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「プログラム=プレゼンツール」。”自分の表現法”と出会おう【ちきりんの”社会派”で行こう】

公開

 

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー”ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く”ちきりんワールド”をご堪能ください(※本記事は、『Chikirinの日記』に掲載されたエントリーを再構成したコラムです)。

■ 記事提供:『ビジネスメディア誠
プロフィール

おちゃらけ社会派ブロガー
ちきりんさん @InsideCHIKIRIN

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し”働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から”おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。ブログは『Chikirinの日記

2年前に行った「日本一のニート」を標榜するphaさんとの対談からは、いろんな”気付き”がありました。
家の方向が同じだったので、対談の後、phaさんと一緒に地下鉄に乗ったのですが、たまたま最初に来たのが各駅止まりでした。それに乗った後、「もしかして急行のほうがよかったですか?」と聞いたら、phaさんの答えは「いや、いいんです。急行は混むし」というもの。それを聞いて、「あ~、違う世界だなあ」って思いました。
ちきりんが今いる世界には、急行に乗るか各駅停車に乗るかという命題に対して、パラメーターは時間、つまり「どちらが早く着くか」しかありません。判断基準はそれだけです。
でも、「早く着く」などということはphaさんにとってはあまり意味がないのでしょう。大事なのは「混まないこと」なわけです。
中学受験などで「A駅に急行が止まっていて、その時速は40キロ、10キロ離れてるB駅に各駅停車が止まっていて……どちらが先にD駅に着くでしょう?」みたいな問題がありますよね。ああいう問題を解く時にも、「各停電車は空いているが、急行電車は混んでいる」という要素を考慮することは求められていません。つまり私たちは知らず知らずのうちに、社会の提示する判断基準を刷り込まれているのです。
しかし大事なのは、自分の優先パラメーターが何なのか(=自分にとっての判断基準って何?)を見つけることです。他人の基準で生きると、「早く着くけど混んでいる電車」に乗って生きなければなりません。それは、人によってはつらいことなのです。
もう1つ興味深かったのは、phaさんが「プログラミングを知ったことで、自分に適した表現方法に出会えた」と話されたことです。
その数日前、ほかの人から「紙に書いた提案書とかもう意味がないよね。プログラム作って画面上で動かして”こういう感じのビジネスをやりましょう”って言ったらすぐ済む話なのに」と言われて、その時は「そうか、プログラムってパワポに取って代わるんだ」と思いました。
つまり、「プログラム=プレゼンツール」なんだと思ったのです。でも、さらに一歩進めて、「プログラムって表現方法なんだ」と、この日(ようやく)理解できました。

自分を表現するツールはこんなにある

人間はみんな、自分の中に”何か”を持っています。それは、何らかの表現方法を通して具現化しないと他人には伝わりません。伝わらないと理解してもらえなし、それどころか、表現方法というフィルターを通さないと、自分自身でさえそれが何なのか意識できなかったりするのです。
誰かに自分のことを伝えたい、誰かに理解してほしい、自分自身、今、自分の中にあるものを理解したい、というのは、誰もが持つ自然な衝動です。
だから、その自分の中の何かをうまく、「ああ、これなんだよ!」という感じで表現しうる方法やツールを手に入れられたら、みんなとても幸せなはず。
自分を表現するツールとしては例えば……
話し言葉(表情とか含む)
書き言葉(散文)
短歌・俳句、詩、コピーのような言葉、韻文
演芸(落語、漫才、ダジャレ?)
写真

デザイン、意匠
楽器
メロディ、曲、リズム

体(踊り、劇、体操的なもの、いろいろ)
映像
料理
プログラム
創造物(建造物、モノ、現代アートみたいなもの含む)
働き方(?)
ビジネス
……など、けっこういろいろあるんです。
考えてみるとこれらの大半は学校で、しかも義務教育のかなり早い段階でひと通り体験することです。作文書いて、絵を描いて、韻文も作ってみたり、歌も歌って(なぜか)笛を吹いて、運動会では踊らされ、文化祭では演技もします。
そうか、あれって「あなたにとっての表現方法を見つけなさい」っていう教育だったんだな、と思いました。何か1つくらい自分にぴったりな「自分を表現する方法が見つかればいいよね」という、そういう教育課程なんだと気が付いたのです。
プログラミングは今の小学校のカリキュラムにはなさそうですが、それが個人の表現方法になり得るのなら、ぜひとも早めに子どもたちにも体験させた方がいいですよね。

書き言葉が得意でなくても

ちきりんは「テキスト、書き言葉」という比較的一般的な表現方法で自分を表すことが得意でした。小さいころから作文はよく入選していたし、文章を書くことが大好きで、日記をずっと書いてきました。テキストという一般的な表現ツールが自分に合っていたわたしのような子どもはとてもラッキーです。
でも、そうでない子もたくさんいます。自分に合った表現方法が見つからなくて、周りに自分のことが理解してもらえなかったり、自分自身が自分をうまく扱えなかったりするとけっこうつらいです。
分かってもらうことをあきらめたり、拒絶したり、絶望したりするかもしれない。時には暴力や、”閉じる”という行動によって、それを表現することになるかもしれません。
当然だけど、表現方法の幅よりも、人間の心の中にあるものは圧倒的に多彩で多様です。だから、それを100%表現するのは誰にとっても不可能でしょう。だけれども、できる限りそれらを具現化することにより、個々人の疎外感という不幸を減じる大きな力にはなるはずです。
だからそのツールとなりうるものは、できるだけ多く、早い時期に体験できるよう、小学校などで触れる機会があればいいなと思います。それとその際、「表現方法を探す」ことを明示的な目的として認識させれば、より生産的とも思います。
言葉で表現できない感情を抱える(認識する)というのは、「誰も俺を分かってくれない!」わけでも、「コミニケーション能力が低い」わけでもなく、自分に最適な表現ツールをまだ手に入れてない(出会っていない)だけだと教えるのです。そして、その手段を手に入れるために、いろいろ試してみればいいのよと、言ってあげるのです。
今もしあなたが、「誰にも伝えられない、分かってもらえないことがある」と感じているとしたら、それはもしかしたら「それを伝える”自分の表現法”とまだ出会っていないから」なのかもしれません。
そんじゃーね。
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