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[対談:ひがやすを×バスキュール号 1/2] 技術屋が今すぐ「企画力」を磨くべき、これだけの理由

公開

 

今年10月某日、編集部宛てに突然届いた一通のメール。

「僕の単独連載、ストップしていましたが、いったんの区切りとなる回を掲載しませんか?」

メールの送り主は、現在、和田卓人氏との対談連載「プログラマー人生を楽しむために知るべき97のこと」に登場しているひがやすを氏。続くメール文面はこうだ。

なぜ『先読みリーダーズ』の第5回目を

企画しなかったかというと、

良いネタが思いつかなかったからですが、

最後にふさわしいネタを思いつきました。

僕の単独連載シリーズの根底にあるテーマは、

「これからのエンジニアは、技術力だけでなく、

企画力も身に付けて自分でサービスを企画し、作らなければいけない」

というものです。ちょうど自分と同じ考えを持つ、

バスキュール号さんという会社があります。

そこは、デジタルコミュニケーションを中核とした

企業のプロモーションの企画や

クリエイティブに強い会社なんですが、

わたしとバスキュール号さんは

違う立場から同じ目的を目指している様子を伝えることで、

「自分でサービスを企画して作る」というテーマが

より浮かび上がってくるかなと思います。

よろしくおねがいします。

バスキュール号といえば、Flashを中心としたデジタルコミュニケーションプランニング、およびクリエイティブに強い株式会社バスキュールが、2011年5月にミクシィと作った合弁会社だ。

『mixi』で年末の恒例イベントになりつつある『mixiXmas』や、ソーシャルグラフをうまく活用して画期的なユーザーエンゲージメントを実現したソーシャルバナープロジェクト『NIKEiD FRIEND STUDIO』、ソーシャルラジオの成功記事などを、各種メディアで目にした読者も多いに違いない。

そんなエッジの立ったクリエイティブ集団であるバスキュール号が、SIerで働くひが氏と、どんな接点があるのか。なぜ、ジャンルの異なる2者が「同じ目的を目指している」のか。そこにただならぬものを感じ、編集部はさっそく指定の場所に伺うことにした。

サービスの「気持ち良さ」を作るのが技術屋の役割に

―― まずは、ひがさんとバスキュール号さんのご関係から聞かせてください。何か一緒のプロジェクトでもやっていらっしゃるのですか?

ひが 実はビジネス上のつながりは一切ありません。田中さんと古川さんとは、あるコミュニティで出会いました。わたしが連載「先読みリーダーズ」で訴え続けてきた「企画ができない技術屋はもう生き残れない」という主張の明確な理由を伝える上で、この2人と直球で語り合いたかったんです。

―― なぜバスキュール号さんとの対談形式がベストだと思われたのか、理由をもう少し詳しく教えてください。

ひが わたしがプログラマーの立場から企画を作る側に近づいていったのとは対照的に、バスキュールやバスキュール号の皆さんは、面白いマーケティングを展開する立場から技術サイドに近づいてきた人たちだから。エンジニアには今後、技術力と企画力の両方が必要だという理由を語るには、もってこいの存在だと思ったんです。

田中 今回、ひがさんに対談のお声がけをいただいて、僕たちもすごくうれしかったです。バスキュール号が目指しているのは、ソーシャルグラフを活用した広告プラットフォーム上で、ユーザーや広告主、双方が幸せになる「装置」を作ること。バスキュールの時から、お客さまとなる広告主から依頼されるリクエストを、自分たちが主体となって企画し、デザイン、開発、提供するのを得意としてきた実績を、さらに活かしていきたいと考えています。
 

―― バスキュール号さんは最近エンジニア採用を積極的に行っているそうですね。その理由は?

田中 ソーシャルグラフを活用したサービスを提供する上で必要になるのは、ユーザーの増減、急激なアクセスにも耐え得る安定したバックエンドの構築です。バスキュール号がソーシャルメディアを活用したサービスを提供する会社としてスタートした今、やはり開発スピードや企画への理解度を考えたら、社内に「企画もできるエンジニア」が必須なんです。
 

これからのITには「気持ち良さを生むUI/UXが必要」と力説するひが氏に、強く同意する2人。その理由は...

これからのITには「気持ち良さを生むUI/UXが不可欠」と力説するひが氏に、強く同意する2人。その理由は…

ひが サービスの面白さを本気で追求しようと思えば、自然とそうなりますよね。これは僕の持論ですが、これからネットにつながるメインデバイスがどんどんスマホにシフトしていくと、今まで以上にUIやUX(ユーザーエクスペリエンス)が重要になってくると思うんです。

田中 そのココロは?

