エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

[連載:小松俊明①] ITエンジニア「海外からも欲しい」は11%、さらに増えたら何が変わるのか?

公開

 
キャリアコンサルタント・小松俊明の「最新ニュースから読み解くキャリアの未来」

リクルーターズ株式会社 代表取締役
小松俊明 [@headhunterjp]

住友商事、外資コンサルティング会社を経て独立。エンジニアのキャリア、転職事情に詳しい。『転職の青本』、『役に立つMBA、役に立たないMBA』、『デキる部下は報告しない』ほか著書多数。海外在住12年、国内外で2回の起業を経験した異色の経歴。慶應義塾大学法学部卒業。オールアバウトでは転職のノウハウのガイドを務める。転職活動応援サイトが好評

人材派遣大手のマンパワーグループが、昨年7月に国内約1000社を対象に実施した調査が、2012年1月になって発表された。それによれば、海外からの人材補強が最も必要となる職種は「ITエンジニア」であるという。つまりITエンジニアという職種が今、国内ではもっとも人材不足感が高い職種の一つとなっているわけだが、このニュース、実は注意してみる必要がある。

というのも、確かに需要の高い職種のトップはITエンジニアであるのだが、回答企業全体の11%しか占めていないからだ。他方、実に43%もの企業が、ある別の共通した回答をしている。「海外からの人材は必要ない」という回答だ。ちなみに、海外からの人材が必要な職種の第2位は機械エンジニアだが、こちらもわずか5%の企業からの回答しかない。

出典:企業の外国籍人材の活用に関する調査(マンパワーグループ/2012年1月)※レポートリリースはコチラ

出典:企業の外国籍人材の活用に関する調査(マンパワーグループ/2012年1月)※レポートリリースはコチラ

世界のグローバル企業では、社員のダイバーシティ(人種、年齢、性別などの多様化)が進んでいる。一方、日本企業の場合、女性や外国人を人数合わせで雇用しているような段階にある企業が多く、いわばダイバーシティの入り口で止まってしまっているようだ。「海外からの人材は必要ない」(43%)という調査結果も、ダイバーシティの遅れを表す数字かもしれない。

実際、ダイバーシティの取り組みで日本企業に多いのは、女性が男性と同じように働ける職場のルールをつくるというような、いわば「環境整備」の話が多い。そうではなくて、例えば海外からの人材がチームに入ったことで異質集団となり、それまでの日本人だけの同質集団よりももっとクリエイティブなアイデアが生まれたとしたら、ダイバーシティは運用面でも成功したことになるのではないだろうか。

ダイバーシティは形式的なものではなくて、事業発展のために必要不可欠なアプローチであり、徹底的にパフォーマンス向上にこだわってこそ成功するのである。

国内マーケットは日本人で、という発想はもう古い

さて、話を戻すが、日本の職場には前述の調査の結果には反して、今後は海外からの人材がますます増えていくと筆者は見ている。優秀な人材はアジアをはじめ、世界中に多数いる。日本は不景気ではあるが、その日本を目指す海外の人材は少なくない。

特に、スマートフォンのアプリやゲーム開発など、世界でも注目されている日本市場には、今後ますます世界のITエンジニアが流入してくるに違いない。異文化コミュニケーションや公平な評価制度の問題など、海外の人材を活用するための現場の課題は多いが、日本企業としても企業間競争がさらにグローバルレベルで激化する中で、いつまでもダイバーシティマネジメントに苦手意識を持っているわけにもいかない。

日本では「適材適所」の考え方が根強いが、その適材が日本人であると考えるのはもう古い

日本では「適材適所」の考え方が根強いが、その適材が日本人であると考えるのはもう古い

もちろん「海外からの人材が必要ない」という意見が根強い背景には、「適材適所」という考え方があるのかもしれない。つまり、日本で働く上で最もパフォーマンスを高く出せるのは日本人社員であるという発想である。

身近な例で言えば、例えば女性のアクセサリーを開発するのには女性が適しているということや、重い機器を運ぶ職場には男性が適しているということ、また日本語を扱う出版社でも、日本人社員の方が良いという発想だろうか。ただこれは少し古い発想かもしれない。

現実に目を向けた場合、これまで男性しか見なかった職場に女性が進出しているケースはたくさんある。佐川急便が女性ドライバーの採用を積極的に推進というニュースもあるように、女性の運転手や車掌が目立つようになったが、彼女たちのパフォーマンスは実に高い。

また、日本の介護の現場では、すでに多くの海外からの人材が活躍しているが、日本人よりも海外からの人材の方がずっとパフォーマンスが高いという声が多い。「適材適所」とは聞こえが良いが、古い時代の先入観につながる可能性があるため、注意して使うべき概念なのかもしれない。

「異質な集団」に順応できる人がこれからのハイパフォーマー

海外からの人材が職場に増えてくると、日本人社員の働き方も大きく変わることだろう。これまでの同質な集団で行う仕事が前提ではなくなるからだ。

異質な集団であることが前提となることで、まずはコミュニケーションスタイルに変化が生まれるに違いない。つまり、今まで以上に要点を分かりやすく相手に伝える必要があり、当然ながら阿吽の呼吸のようなものはなくなる。それも寂しいと思う向きもあるかもしれないが、日本人同士であっても、世代間ギャップや異性間ギャップが大きい時代である。この際、英語習得も含め、コミュニケーションの手法については、異質な集団を前提とした再教育が必要となるであろう。

前述の介護関係者に限らず、実はかなり高度な日本語レベル、文化レベルを持った海外の人材が働く職場は、すでに日本には広範囲で存在している。その典型例が外資系企業である。

例えば、わたしが長くお付き合いのある顧客に、日本で長くビジネスをしている外資系の自動車部品メーカーがある。その会社は、日本支社のマネジャーの約半数を外国人が占めている。社長以下、ほとんどの外国人マネジャーたちは、日本で採用され、日本語が堪能で、かつ日本文化への理解も深い。中には日本在住20年という人もいる。その彼らが今、日本ビジネスの展望を世界のほかの拠点に対して説明している。

ダイバーシティマネジメントは、ここが日本だからと言って日本人が中心になってやらなければならないわけでもないのである。「海外からの人材は必要ない」と調査で答えた43%の企業でも、近い日に、ダイバーシティマネジメントを実践する日が近付いているのではないだろうか。

足りないエンジニアは海外からの人材で積極的に補って、企業はますます事業を発展させてほしいものである。日本の早期復興のカギは、海外からの人材と日本人による異質な組み合わせの集団が作り出す「ハイパフォーマンス」にかかっているのだ。

この流れを、日本の若者は「仕事が減るかもしれない」などと悲観することはない。先輩世代とは、迎える世の中も、本人たちの生き方も、まったく様変わりする。「異質な組み合わせ」に順応することさえできれば、むしろ若者のキャリアの未来は前途洋々なのである。