エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

「ツテなし、コネなし、技術なし」の旅する起業家が、グアテマラでオンラインスペイン語学習サイト『スパニッシモ』を作れた理由

公開

 

インターネット環境が整備されたことによって、今や、パソコンが1台あれば、世界中のどこでもWebサービスを作ることができる。と耳にすることはあるが、今年の始めにそれを本当に実践し、注目を集めている旅人たちがいる。

##

スパニッシモ』のサイトで使用される写真も、サイトロゴも、すべて自前で準備しているそうだ

それが、格安でスペイン語学習ができるオンラインWebサービス『スパニッシモ』を作った、有村拓朗氏(スパニッシモCEO)と、吉川恭平氏(同COO)、栗林フリッツ幹雄氏(同CTO)の3人だ。

当時世界一周の旅路にあり、コネもツテも技術力もなかった彼らが、わずか3カ月でゼロからWebサービスを立ち上げられたのはなぜなのか。

その背景を探るため、CEOの有村拓朗氏に話を聞いた。

思い立ったが吉日。始まる3カ月間のハードワーク

「今回一緒に起業した2人とは学生時代からの友人で、社会人になってからも東京でシェアハウスをしていて、3人でよく飲みながら将来の話をしていました。そして、社会人3年目の2011年に、『世の中にインパクトを与えられるような人になりたい』という思いが固まり、まずは見識を広げようと、3人で世界一周の旅をすることになったんです」

そんな風に、旅のきっかけを話す有村氏。『スパニッシモ』の構想が浮かんだのは、その旅の途中に立ち寄ったグアテマラで、スペイン語学校に3カ月ほど通っていたことがきっかけだったという。

現地で起業を目指した彼らだが、グアテマラにはビジネスとして展開するために必要なコネもツテも、システムを開発するための技術力もない。

それでも、彼らはわずか3カ月足らずで『スパニッシモ』をリリースした。もちろん、スピード開発の裏側には並々ならぬ努力があったわけだが、彼らがその3カ月間で何をやったのかを教えてもらった。

【『スパニッシモ』リリースまでの3カ月間で行ったこと】
・市場のリサーチ
(アメリカにおけるスペイン語での広告出稿の割合や、
 中学校~大学の第二言語学習におけるスペイン語選択の割合や推移、
 日本においての市場の有無の調査)
・サービス提供側(グアテマラのスペイン語教師)のニーズ再確認
・提携先の学校選定
・先生の教育研修
・ネットワークインフラの整備(アメリカで調達)
・サービス設計
・既存サービスとの比較検証、値段設定
・Webサイトのデザイン
・要件定義、ワイヤーフレームの作成
・バックエンドのシステム開発者探し、開発
etc.

有村氏はプレサイトリリースまでに行った上記のことを振り返り、「一緒に旅をしていた吉川と2人でほとんどのことをやったが、『マジでやんのか』と思うくらいハードだった(笑)」と話す。

とはいえ、思い立ったが吉日。グアテマラの先生たちの生活を少しでも豊かにしたいという想いを胸に、有村氏たちは寝る間を惜しんでハードワークをこなした。

##

有村氏は、今月再びグアテマラへ旅立つ予定だそうだ

「市場調査や、サービスを提供する側の先生たちのニーズ確認、学校との提携なども、すべて自分たちで行いました。そもそもグアテマラにいるスペイン語の先生たちにとって、このサービスが魅力的じゃなければサービスは意味がないし、先生側にやる気がなかったら元も子もありませんからね。

それでも、ネットでの調査や、現地のスペイン語学校の先生へのヒアリングを通して、このサービスへのニーズと成長性があることが確信できたので、後は作るだけでした」

しかしながら、彼らにはWebサービスのコアとも言えるシステム開発者がいない。起業したメンバーのうち、栗林氏はサイトのフロントエンドを作ることはできるが、システム開発の分野に明るいわけではなかった。

