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[コラム] 注目のワークスタイル「コワーキング」の仕掛け人が語る、オープンイノベーションのコツ【インタビュー動画付き】

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東京初のコワーキング・スペースとして知られる世田谷区経堂の『PAX Coworking』ホームページ

東京初のコワーキング・スペースとして知られる世田谷区経堂の『PAX Coworking』ホームページ

小田急線・経堂駅から続く、小さな商店街を歩くこと約7、8分。たどり着いたビルの3Fに、最近話題のコワーキング・スペースがあった。『PAX Coworking』(以下、PAX)という、日本で2番目、東京では2010年8月、初めて誕生したコワーキング・スペースだ。

「コワーキング・スペース」を説明すると、フリーランスや起業前後のアントレプレナーなどが集うオフィス空間となる。しかし、「個」を重視した新たな働き方としてノマドワークが注目を集める一方で、コワーキングもにわかに脚光を浴び出した理由は、この表層的な説明では語り尽くせない”事象面での魅力”があるからだ。

『エンジニアtype』がPAXに訪れた際も、だいたい6~8人が座れそうな長机に、WebアプリのUI/UXデザイナーやベテランWebデザイナー、独立したてのIT起業家などが並んで仕事をしていた。驚いたのは、普通なら「取材される側」であるはずの彼らが、こちらにどんどん話しかけてくれたこと。

『エンジニアtype』が取材に訪れた際に開かれたソーシャルランチ「経堂ランチ、今日どう?」の一幕

『エンジニアtype』が取材に訪れた際に開かれたソーシャルランチ「経堂ランチ、今日どう?」の一幕

皆が仕事の手をちょっと止め、自らの仕事について自己紹介をしながら、また仕事に戻って。この繰り返しの中で、全員がコワーキングの魅力などもちょっとずつ披露してくれる。このトークの間とユルい連帯感、すごく心地良い。

極めつけは、来て間もない門外漢を「一緒にお昼ご飯でも」と誘ってくれて、いきなりの会食へ。聞けば、これは「経堂ランチ、今日どう?」という洒落のきいた(!?)ソーシャルランチで、PAXで働く人以外も巻き込んでランチに行くのが通例なのだという。

ボソボソ話が小さなコラボを生む、リアルコミュニティの魅力

「そもそもコワーキング・スペースというのは、『場所貸し』じゃなくて『コミュニティ』なんですよ。業種や考え方の違う事業者同士が集まって、お互い刺激を与えながらコラボレーションしていく場。だから、ここに来たら、誰もが『人と話す』って不文律があるんです」

PAX Coworkingを運営する佐谷恭氏

PAX Coworkingを運営する佐谷恭氏。その経歴は異色

そう話すのは、PAXを運営している、株式会社旅と平和・代表取締役の佐谷恭氏。日本で初めてコワーキング体験イベント『Jelly』を開催し、コワーキングの普及に一役買っている仕掛け人だ。

PAX設立前は富士通やライブドアといった企業で働き、独立後は世界初のパクチー料理専門店で「お客さん同士が交流する飲食店」としても知られる『paxi house tokyo(パクチーハウス東京)』を立ち上げた異色の経歴の持ち主。そんな佐谷氏にPAX設立の理由を聞くと、さらりと一言。

「答えは単純で、仕事を面白くしたいからです」

佐谷氏に言わせると、最近流行しているノマドワークも、オフィスシェアリングも、実際に体験してみると「何か物足りなかった」そう。SNSを駆使してネット上だけで人とつながっていても、シェアオフィスに行って空間だけを共有しても、何かを生み出しそうな感触を得られなかったという。

「それよりも、普段は会わないような誰かと1時間一緒に過ごした方が、いろんな刺激や発見があって面白いですよね? 飲み会だって、社内の人だけで飲むと上司の愚痴などになりがちなのに、そこに社外の友だちを呼んだりすると、皆が目をキラキラさせて前向きな話をし出すわけです。そこからヒントを得て、PAXは異なるスペシャリティを持つ人同士の触れ合いを重視したオープンコミュニティにしました。そうすると、不思議なことに、ボソボソ話から生まれる小さなコラボが、それこそ5分10分置きに起きるんです」

最近も、PAX流のコワーキングが、新しいプロダクトを生む一助になった。FacebookグループやTwitterのハッシュタグといった各種SNSのグループコミュニケーションを一元管理・閲覧できる無料コミュニケーションダッシュボード『Crowy』だ。

見やすいインターフェースのソーシャルコミュニケーションダッシュボード『Crowy』。その誕生秘話が面白い

見やすいインターフェースのソーシャルコミュニケーションダッシュボード『Crowy』。その誕生秘話が面白い

誕生の経緯はこうだ。あるコワーカー(コワーキング・スペース利用者のこと)が自作していた『Crowy』について話をしていた際、まったく別の仕事をしていたデザイナーが興味を持ち、「面白そうだから」とその場でデザインを試作。それが実際に採用されたという。

「PAXは『空間と成果をシェアするアントレプレナーのためのオフィス』と銘打っていますし、こういうアイデアシェアで成果が生まれていく過程こそが、コワーキングの面白さじゃないですかね。例えるなら、壁に一人でポスターを張るよりも、誰かが後ろで見てくれた方がまっすぐ張れる、みたいな感じ。地味だけど、ああだこうだ言い合いながらやった方が、作業が楽しいしクリエイティブだって意味で(笑)」

コワーキングがイノベーションを生む3つの理由とは?

こういったコラボの形は、企業の組織内でも推奨されているものである。なのになぜ、多くの企業では良質なコラボが起きにくく、コワーキングだと「面白い」取り組みが自然発生的に生まれるのか。その理由を佐谷氏に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「オープンイノベーションが生まれる条件を僕なりに挙げると、リラックスしていないとダメ、隠しているとダメ、対等じゃなきゃダメ、となります。つまり、それぞれ異なる仕事を持っている人同士が、損得勘定抜きで『楽しそう』、『面白そう』という発見をシェアしていくから、新しいものが生まれていくんじゃないですかね」

「業務」や「上下関係」に縛られた状態では、前向きなアイデアシェアも起きにくい、ということか。楽しく、オープンで、対等な立ち位置で共働できるPAXのようなコワーキング・スペースが今よりも増えていけば、テクノロジー分野はもちろん、さまざまなビジネスで、クリエイティビティあふれるイノベーションが生まれていくかもしれない。

「僕は自分の肩書きを『チーフ・カタリスト』と命名しているのですが、これは『触媒』という意味の英単語catalystから取ったものなんです。だから、今後はPAXをコワーキングの代表的なスペースに成長させて、そこで得たノウハウもどんどん外に公開していきたいですね。僕自身が触媒になって、世の中にたくさんのコワーカーが生まれていったら幸いと思っています」

将来の夢は、いろんな地域に住むアントレプレナーたちが、自宅から5分で通えるくらいの位置にコワーキング・スペースを持てるようになることだそう。そうすればもっと、世の中がイノベーションであふれるはずだから――。PAXは個人事業主の定期利用者だけでなく、企業人でも一回1000円で利用可能というだけに、佐谷氏の野望が現実になる日が来るのが待ち遠しい。

※PAX Coworkingのサービスラインアップと料金体系はコチラ
※日本のコワーキング情報が集まるFacebookグループ『コワーキングJP』はコチラ

取材・文/伊藤健吾(編集部)

≪コワーキングの仕掛け人・佐谷恭氏インタビュー動画≫

軽妙な語り口とユニークな考え方でコワーキングの魅力やPAX設立の思い、オープンイノベーションについて語る佐谷氏の生コメントをぜひ!
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