ひが 実際に使ってみて、気持ち良いレスポンスがないと、どんなに企画が面白くってもユーザーは盛り上がらないから。スマホになって、画面に触るようになったから、アプリがより身近なんですよ。だから、触って気持ち良くなければすぐ離れてしまう。そして、気持ち良いUIやUXを実現するためには、サーバ側からも素早いレスポンスが必要になってきます。

田中 ホントにそうですよね。今は似たようなアプリがそれこそいくつも生まれていく時代ですが、ユーザーに選ばれるアプリ、使われるサービスは、総じてUIやUXが優れています。そして、ひがさんがおっしゃる通り、サーバ側からのアプローチも必要になります。だから、ウチに古川が入社してくれることが決まった時は、本当にうれしかったです。
 

古川 あ、そうだったんですか(笑)。まあ、僕に期待されていることはだいたい分かっていましたけど。もともと僕は、前職のビープラウドでもバスキュールの仕事を担当していたので、「自分にできることがきっとあるはず」だと確信して転職したわけですから。

「それ無理」で終わるな。セカンドチョイスを提案できる人になれ

ひが バスキュールとの最初の仕事は、確か男性用フレグランスボディスプレー『AXE』のプロモーションだって言ってたよね? 新宿アルタ前にお風呂場を作って、水着のお姉さんたちがお風呂に入りながら尻文字でクイズを出すっていう(笑)。

古川 そうです。最初にこの企画を聞いた時は、「僕はなんてところに来ちゃったんだ」と思いましたが(苦笑)。このイベントはTwitter連動の企画だったので、僕の役割はネット上でやりとりされるコミュニケーションに対応して、サーバサイドの開発と運用をしていくことでした。

「技術の細かな部分まで分かっている人が『企画』を見直すことで、面白さが際立ってくる」と語る田中氏

「技術の細かな部分まで分かっている人が『企画』を見直すことで、面白さが際立ってくる」と語る田中氏

田中 例えばこのイベントであれば、投稿されるメッセージをリアルタイムに取得し、集計して、それをライブ配信する必要がありました。そこで古川から、システム負荷のかかるメッセージの送受信についてはTwitterのシステムに担ってもらおうという提案がありました。

ひが 重要なのは、サーバ側を作る人も、言われたことをただやるってことじゃなくて、何をやりたいかを理解した上で技術的に可能な代替案を出したところですね。ほかにも何か、やってみて面白かった事例ってありますか?

古川 ソーシャルラジオの事例でしょうか? 今年の夏にTOKYO FMさんと一緒に行った案件なのですが、簡単に説明すると、『mixi』上でラジオをマイミクと一緒に視聴できる装置を作って、ラジオDJが紹介したエピソードに興味を持ったリスナーが、あらかじめ用意した特設サイトにある「胸キュンボタン」を押していくんです。
 

田中 ラジオで展開される話に、今、何人くらいが「胸キュンしたか」が瞬時に分かれば、リスナーと番組が一体感を持ちながら楽しめる。そういう企画でした。
 

古川 その時に問題だったのが、サーバサイドの設計をどうやるかで。「胸キュンボタン」のクリック数を正確な数字で出そうとすると、相当大がかりな準備が必要だったし、もし10万人が一度にクリックしたらサーバのレスポンスがすごく遅くなる。

田中 でも、さっきひがさんもおっしゃったように、ボタンをクリックしてすぐにレスポンスがないと一体感は生まれない。じゃあどうする? となった時に僕らが出した結論は、「クリック数のカウントを正確に行うよりも、この企画で一番大切なのは『盛り上がってる感』を表現することだろう」と。なので、数値を正確に出す以上に、盛り上がり感を出せるような演出とサーバサイドの設計にフォーカスしました。

ひが 企画と技術の両方が分かっていないと面白いサービスは作れないという、すごく良い事例ですね。プログラミングに携わる人間たちって、無理なものは「ムリ!」と言える。でも、それで企画が立ち行かなくなったら、元も子もないわけで。大切なのは、セカンドチョイスとして「ここを工夫すれば、サービスとしては成立しますよね」と提案できるかどうか。僕が伝えたいのも、まさにそこなんですよ。

(対談 2/2に続く)

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