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iPhone 9には手足が付く!? 話題のヒューマノイド『ロビ』設計者・高橋智隆氏が語る、家電ネットワークの近未来

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「マジでかわいい」、「すぐ完成品が欲しい」、「何か未来を感じる」などなど。

2月19日、デアゴスティーニ・ジャパンから創刊された『週刊ロビ』が、巷で話題を呼んでいる。世界的なロボットクリエイターとして知られる高橋智隆氏が、このシリーズのために設計・デザインしたヒューマノイド・ロボット『Robi(ロビ)』を、全70号で完成させるというものだ(完成は1年7カ月後。詳細はコチラ)。

創刊の約1カ月前からYouTube上でロビの機能を紹介する動画が配信され、創刊前後にはテレビCMも始まったため、ネット上をはじめ大きな話題を集めている。

ロビは、これまで高橋氏が手掛けてきたヒューマノイド同様、大きな目とかわいらしい動作が大きな特徴だ。約200の言葉を認識して、人が話しかけることで身ぶり手ぶりを交えた受け答えをする。

さらにロビがすごいのは、人との会話を通じてTVのON・OFFをやってくれるなど、将来の家電ネットワークとのハブ役をイメージさせること。高橋氏が今回の開発でこだわったのも、この「ロボットが人の生活の中で新しい存在価値を持つ」という点だった。

“一緒に暮らす家族”として認識されるようなインターフェースが大事

「過去のロボット開発の現場では、重い荷物を持ってもらうことや人命救助など、物理的な作業をしてもらうための機能や性能が追求されてきました。でも、僕の考えるロボットの存在価値は違うところにある。ロビを通じて、ロボットを『大きくて強い作業者』から『小さくて賢い情報端末』に変えるために、特にコミュニケーションデザインにこだわって開発しました」

高橋氏がこう言うまでもなく、これまでさまざまなロボットが人間とコミュニケーションを行う目的で開発されてきた。ただ、そのほとんどが、現状では一般人の日常生活を変えるほど普及していないのも事実だ。

その理由を、高橋氏は「値段はもちろん、感情移入できるインターフェースになっていなかったから」と分析する。

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人が感情移入できるフォルムかどうか。この点に、高橋氏は長年こだわってきた

「例えば最近のスマートフォンには、iPhoneの『Siri』やドコモの『しゃべってコンシェル』のような音声認識機能が搭載されています。でも、あれを街中や日常生活で頻繁に使っている人はあまり見かけません。一方、人間は金魚やカブトムシ、クマのぬいぐるみにさえ『おはよう』とか『元気?』と話しかけてしまう。それらには感情移入できるけど、四角いスマートフォンには難しい、それが要因だと考えています」

この観点でロビのフォルムや機能を見ると、高橋氏の言う「小さくて賢い情報端末」の意味もイメージできるようになる。

身長が約34cmと小型なのは、「人間心理として、小さいモノは大きなモノに比べて期待値が低く、ちょっとした動作や機能も肯定的にとらえてもらえる」から。話しかけると必ず何かしらのリアクションをしてくれるのも、「コミュニケーションは、内容よりタイミングや間(ま)が大事だから」。

こうした工夫が随所に反映されているロビは、人間の“新しい家族”として暮らすことで次世代型コミュニケーションを提案するプロトタイプのようなものなのだ。

ヒューマノイドは人間に最も身近なM2Mインターフェースを提供する

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高橋氏が話しかけると、ただ「反応」するだけでなくしっかり「対話」しようとするロビ。その姿は感動的ですらある

他方、人の一般生活を変えるほど普及しているか? という点では、家電ネットワークのハブとなるデバイスもロボットと似たような状況にある。

かつてはユビキタス、そしてM2M(Machine to Machine)と呼ばれるキーワードのもと、さまざまな先端デバイスが開発・提案されてきたが、どれもキヤズムを超えることなく討ち死にしてきた。高橋氏はこの家電インターフェースとしての可能性を、ヒューマノイド・ロボットこそが担うべきだと主張する。

ロビを紹介する動画の中でも、シャープのロボット掃除機『COCOROBO(ココロボ)』と会話をしながら掃除をするシーンや、人が「テレビつけて」と話しかけると「オッケー!」と言いながらスイッチを入れるシーンが印象的に描かれている。

「ヒューマノイド・ロボットなら、持ち主と雑談をしていく中で、個人情報や行動履歴、持ち主の志向などを収集していき、次に必要なものを類推して提案することもできるわけです。グーグルが欲しがっているような、日常生活の良質なログが取れるのです。勝手な想像ですが、iPhoneが9になるくらいには手足が付いたロボット型になっているのではないかと信じています(笑)」

『ルンバ』は最初、おもちゃだった-イノベーションの浸透プロセスとは?

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ヒューマノイドという「まだ世に普及していないプロダクト」を普及させる方法は常に考えている

こうした考え方で作られたロビが、「新しいロボットのあり方」として社会に浸透していくには、プロダクトそのもののクオリティや機能以外の要因も考えなければならない。イノベーティブな製品が、世の中に受け入れられるまでのプロセスについてだ。

それについて、高橋氏はこう述べる。

「僕は、テクノロジーが普及していく方法は3通りあると思っています。1つは、スティーブ・ジョブズのようなカリスマによるプレゼン。2つ目は、高値だけどアーリーアダプターに評価される技術や製品を世に送り出す方法。最後の3つ目は、おもちゃのような『なんちゃって商品』として世に送り出す作戦です」

このうち高橋氏は、自身が世に送り出すロビを“なんちゃって商品”の一つと位置付ける。

「今でこそお掃除ロボットとして普及している『ルンバ』ですが、あれは最初、アメリカではクリスマスにプレゼントするおもちゃとして、今より安価に発売されました。それが『意外に使える』という評判が広まり、本格的な家電ロボットとして再開発され、普及していったのです。だから、ロビをデアゴスティーニで販売していくスタイルは、『ルンバ』的なアプローチとして良いのではないかと思っています」

PR用の動画配信やテレビCMに対する反響はよく、高橋氏は10万人のユーザーがロビを作り始めたら大きなインパクトになると期待を寄せる。

「アレクサンダー・グラハム・ベルが初めて電話を発明した時、周囲には『会って話せば済む』、『手紙があるのに電話なんて』とさんざん批判されたそうです。でも、結果は世界中に広まる世紀の発明品となった。同じように、ロビが、これからのロボットと人とがどんなふうに空間を変えていくのかすごく楽しみです」

人間と機械との新しい関係を提案するロビ。1年半後、その可能性を多くの人たちが手にすることになりそうだ。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