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[コラム] 「声」で動くミニ四駆の開発者が語る、未来のロボット製作

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タミヤでは、今もなおミニ四駆のグランプリが定期的に開催されている

子どものころ、アニメ『爆走兄弟レツ&ゴー』を見て、ミニ四駆にはまったR25世代のわたしたち。

「ぶっとべぇ~!!」、「いっけぇ~!マグナムサイクロン!!」といった声に呼応するように、 ミニ四駆が縦横無尽に疾走する。

あの感覚に憧れてミニ四駆を始めた人も多いだろう。しかし、第二次ミニ四駆ブームを生んだ1994年の名作は、当時は夢物語でしかなかった。

ところが、だ。たまたまタミヤのホームページを覗いていると、気になる文字が目に飛び込んできた。『次世代ミニ四駆シンポジウム』なるイベントが行われるというのだ。

もしや、「ぶっとべぇ~!!」と叫べば空を飛び、「マグナムサイクロン!! 」と叫べばマシンが勝手に回転してアクロバティックに走るミニ四駆の構想がタミヤさんにあるのだろうか…。

「これは行くしかない!」

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少年時代、ミニ四駆にあこがれ、没頭した26歳の少年は、そんな期待を胸にシンポジウムへ参加した。会場は、新橋にあるタミヤプラモデルファクトリー。サラリーマンになった人たちに子ども心を忘れさせないためなのか、絶好の場所にあるものだ。

飲み屋街から少し外れたところにあるショップは、大人の嗜みを満喫できそうな雰囲気がただよう。店内は、仕事帰りのいかにもなサラリーマンたちが、真剣な眼差しでプラモデルを物色している。そんな大人たちを横目に、2Fにある会場(モデラーズスクエア)へと足を運ぶ。

MCガッツは、予想に反して大人だった

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登場前も後も、終始穏やかに司会を進めるMCガッツ

1部と2部にわかれるシンポジウムのプログラムはこうだ。1部では、東京理科大学川村研究室所属の花田達彦氏とKLab株式会社所属の竹井英行氏による、それぞれの研究・開発プレゼンテーションが行われる。

2部は、上述の2名とMC、解説者を交えた次世代ミニ四駆のディスカッションだ。
ひとつ、シンポジウムが始まる前からずっと気になっていたことがある。それは、タミヤのレーシングスーツを着て頭にバンダナを巻いた、オールドスクールな服装の男性のこと。サイトで見たMCガッツというタミヤのマスコット的なお兄さんだ。

どこからどう見ても、ハイテンションな芸風に見えるMCガッツであったが、いざシンポジウムが始まると、非常に落ち着いた口調で淡々とゲストの方と話し始める。もしかすると、ジェントルマンなのかもしれない。

ゲスト解説者には、無類のミニ四駆好きで有名なギズモードライターの野間氏。今回のパネラーは、東京理科大学川村研究室所属の花田達彦氏と、KLab株式会社の竹井英行氏である。

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自身の研究を発表する花田氏。その姿は、もはや教壇に立つ教師そのものだ

前半の花田氏のプレゼンテーションは、『Wiiリモコンを使用した完成教材の開発及びその効果』。理系離れが進む昨今において、子供たちにモノづくりにもっと興味を持ってもらいたいという想いから、身近なもの(ミニ四駆、Wiiリモコン)を使ってできる実験を開発していた。

理系の子どもを増やすためにミニ四駆を活用するとは…なかなかのアカデミックさに脱帽だ。

そして、後半。最も楽しみにしていた、竹井氏による『Android時代のミニ四駆』のプレゼンテーションが始まる。

ミニ四駆+Android=ペット四駆?

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竹井氏「最も難しかったことは、Androidを組み込んだマイコンのコンパクト化です」

小学生の時はミニ四駆に夢中だったという竹井氏。会社内で昨年ごろから会社内でミニ四駆ブームとなり、人と違う遊び方をしたいという想いから、今回のAndroidミニ四駆の製作に取りかかったのだという。

彼のプレゼンについてはコチラを参照してもらうとして、そのミニ四駆のNext Level感には、ただただ驚かされるばかりだった。

中でも一番しびれたのは、声に反応する機能。ミニ四駆に簡単な制御用CPUとBluetoothモジュールを搭載し、Android携帯から声で遠隔操作ができるようにしたのだ。

「進め」と言えば進み、「止まれ」と言えば止まる。ということは……!!

ミニ四駆の操作も自由自在。アニメ『爆走兄弟レツ&ゴー』の烈と豪のようにミニ四駆と並走しながらコースを回ることも、自分の愛機をペットのように散歩させることもできるではないか。

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「21世紀にもなって、ミニ四駆が進化してないとは…タミヤさんどういうことですか?!」と主張する竹井氏

普段は社内でソーシャルアプリ開発を担当しているという竹井氏。あなたが遊びの延長で作ったものは、あなたの想像以上に素晴らしい発明じゃないですかっ!!

総製作費、約8000円(Bluetooth:7000円、マイコン本体:200円、ミニ四駆:900円)と、大人であれば簡単に支払える金額でできるお手軽さも匠である。

もはや、子供時代に見ていたアニメの世界が現実になる時代がきたのだ。こうなると、妄想はどんどん膨らんでいく。

実写版『爆走兄弟〜』も夢ではない

二人のプレゼンが終わった後、MCガッツ、ギズモード野間氏、花田氏、竹井氏の4名による次世代ミニ四駆についての熱い議論がなされた。

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真剣にミニ四駆について語る4人。いつまでたっても少年の心を忘れないことは大切である

やれジャイロを搭載させマグナムトルネード(空中でマシンを回転させて弾丸のように飛翔させる星馬豪の必殺走法)を完成させるやら、やれダクテッドファンや羽根を付けてミニ四駆に空を飛ばせるやら。

現時点では、竹井氏の製作したAndroidミニ四駆が次世代ミニ四駆開発の先端にいるのは間違いなさそうだ。しかし、上述したようなミニ四駆が発明されるのも、そう遠くないような気がしてならない。

「仕事でも趣味でも、面白そうと思えばどんどんやってみる。そして、それをうまく発信してゆけばどこかで誰かの目に止まり、評価される」と、竹井氏。「今回はたまたまミニ四駆だった」のだという。同氏の目標は、何の役にも立たないけど癒される”ゆるふわ系”ロボの製作だそうだ。

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竹井氏は、「22世紀のミニ四駆は、電子書籍のインターフェースになる!」と、熱く語っていた

彼のように、これは仕事だから、これは遊びだからというわけ隔てをなくしてみると、意外な発明に繋がるのかも知れない。

ミニ四駆。その「子どもが触れて楽しめる最初のメカ(タミヤさん談)」に、大人になって触れてみる時、そこには無限の可能性が広がっている。改めて、エンジニアの持つ技術力を思い知らされたシンポジウムだった。

あいにく、筆者は全く技術力を持ち合わせていないため、Androidミニ四駆を作ることはできなかったが、沸々と湧き上がるモノづくり欲を抑えきれずミニ四駆を購入。その日のうちに、バイソンマグナムを製作してしまった。

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……よくよく考えてみると、アニメを実写化するならCGでも何でも駆使すればいいだけのことではあるが、そんな野暮な話はしないでおこう。

取材・文/小禄卓也(編集部)