そこで有村氏と吉川氏は、日本にいる友人に「このWebサービスに懸ける想いと構想」を伝えて、サポートしてくれるエンジニアがいないか相談。すると、一人のエンジニアが友人を通して『スパニッシモ』に興味を示してくれたのだ。そのエンジニアとSkypeで話し、サービスに懸ける想いを伝えると、「面白そうじゃん」と意気投合し、開発を担当してくれることになったという。

こうして、『スパニッシモ』のシステム開発は始まった。

有村流リモート開発術は、「Noストレス」がカギ

##

自分たちで作ったというサイトの設計図

開発プロジェクトは、要件定義の設計やワイヤーフレームの構築を有村氏、吉川氏が分担して担当し、日本のエンジニアが開発。完成したシステムの動作確認を二人が行う、といった流れで進んだ。

Skypeやタスク管理ツールの『Pivotal Tracker』などを駆使し、国境を超えて行った開発プロジェクトは、大きなトラブルもなく順調に進んだ。その秘訣は、「コミュニケーションの取り方」にある。

「例えばシステムにトラブルがあった際、どれだけイライラしていてもメールベースで『感情を可能な限り排除』し、事実のみを伝えるようにしていました。また、開発を依頼していたエンジニアにも本業があったので、作業をお願いできるのは基本的に土日だけ。だから、メールの件名に【緊急】と入っている場合だけ無理を言って対応してもらうようにしていました

こうしたエンジニアへの細かい配慮は、非エンジニアとして払うべきエンジニアへの敬意だと、有村氏は話す。

「わたし自身、大学時代にポータルサイトを立ち上げた経験はありますが、開発技術を詳しく知っているわけではありません。エンジニアの気持ちを理解できない分、彼自身を信頼し、システム開発はすべて彼に一任することにしました。ただ、エンジニアに不要なストレスが掛からないように努める一方で、絶対に譲れないポイントとして、プレサイトのリリース時に絶対外せない機能が何かを伝え、それだけは何があっても納期を死守してもらうようにしていましたけどね」

企画者は開発者の技術力を、開発者は企画者の想いをそれぞれ尊重し合えたからこそ、『スパニッシモ』は3カ月という短い期間にもかかわらず無事にリリースできたのかもしれない。

“日本品質”を武器に、世界の『スパニッシモ』へ

##

「どんなサービスも、中途半端な情熱じゃ上手くいかない」と、熱い気持ちを持って話してくれた有村氏(写真右:吉川氏)

『スパニッシモ』は1月21日のサービス開始から、当初の想定の5倍以上で無料会員が増加している。順調なスタートを切ったものの、サービスとしては今も「改善しっぱなし、やることも溜まりっぱなし」(有村氏)だと笑って話す。現在はサービス改善に加え、海外向け『スパニッシモ』のチューニングに忙しい。

「『スパニッシモ』を最初に日本向けWebサービスとして作ったのは、世界的に見ても日本人がサービスの品質を見る目が厳しいと感じたから。そして、日本人が満足するような品質のWebサービスなら、他の国や地域でも満足してもらえるのではないかと感じたからです。

海外向け『スパニッシモ』は年内のリリースに向けて調整しています。そう考えると、これからさらにアクセルを踏んでスピードを上げていかないといけない。彼らとより密にコミュニケーションを取りながら、サービスだけでなく組織としても成熟させていきたいですね」

スパニッシモの旅は、まだ始まったばかりだ。

取材・文・撮影(インタビュー写真のみ)/小禄卓也(編集部)

『スパニッシモ』の今が分かる!事業報告会を開催!

世界一周の旅路で起業を決意した有村氏が、旅を中断してまで作った『スパニッシモ』に懸ける思いとは一体何なのか。そして、『スパニッシモ』はこれからどうなっていくのか…。世界で戦う若干26歳の起業家が胸に抱く衝動と、これからの社会について、一緒に語り合おう!

日時:9月22日(土) 13時~16時 10月開催予定

場所:coming soon…