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[連載:八反田 智和] 矢野りんさんに聞く(1/4)-「デザイナーって、『自分を超えた自然の成り行き』を形にする人だと思うんです」

公開

 
スマホ新時代のニューリーダー、未来へのメッセージ

株式会社HatchUp CEO/株式会社6x6cm CEO
八反田 智和(はったんだ・ともかず)

ソーシャルアプリxスマートフォンアプリ業界に特化した開発体制構築支援事業、事業拠点構築支援などを手がける株式会社HatchUp代表。国内海外でソーシャル×スマホ業界イベント『STR』を展開中。また、株式会社6x6cmでは、自らアンドロイドアプリのリリース・運用も行っている

こんにちは、八反田です。

連載第3回目は、WebデザインやUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインの業界有名人である矢野りんさんにご登場いただきます。矢野さんへのインタビューは、これまでと少し体裁を変えて、複数回の展開にしていこうと思います。

八反田氏が矢野さんらと協業で作成しているソーシャルネットワーク連動カメラアプリの『6×6(ロクロク)』

八反田氏が矢野さんらと作成するソーシャルネットワーク連動カメラアプリ『6×6cm(ロクロク)

矢野りんさんとは普段から『6x6cm』メンバーとして、FacebookやSkype上を中心にお付き合いさせていただいているのですが、実は僕自身が「矢野りん」像を全然つかめていないからです。

先ほどお伝えした「WebデザインやUXデザインの有名人」の顔だけでなく、スマホやAndroid女子部の顔、そして鋭いコメントを発するお子さんと楽しそうな日々を送るお母さん……。いろんな顔を持っていてとても面白いのですが、それら全部を一気に知るのはそうとう難しそうなので、これまでは気にしないようにしてました(笑)。

そこで、このロングインタビューを前に、ある休日の午前中を全部費やして、ストーカーばりにFacebook wallとネット上のインタビュー、そして矢野さんのブログ『ものづくりにっぽん』のエントリなどなど、直近のいくつかを拝見させていただきました。

今回は、読者が「エンジニア」、テーマが「スマートフォンの未来」ということもありますので、Webの世界においてエンジニアの相方であるデザイナー目線で、いろいろお話を伺っていきたいと思います。
 

今回のゲスト

クリエーター/Webデザイナー

矢野りんさん 

1973年9月28日、北海道足寄町生まれ。Webデザイナー/ライター。Webサイトなどのメディアデザインを手掛けるほか、デザインに関する執筆活動を行う。主な著書は『Webレイアウト・セオリー・ブック』、『デザインする技術』、『スタイルシート・デザイン XHTML + CSSで実践する Web標準デザイン講座』など。Android女子部の部長としても知られる

八反田 まず、『ウェブエキスパート』に載っている最近の矢野さんのインタビュー記事を読ませていただいて、以下の言葉が印象に残りました。

「過去の知識、習慣の惰性で働いている人を驚かせたい」

「Webデザインの理論を作ることを自らの仕事に」

「実践者としてWebデザインをし、理論を体系化し、さらにそれを発信するというサイクル」

「あまり過度に便利すぎると、人間はどこが便利なの分からなくなる。大切なのは生活に溶けこんでゆくこと」

「いつまでも幸せにモノづくりを続けるために」

また、少し前の『Find Job!』の記事では、「わたしは基本的に自分が面白いと感じるものを伝えたい」と書かれていますね。簡単に言うと、自分の日常生活から生まれた気付きや価値を形にして伝える、そのスパイラルをずーっと楽しんでます、ってことですよね?

矢野 はい、ずーっと楽しんでます! 生活していて、常に何か発見したり、どうしてこれはそんな風になってるのかな? と疑問を持ったりすることが、子供のころから好きです。インタビューでは職業というか、仕事のことについて質問をいただいたので、質問に対応するように範囲を区切って話していますが、仕事だからというよりも、単なる性格ですね。

八反田 確かに、Skypeで話していても、想定外の文脈でどんどん情報があふれ出てくるので、考えることそのものがお好きなんだろうなと思います。

一方で、エンジニアさんも、モノづくりをすごく楽しんでいるじゃないですか。できなかったことができることで好奇心が満たされたり、「俺はできるんだ」っていう自己承認をしたり、できる・できないの狭間で同じ境遇のエンジニア仲間とチャレンジする連帯感や優越感だったり、そしてできたモノがユーザーに使われてフィードバックをもらう外部社会とのつながりだったり……。

矢野 そうですよね。

モノづくりの「客観性」と「主観性」をどう折り合わせるか? 

第1回の八反田氏連載に登場したadamrocker氏との協業で、『Simeji』など有名アプリの開発を行ってきた矢野さん

八反田 矢野さんは以前、エンジニアとデザイナーの関係性を「客観(エンジニア)と主観(デザイナー)」と言っていましたが、『Simeji』や『6x6cm』開発での【adamrockerさん×矢野りんさん】の関係のように、お互いの領域に歩み寄ることで、よりいっそうモノづくりを楽しんでいる生態系ってすごく興味深いです。こういう関係性って、何で日本では一般にあまりないんでしょうか?

矢野 問題を「職業的な属性の違いから来る相互理解の困難さ」に絞った場合、最終的に客観を重視しなければ務まらないエンジニアと、そうでないデザイナーは、置かれた立場が違い過ぎます。そして、それぞれ立場を守ろうとすると、普通は議論が発生します。

例えば、客観的に見て正しいことが証明できる状態を作ることは、「社会性」と関係があります。うまく物事を回す、つまり、部分的に協調し合って一つの大きな仕組みを成立させることに必要な考え方です。それがシステムを作るということですし、プログラミングするということにも似ていますよね。

一方で、主観的に正しいと言える態度を持つことは、「自然」と関係があります。あ、主観と言うと「主=自分自身」ととらえられやすくて、”エゴの親戚”のように思われますが、「原因と結果」という自分を超えた自然の成り行きを察知する目を、正しくは主観と言います。それを、さまざまな都合に構わず・臆せずに表明する人を「主観的な人」と言います。

で、システムは、前提として都合の範囲を決めて作るものですよね。すごいディベロッパーは、とても達観した視点から素早く範囲を決められる上に、最大の効率でそれを回す方法を考えたりします。それはもう、ものすごい客観性です。

そんな時、デザイナーは何を言い出すのかというと、「もっとこうした方が魅力的なんじゃないかな?」みたいなことで。そりゃ、普通イラつくだろうと思いますよ(笑)。お前が思っているだけだろうって。一方で、デザイナーはこう思うわけです。「いやー、自然に考えたらそうじゃないの」と。

八反田 出ましたね、「自然に」という、分かりにくいフレーズ(笑)。

矢野 「自然に考える」って、条件が多過ぎるし、複雑なんで、もう「自然に」と言うしかないんですよね。時間とお金があったら、リサーチするって手もありますけど、リサーチって周りの人を納得させるための単なる材料なので、結局は仮説のウラを取るだけの行為だったりもします。さすがに「自然に考えると……」で済むとは思っていないので、ある程度デザイン理論とかで、状態の妥当性を解説しますけど、根底では「自然に……」という意識が強いんじゃないかと。

(2/4に続く)

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