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あなたは誰の笑顔と感動を見たいか ~受託とサービスはどちらが楽しい?~【連載:えふしん②】

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モバツイえふしんのWebサービスサバイバル術

マインドスコープ株式会社 代表取締役社長
藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立。代表取締役社長に就任

こんにちは。タイトルに書いた通り、Webエンジニアにとって、サービスか受託のどっちが楽しいか? と言う話を書こうと思ってキーボードを叩き始めたものの、具体的な要素を並べて比較してもあまり楽しくないなぁと思いまして、どう書こうか悩んでいる、えふしんです。

今回は、もうちょっとプリミティブな話から入ってみたいと思います。

「受託 or サービス」という、Webエンジニアにとって普遍的なテーマ。はたして、本当に優劣を付けるべきことなのだろうかと、えふしん氏は語る(by hang_in_there)

From hang_in_there

「受託 or サービス、どちらが楽しい?」という問題は、Webエンジニアにとって普遍的なテーマになりつつある

もう何年も前から、とあるサイトに通っています。そこでは学生の悩みに大人が回答する質問掲示板がありまして、荒れることなく、非常に暖かいやりとりが安定的に続いています。

中学生や高校生、受験生や大学生に至るまで、将来の職業の悩みや、学科、学校選びについての悩みが質問されています。

可能性が無限にある、彼らの純粋な質問には、たまに鋭いことが書いてあり、先日見たとある質問でこんな話がありました。

ある学生が、自分が将来やりたいことが分かりません。しかし、自分がやりたい事の要素として、

・人と接する仕事をしたい
・人の笑顔を見る仕事をしたい

ということを書いていました。

この2つは労働そのものと、労働の価値そのものを表しているのではないですか。そういう意味では、あらゆる職業で、この2つの要素は満たすことができます。

人と接する仕事と聞くと、接客業や営業というのは簡単に考えつくと思いますが、ソフトウエア産業に従事するわれわれは、人と人との関係性(マネジメント)が一番苦労することを知っているので、実はプログラマーやSEにおいても「人と接する仕事」という感覚を持っています。

また、顧客やユーザーとの関係性においても、例えば受託開発のビジネスであれば、頼ってくださった担当者さんの笑顔を見たい、というケースもあれば、ネットサービスやアプリのようなビジネスにおいては、直接顔は見えないけど利用者が笑顔になってくれたら良いなと思って作っているわけです。

相談者の悩みの回答は解決していないのですが(笑)、大人であるわたしの方が、何かすごく新鮮な気付きをもらったような気がします。

犬のフンを取る仕事

この記事を、ご飯を食べながら読まれていたら申し訳ないのですが、通勤時に、西麻布という高級住宅地の路上で、セレブの家庭所有であろう犬のフンを踏んでしまいまして、朝から大変悲しい思いをしておりました。

靴の裏の表面に付いていたブツは、路上で排除してきたのですが、いざ会社の自分の席に着いてみると、ぷーんと匂いがしてくるのです。

タチの悪いことに、路上で、あわてて踏みにじって取ろうとしたものだから、靴のラインの隙間に高い密度できっちり挟まってしまいまして、ちょっとやそっとでは取れません。

最終的に、コンビニの箸に付いているつまようじを使って、地道に靴のミゾをほじくり返して取っていくことにしました。

新入社員のころには、製造業の会社で機械の組み立てや板金などのモノづくりをしていたわたしは、こういうタスクは嫌いではありませんで、こういう時の心構えとして、

・いかに効率的に取るかを考えながら
・しかし、急がば回れ

ということを常に考えています。適当に取ろうと思うと、結局のところ自分の不幸に跳ね返ってくるので、急ごうと思えばこそ、丁寧に取っていくべきなのです。

開発者的な言葉で言うと、

「銀の弾丸はないので、如何に地道にやることを効率よく楽しむか」

ということでしょう。

こういう地道な作業をしている時には、もしこの仕事でお金がもらえるなら、そういう仕事もアリなのではないか、と思ったりもします。

もしビジネスとして成立するなら、それは、人に喜ばれるタスクなのか? ということ、そして重要なのが実現した「成果の品質」と「実現のスピード」ということになるでしょう。自分がプロでなければ、品質が悪くなってしまったり、スピードが遅くて期待通りにできなかったりすると、当然良い取引とは言えません。

なお、他人に認めてもらえる、つまりお金を払っていただける仕事の仕組みを「ビジネスモデル」と言います。

ビジネス面での受託とWebサービスの違い

この文章の論点は、しばしばWebサービスのスタープレーヤーが、「受託で食いつなぐ」といった表現で、受託業務が下に見えるかのような書き込みを見ることがあります。真に受けている人も少なくないと思うため、それぞれの仕事の価値を適切に判断するにはどうしたら良いかと思って書いております。

なぜそうなるかというと、受託とWebサービスは、ビジネスモデルが違うからでしょう。

受託開発も、サービス開発も、(by yyq123)

受託開発とサービス開発はそもそもビジネスモデルが違うため、クライアントに何を提供するのかも変わってくる

受託は「技術を売る仕事」と言えるでしょう。お金をいただくのは成果物に対する技術力の提供です。「人月の商売」と言いますが、その成果物のビジネス面の責任は負いませんが、その分、収益も得られません。

その代わり、たくさんのお客さんの案件をこなすことができますし、その都度、新しいプロセスやプロダクトを試すチャンスがあります。

人件費率が高い中で、いかにしっかり利益を出していくかというコンサルティング型モデルで、評価指標(ストック)は顧客との信頼で、縁の下の力持ちです。

Webサービスは、文字通り「サービスを提供する仕事」です。そのサービスが生み出す収益は自社が恩恵を受けられます。

将来の収益の期待に対して投資を受けることができる仕事です。エンジニアからすると、自社で運営するサービスの範囲でしか技術にかかわれないですが、サービスの成長度に応じてかかわれる仕事の範囲も変わってきます。

受託ビジネスは、長期安定的に利益を出すマネジメントが求められるわけですが、Webサービスを始めるベンチャーは、そもそもコストを自分たちにかけていませんから、利益管理の部分はあまり問題になりません。また、本人たちがやるべきことを止めてやっている仕事という感は否めないため、「とりあえず」という表現が出るのだと思います。

今後は、より社会にインターネットが入って行くことで、受託においても、継続的な改善をしながらレベニューシェアする信頼できるパートナーのWebビジネスにかかわったり、逆に、自社サービスをOEMでカスタマイズ提供していく業務も増えていくでしょう。

インターネットビジネスがインターネットだけで完結する時代は終わりを迎え、スマートフォンやタブレットを媒介することにより、実生活とネットが結び付いていくことは明白です。さまざまなノウハウや関係性を持った会社が、連続的に形を変えていくことでしょう。

その変化の中で、生き残るだけの柔軟性や好奇心は持つべきだと思いますが、あらゆることに可能性がある今、目の前のトレンドに流されることなく、自分が提供できる笑顔の量を着実に増やしていくにはどうしたら良いかを考える時期なのかもしれませんね。