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[連載:Data Scope] 「成功するネット起業家は20代」。では「成功する転職者」は?

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成功するネット起業家に関する”神話”としてよく議論に上がるのが、「設立者は若い方が成功するのか?」という話題だ。2011年5月23日、米TechCrunchに掲載された記事は、その問題に対し、一つの答えを出した。それが

"Old people suck at startups"
(年寄りは起業に失敗する)

というもの。



インタビュアーのMichael Arrington氏によるこのセリフは、シリコンバレーに拠点を持つエンジェルファンドSV Angelが、過去12年間に渡り投資してきた500人の創業者から集めたデータをまとめた結果(下のグラフを参照)への感想として述べられた。

SV Angel TC Disrupt Slides v6
※金額は実際の/潜在的なイグジット

グラフから読み取れるのは、イグジット額が$2500万~$5億の企業に関しては、30歳未満と30歳以上の創業者割合がほぼ半々である反面、$5億を超える企業の設立者は、30歳未満が67%を占めるということ。この結果に対し、SV Angelのco-founderであるRon Conway氏は、以下のような意見を述べている。

"I think the entrepreneurs who are a little older
 when they start, are a little more conservative
 about if I can get an exit that's safe,
I'm going to take that, and I think the younger
 entrepreneurs are willing to slow brew their company
 and take more chances."

(年を取ってから起業した人ほど用心深く、なるべく安全な早い段階で
イグジットすることが多い一方、若い起業家は、ゆっくりと会社を成長
させることで、より多くのチャンスを得ようとするのでしょう)

日本で成功する起業家はアメリカに比べ、30代比率が高い

では、日本にも同様の傾向があるのだろうか。Web上を探してみたが、特にネット企業創業者の年齢に関する調査は見当たらない。

そこで、Publickeyの記事「IT系上場企業の平均給与を業種別にみてみた 2010年版」で、ネットベンチャーとしてピックアップされていた上場企業を参考に、19社をピックアップ。それぞれの企業における創業社長の創業時年齢をまとめた。それが下の図だ。

スクリーンショット(2011-06-03 0.47.05).png

スクリーンショット(2011-06-03 0.41.56).png

このデータをもとに、創業者の創業時年齢をグラフ化したのが右図。
┏━━━━━━━━┓
  30歳未満⇒40%
  30歳以上⇒60%
┗━━━━━━━━┛
という結果だった。

さらに、現在の時価総額を見ると、上位三企業は
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
  ①ヤフー(孫 正義・38歳)
    [1,584,749百万円]
  ②楽天(三木谷 浩史・32歳)
    [1,069,523百万円]
  ③ディー・エヌ・エー(南場智子・36歳)
    [459,204百万円]
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
となる。

ヤフー・孫正義氏のように、創業者が現在、会社の経営から離れているケースも多々あり、一概にSV Angelのデータとは比較できないものの、日本の方がアメリカと比べ、創業者が30歳以上の企業の方が、大企業に成長する可能性が高い傾向がある、といえそうだ。

Ron Conway氏の意見に沿えば、日本の起業家の場合、30代以上の起業家の方が、「ゆっくりと会社を成長させることで、より多くのチャンスを得」ることができるのかもしれない。

この結果を、ネット業界で働くエンジニアはどう受け止めれば良いのか。

「30歳前に転職」は本末転倒になりかねない

日本のネットベンチャーは、中途採用でエンジニアを採用するとき、若い人を好む。ハードな職場が多く、体力が必要なこと、若い方がスピードの早いネット業界でキャッチアップしやすいことが主な理由だ。そのため、「年を取ってしまう前に、早く転職しなければ」と、30代になることを機に、突然転職を焦り出すエンジニアは少なくない。

ただ、ネット業界の求人動向に詳しいキャリアアドバイザーは、上記のデータを踏まえ、そんな安易な行動に警鐘を鳴らす。

「焦って転職しようとする人は、若い創業者による勢いのあるベンチャーが話題になっている時期に急増します。でも上の結果を見ると、そんな転職が本末転倒になりかねないことが分かる。若い起業家が立ち上げたベンチャーよりも、30代起業家の会社の方が成長が見込めるんです」

成功する転職者の条件が見えてきた。成功するネット起業家同様、余裕を持って行動することだ。

取材・文・訳/桜井 祐(編集部)