そのうち、観るだけでなく、参加するようにもなりました。もちろん空想で、ですが。TVの前にノートを持って座り、あたかも自分も参加者になったような気分で、言いたいことをその都度ノートに書いていました。この作戦で、わたしなりに効果が得られたんです。自分の主張を伝える際、「なぜそう思うのか?」をうまく伝えられるようになり、主張することに恐れを抱かなくなっていきました。

From BobbyProm 長年「3割」をキープしてきたイチロー選手は、「7割打てていない」ことを愚直に分析してきた

From BobbyProm

長年「3割」をキープしてきたイチロー選手は、「7割打てない」事実を愚直に分析してきた

さて、なぜこんな身の上話をしたかというと、人間は失敗から学ぶ姿勢が強ければ強いほど、コンプレックスを克服できるということを伝えたかったからです。

あのイチロー選手は、3割打ち続けてきたことよりも、7割打てないことに常々不満を持ち、努力してきたと聞きます。プロジェクトマネジメントの視点で見ても、直近の失敗から学べることは何か? を繰り返し議論している会社やチームほど、成功を収めているものです。

一般的な組織は「終わりよければすべてよし」となりがちですから、なおさら差が出てきます。

個人のコンプレックスを克服する際も同じで、「過去のイヤなこと」と真摯に向き合ってクリアしようとする習慣を持つと、徐々に改善できるわけです。

わがままなエンジニアほど人前に出ていく意外な理由

そして、もう一つ伝えたいのは、個人主義でわがままな人ほど、意識してコンプレックスを払しょくしようとしないと成功を収められない、ということ。わたしの知る限り、エンジニアには個人主義の人が多いように感じますが、優秀なエンジニアほど人前に出て、オープンでいようとします。

なぜか。わたしの見方では、他人とつながっていく中で、人に認めてもらえるコツのようなものが分かってくるからじゃないかと思っています。彼らは自分の殻を突き破って変わろうとしているんじゃなく、さらに大きな殻を創り、他人をその中に巻き込んでいくんです。

結果、斜に構えて自分の世界に引きこもりがちなエンジニアよりも、自分の意見が通しやすくなる。

なぜそう思うのかと言えば、まさに自分がそのパターンだったから(笑)。大学に進学して、故郷の福岡から東京に出てきた時、都会っ子たちの醸し出すナンパな雰囲気になじめず、数カ月で「マジで大学辞めようかな」とさえ思っていました。でも、当時は我慢してとにかくしゃべりを鍛えようと、『朝生』を観たり、さまざまな本を読んでロジカルなコミュニケーションを学ぼうとしました。

その努力の源泉にあったのは、どうにかして人に認められたい、もっと平たく言えば、人に理解されたい、異性にモテたいという気持ちではないかと思っています。モテたいという気持ちは人間の性(さが)で、これを満たすことができると思えば、たいていのことは受け入れられるものです。

マンガ『モテキ』は、今年映画化もされて大ヒットしていますよね? これも、言ってしまえば人間の性の表れだからでしょう。

でも、マンガや映画で描かれているような都合の良いモテ現象なんて、現実の世界ではめったに起きません。モテたかったら、モテるキャラクターの演じ方を覚えるしかない。わたしはそう思っています。

ポジティブワードを駆使してモテキャラを演じよう

では、仕事でも私生活でも、いわゆる「モテキャラ」とはどんな人なのか? 先ほど、斜に構えた人は周囲に受け入れられにくいと書きましたが、他人受けを必要以上に意識してオープンぶろうとする「ええかっこしい」にも、嘘臭さが常に漂います。それよりも、許容範囲の枠を超えない程度に自己流で、常に自分の考えを自然に伝えられる人。これがモテの基本じゃないかと考えます。

ここからがポイントです。わたしの考えるモテの基本が正解ならば、モテる人ほど優秀なエンジニアになれる。これが、わたしが今回伝えたかったポイントです。

「自分の考えがあってロジカルだけど、自然体でオープンな人」。そんなモテキャラに本気でなろうとするのは大変でしょう。先ほども書いたように、自分の殻を突き破ってコンプレックスを克服しろと言われても、それが難しいことはわたし自身が身を持って知っています。

しかし、「演じる」ことは可能だと思うんです。わがままな自分を殻の中に隠し持ったまま、オープンな人を演じる。言い方が少々悪いかもしれませんが、これならば訓練すればできるようになります。

仕事中に「No!」と言いたくなるシチュエーションはごまんとあるが、そこでどう「かわす」かが大事に

仕事中に「No!」と言いたくなるシチュエーションはごまんとあるが、そこでどう「かわす」かが大事に

エンジニアの仕事の具体例で説明しましょう。ありがちな例として、非常に無理のある日程で「こういう機能を実装してほしい」と言われたとします。そこで、「それは絶対無理です」と突っぱねるのはアウト。逆に、無理を承知で問題を指摘せずに引き受けるのもアウトです。

「今の状況では無理ですが、この問題点をこう改善できれば、ここまでは可能です」と答えたなら、発注側は好感を持つでしょう。相手は、できるようにする方向で考えてくれたと感じるからです。

わたしはこれを「ポジティブワード」と呼んでいますが、男女の関係でも同じことだと思います。コミュニケーションのやり方を変えるだけで、モテキがやってくる確率が上がるのです。

「ちょっとネガティブだけど、基本ポジティブ路線でわたしのことを尊重しようとしてくれる」と思われたら、そのギャップに注目が集まったりするものですからね。

というわけで、「モテる人」は「デキる人」、「デキる人」は「モテる人」となる。読者の皆さんの中にも、過去のわたしと同じように内向的なコンプレックスを持っている方がいたら、完全克服を目指す前に、ポジティブワードをうまく使ってモテキャラを装ってみてはどうでしょうか? それが習慣化するようになれば、起業でも転職でも、日々の仕事からプライベートまで、きっと好転していくはずですから。

撮影/外川 孝(人物のみ)