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[レポ] シリコンバレーのCEOたちが明かす「日本の技術屋が世界で通用する」理由 -Innovation Weekend Grand Finale 2011

公開

 

東京・六本木ヒルズの会場に駆けつけた、300名もの聴衆。熱心に聞き入る内容は、シリコンバレーを中心に活躍する起業家や、彼らを応援するエンジェル投資家の体験談だ。

Innovation Weekend Grand Finale 2011のホームページ

Innovation Weekend Grand Finale 2011』のホームページ

これは、12月15日に開催された『Innovation Weekend Grand Finale 2011』の模様。ベンチャー企業の発掘・育成などを手掛けるサンブリッジが、ベンチャーナウやネットエイジ西川潔氏らと立ち上げた、日本発のグローバルベンチャー育成イベント『Innovation Weekend』の集大成となる会だ。

日本人によるイノベーション「Jannovation(ジャノベーション)」を応援すべく、毎月のピッチコンテストなどを開催してきた同イベントは、これまで数多くのスタートアップ企業に事業発表の場を提供してきた。

当日は、過去のピッチコンテストで優勝・準優勝した企業に、一般公募で加わった企業も加えた計17社によるプレゼンテーションも行われ、世界進出を目指す事業プランが披露された(※結果はページ末尾にて)。

『エンジニアtype』が注目したのは、イベント前半のキーノートとトークセッション。その中には、日本人エンジニアが世界で勝負していくためのヒントが多数ちりばめられていた。

「アイデアに価値はない」。その真意は?

シリコンバレーで活動する日本人起業家たちや投資家たちが壇上で語ったのは、イベントのテーマでもある「Go Global!」について。特に、シリコンバレーを基点とする米国市場で戦っていくために、必要な視点、マインド、ノウハウとはどのようなものなのかについて、実体験を踏まえながらアドバイスがなされた。

印象的だったのは、シリコンバレーで活動するエンジェル投資家で、株式会社はてなの非常勤取締役でもあるリチャード・チェン氏の言葉だ。

「アイデアに価値はない」

その真意は、「今の時代、アイデアマン、アイデアウーマンだけで起業しても、もう戦えない時代になっている」というもの。競争が激しいシリコンバレーでは、際立ったサービスのアイデアを思いついたとしても、「その時点でもうほかの人も同じことを考えていると思った方がいい」という。

プロダクトありきでモノを語れない人は、勝負できない――これはITの世界では万国共通の理だ。「コードが書けるファウンダーこそ最強」という同氏の言葉からも、思い立ったらまず作る、という手の早さが必要不可欠だとうかがえる。

「起業家に必要なのは『すべてが成功するわけじゃない』と認識すること」と話すダンカン・ローガン氏

「起業家に必要なのは『すべてが成功するわけじゃない』と認識すること」と話すダンカン・ローガン氏

また、サンフランシスコでスタートアッパーに向けたコワーキングスペース提供やアクセラレーターとして名を知られるロケットスペース社のCEO、ダンカン・ローガン氏は、日本の起業家たちに向けた「成功のための10か条」をこのように挙げた(※下のスライド写真参照)。

中でも重要だったのは、「製品を作る前に需要を見つけろ。わたしの場合は、ダミー広告を出して市場の反応を見たりもした」、「サービスを作ったら、毎週機能をオフにしてみよう。そこでユーザーからクレームが多数来たら『価値あるもの』だし、ノイズ程度のクレームなら『不要なもの』として大胆に削れ」など。

数多くのスタートアッパーを見てきたローガン氏が考える「成功のための10か条」。一つ目に挙げているのが「チームの大切さ」なのが印象的

数多くのスタートアッパーを見てきたローガン氏が考える「成功のための10か条」

これらのアドバイスの裏側には、スタートアッパーは伸びそうな事業と機能にフォーカスすることが何より肝心で、ニッチ市場で大ファンを作っていくことが、成功の糸口になるという示唆が込められている。

日本人エンジニアの「マルチさ」は世界的に見ても貴重

このローガン氏の助言に符合するように、創業直後から日米両市場での事業展開に挑戦して脚光を集めているWondershake Inc.鈴木仁士氏も、渡米後に知った気付きをこう話す。

自身の名刺の肩書きには、「Founder, President, Dreamer」と書いている鈴木仁士氏

自身の名刺の肩書きには、「Founder, President, Dreamer」と書いている鈴木仁士氏

「例えばアメリカの大学生はアプリの使い方がすごくシンプルで、使うものを厳選しているし、使ってみて面白くなかったものはすぐに端末から削除してしまう。だから、今は『Wondershake』もアメリカ展開に向けて改善中で、ユーザーテストの結果を見ながら慎重にやろうと思っている」

愛されるサービスにするため、どこで一点突破するかという問いは、ゼロから世界に打って出る際の重要なポイントになりそうだ。

さて、これらのアドバイスを踏まえた上で、技術屋としてグローバルに活躍するために押さえておくべき事項は何なのか。語学であったり、鈴木氏の言うような各国のユーザー特性、投資を含めた各種サポートを得るためのネットワーク&コネクション構築などなど、挙げていけばキリがない。

しかし、これらの「前提条件」は、動きながら身に付けていくことが可能だ、と登壇した全員が異口同音に証言する。そして、弱みを嘆いて動かないよりも、日本人が持つ強みを信じて挑戦する方が、未来は明るいものになるはずだ。

「米起業時、日本から人を連れていくなら、英語力より新規事業開発や技術面の実力で選ぶべき」と話す西條晋一氏

「米起業時、日本から人を連れていくなら、英語力より新規事業開発や技術面の実力で選ぶべき」と話す西條晋一氏

この「強み」について、CyberAgent America Inc.のPresident & CEO西條晋一氏はこう私見を述べる。

「日本人エンジニアが持つ『担当範囲の幅広さ』は貴重。アメリカはスペシャリティ重視の風土があるので、『ここはやるけど、ここはやらない』というエンジニアが非常に多い。それに比べると機動的で、マルチに動けるエンジニアが多いという点で、日本人エンジニアには世界で勝負できる強みが備わっている」

アイデアをすばやく形にし、フォーカスしたサービスにブラッシュアップしていくのが世界での戦い方であるならば、フロントエンドもバックエンドも多少なりとも理解しているケースが多い日本人エンジニアは、すでに大きなアドバンテージを持っていることになる。

「Jannovation(ジャノベーション)」を起こす素地は、すでに整っている。

取材・文・写真/伊藤健吾(編集部)

≪Innovation Weekend Grand Finale 2011 結果≫

■優勝:

株式会社グラモ 代表取締役 後藤 功氏
http://glamo.co.jp/

■準優勝:

エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原 豊氏
https://everconnect.me/

エウレカコンピューター株式会社 代表取締役社長 山下寿也氏
http://www.eurekacomputer.jp/

 

■NTT-IP&OpenLab賞:

株式会社リンドック 代表取締役 町野明徳氏
http://lindoc.jp/

■サイバーエージェント・ベンチャーズ賞:

ミライアプリ株式会社 代表取締役 渡嘉敷 守氏
http://miraiapuri.co.jp/

 

■VOYAGE VENTURES賞:

エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原 豊氏
https://everconnect.me/

 

■JVR(Japan Venture Research)賞:

株式会社co-meeting 代表取締役CEO 木村篤彦氏
http://about.co-meeting.com/

 

■シルクロードテクノロジー賞:

株式会社テレファーム 代表取締役 遠藤 忍氏
http://www.telefarm.net/