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[連載:品田哲④] 特許取得から始める、転活のススメ

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テクニカライザー・品田 哲のエンジニア観察日誌
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株式会社フロンテッジ  先端コミュニケーション・ラボ  ディレクター
品田 哲

技術力と先見性を武器に、異業界をまたに掛けて活躍する”テクニカライザー”。大学卒業後、ソニーに入社し、一貫してカーエレクトロニクス分野の設計開発に携わる。2001年には、ソニーとトヨタがコラボレーションしたコンセプトカー、Podの共同製作を担当。2007 年より、ソニーと電通の連結子会社である広告代理店・フロンテッジにて、現職

転職しようと思い立ち、職歴書を書いたり、面接を受けたりする中で、大事になってくるのが「過去の実績」です。

ではエンジニアの「実績」とは何でしょう? 例えば、エンジニアが働いている会社の多くは、社内に「改善提案制度」があるかと思います。わたしの経験したSONYの生産現場にも、同様の制度がありました。今やねじ締め作業に欠かすことのできない「ねじっこ」などは、提案制度によって生まれた機器だと聞いています。

そんな会社への提案実績は、もちろん実績評価の上でメリットとなります。カルロス・ゴーンさんの著書を読んでみても、彼が高く評価されていたミシュラン時代、主に提案活動を通し、上へ、上へとのし上がっていったことがよく分かりますね。

ただ、ここでの実績は、あくまでも社内でのみ通用するもの。社外に自分の価値をアピールしないといけない、転職活動では使えません。

特許取得は小遣い稼ぎにだってなる

提案活動の延長線上にあり、社外へのアピールにも役立つもの、それが特許活動だとわたしは考えています。

確かに、提案と比べてかなり面倒くさい手続きが必要になりますが、「考えついたことを対外的に発表する」という点では同じ。しかも、提案活動とは比べものにならないほどの、メリットがあります。ちょっと挙げてみましょう。

【メリット1】 特許制度なるものの理解が深まる

【メリット2】 物事の考え方、道筋のつけ方が学習できる

【メリット3】 国による考え方の違いを知ることができる

【メリット4】 出願後の拒絶査定などを受け、世界規模でベンチマークを取れる

【メリット5】 報奨が出る

などですね。

【メリット1】 特許制度なるものの理解が深まる

特許を良く知ること。これは、転職に際し有利な技能となります。特許を取得したことで、エンジニアから特許出願のための部署に異動した人を何人も知っていますし、仮に転職に不利な年齢であっても、特許制度について知っていることは、(特に製造業などにおいて)自分の価値を引き上げてくれます。

【メリット2~4】 世の中を会社という枠から離れて見ることができる

メリット2~4は、通常の設計業務ではあまり接する機会のないことですね。

特許取得の過程で、会社を俯瞰的に眺められるので、自分の職場が最先端ではないことが、まる分かりになってしまったり、逆に自分の出願した特許が、ほとんど特許の出ていない分野であることが分かり、自分が最先端だったことが分かったりします。現実には、出願されていても、それが表に出てこない期間があるため、慢心は禁物ですが…。

【メリット5】 報奨が出る

そして5番目のメリット、「報奨」です。みなさん考えてみてください。就業時間中に、自分のスキルアップだとか、金銭的利益を得る活動をしていても許されることが、特許活動以外にあるでしょうか? しかも、それが大した発明であった場合、表彰などもされるのですよ!

わたしは、他の先人に比べて大した発明はしておりませんが、それでも表彰の末席を汚した経験があります。会社によっては違うでしょうが、表彰には、もちろん他社をけん制する役に立ったなどの実質金銭的成果だけでなく、出願表彰なるものがあるはずです。出願さえされれば、これは特許庁のホームページなどからでも検索できますし海外出願されれば日本以外でも名前が出てきます

これは、社外の人にもわかりやすい実績だと思いませんか?

最近多い、「進歩性がない」との拒絶査定

では、簡単にプロセスを紹介しましょう。下が、取得までの流れを簡単に図解化したものです

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発案して、それが特許庁のホームページなどで検索した結果、類似特許が見当たらない場合、出願の可能性が生まれます(もちろん、出願書類を書いた後に、プロが再度検索するのが普通ですが)。

出願書類を書き、出願にむけて動き出すと、弁理士との打ち合わせというプロセスになります。ここで自分の権利化したいポイントを伝えることが重要となります。それをもとに弁理士が書類を作成し、再度打ち合わせの上、出願になります。出願の後も、拒絶査定などを受けることが多いですが、その場合は補足します。

最近多いのが、進歩性がないとされ、「特許出願前にその発明の属する通常の知識を有する者が、前号各号(上記の新規性のない発明)に掲げる発明(考案)に基づいて(きわめて)容易に発明(考案)をすることができたとき(特許法29条2項、実用新案法3条2項)」に当たると判断されてしまう、拒絶査定です。

そんな事態に直面し、万一、一人で出すのが難しいと思ったら、仲間と連名にすると良いです。自分にはなかったアイデアをもらえるでしょうし、そこで協同した人たちとは、たとえ転職しても付き合える仲間になりますよ、きっと。

【追伸】

5月13日(2011年)まで東京ビッグサイトで行われている展示会の模様をお伝えします。スマホを仕事に活用するためのソリューションが目白押しですが、わたしの注目したアプリのみ、動画で取り上げてみました。

撮影/小林 正(人物のみ)