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[連載:企業に直撃!] 新生エニグモ躍進の秘密は、「やんちゃ」な開発ポリシーにあった

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株式会社エニグモ  サービスエンジニアリング本部
部長  川嶋一矢氏

世界65カ国、約1万8000人もの海外在住バイヤーと、国内の消費者をつなぐファッション通販サイト『BUYMA(バイマ)』。  国内では手に入りにくい、約1500もの海外ファンションブランドのアイテムが気軽に入手できるサービスが受け、2011年4月現在で約70万人もの会員を擁する人気サイトに成長した。 

運営するのはエニグモというITベンチャー。『BUYMA』以外にも口コミプロモーションの『プレスブログ』や、消費者参加型CM制作の『filmo(フィルモ)』など、一風変わったソーシャル系Webサービスを数々手がけてきた。  これまでリリースしたサービスの目新しさや、ユニークなビジネスモデルによってメディアに取り上げられる機会も多い同社。実は、経営理念『ENIGMO7』もユニークなことで知られている。

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2つめの「仕事に美学を!」は、こだわり派の多い同社エンジニアにとって、欠かせない要素なのだと川嶋氏は言う

上のリンク先を見ての通り、「やんちゃであれ!」、「仕事に美学を!」、「リアルを追え!」など、よくあるカッチカチな社是とは一風変わったキーワードがズラリと並ぶ。この突き抜け感、まさにやんちゃだ。

この『ENIGMO7』、創業から7年を迎えた2011年2月に全面改定されたばかり。いわば”新生エニグモ”の象徴である。それまでの経営理念はというと、「楽しく働き、楽しく生きる」、「互いを尊重する」、「世界初に挑戦する」etc……いわゆるフツーの社是といえる。

ではなぜ、企業にとっての「憲法」ともいうべき経営理念を、わざわざ変える必要があったのか? そこには、経営陣の「自分の限界を破ってもらいたい」という思いがあったという。

「予想外の行動力」が、ブレークスルーを生み出す

「創業時は4名だった社員も現在では40人。ここまで人数が増えてくると、どうしても創業当時のカルチャーは薄まってしまいます。主力サービスの『BUYMA』が数年前に黒字化を果たした時、社内に一瞬ですが”これで安泰”という空気が漂いました。でも本当は、まだまだやるべきことがあるし、できることもたくさんある。そうした創業時のマインドを再確認するため、改訂することにしたんです」

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「一番いけないことは、請け負いマインドが根付いてしまうことです」

そう真相を話すのは、サービスエンジニアリング本部の川嶋一矢氏。日本発のサービスで世界に打って出るのを創業時からの目標としてきた同社にとって、オリジナルなアイデアやフットワークの軽さはサービス企画の源泉。だから、現状に安住することは死活問題になりかねなかったのだ。

ブレークスルーを生み出すには、予定調和とは無縁の予想外の行動力が必要。自分に限界をつくらず、アイデアをどんどん形にしてほしい。”やんちゃ”というのは、そんな想いが言葉になったもの。特に、エンジニアには型にはまって欲しくないのだという。

経営理念を刷新後、さっそく新しい動きが出てきた。部署をまたいでチームを組み、さまざまなWebサービスを研究したりすることが目に見えて増えたのだ。普通なら新しいことをするとき、上長の許可やリソースの調整をあらかじめ申請するのが一般的だが、同社では基本的に不要。経営理念を刷新してから、各部署の自主性がより高まっているそうだ。

大切なのは、「自分の将来」を熱く語れる情熱を持ち続けること

 「わたしたち自身、もっと挑戦しなければという思いが強くなりましたね。だから、つい先日も京都で合宿を開催した時、現場レベルで新サービスを研究・開発するチーム、その名も”EG Lab”を立ち上げました。このチームは、通常業務だけにとどまらず、いろんなサービスをどんどん形にしようという姿勢を具現化したもの。この時も、エンジニア2人とわたしで『招待制SNS』と『買い物』、そして『男女の出会い』(笑)をテーマにしたちょっとおちゃめなWebサービスを作ったら面白そうだと、1週間で形にしたんです」

試作したサービスを身近な人たちに使ってもらい、意見をもらうことで、その反応から大切なエッセンスを抜き出して本業にもフィードバックしていく。そこには、エンジニアたるもの何はさておきモノを作り、その反響を体感しながら次の開発に活かしてほしいという川嶋氏の思いが凝縮されている。

そしてこれは、「やんちゃ」でありながら、「結果にこだわる」という経営理念にも見事に合致している。

開発の多くの場面でエンジニアの自主性を大事にする環境を整えているエニグモ。開発に使用する言語の選択に関しても、例外ではない。  「例えば、今までJavaで作っていたのに『どうしてもRubyが使いたい』というエンジニアがいたら、『ログのフレームワークはある?』、『障害検知はどうする?』、『パフォーマンス遅いけど大丈夫?』とか、基本的なことは確認した上で合議にかけ、賛成が多数ならゴーサインを出します。過去のやり方に固執せず、開発に関してオープンであることも、エニグモの特徴ですね」

頭ごなしにやり方を強制することや、アイデアを重箱の隅をつつくようなアラ探しでつぶすことはしない。やってダメならやり方を変えればイイ。失敗を恐れて何もできなくなるより、多少のリスクはあってもチャレンジする方が、良いモノを生む可能性があると考えるからだ。

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「オフで出会った人たち全てが仕事に繋がる。型にはまらず、積極的に”外”の世界に触れて欲しいですね」

「TwitterだってFacebookだって、ユーザーに認められるまでに何年もかかりました。あらかじめビジネスとしての体裁が整ってから事業化したわけではありません。『BUYMA』のFacebookファンページにしたって、現場のエンジニアが率先して作り、トライ&エラーを繰り返していまの良い形になっているんですから。やりたいことは山ほどあります。ウチはトップ自らが”やんちゃ”する会社ですから、エンジニアにも安心してどんどん”やんちゃ”に開発してもらいたいですね(笑)」

先日、エンジニア同士で「自分が将来どうなりたいのか」を熱く語る場を設けたという。そんな、青臭いことを恥ずかしげもなくやってのけるエニグモ。”やんちゃ”であるということは、エンジニアたちの内に秘めた情熱の火を絶やさないことなのかもしれない。

取材・文/武田敏則 撮影/小林 正(人物のみ)