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schooがリリースしたスマホアプリ『スクー生放送』は、日本のEdTechを新境地に導くか

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インターネット生放送による実名制リアルタイム動画学習サービスの『schoo WEB-campus』が、2014年1月9日にiOSアプリ『スクー生放送』をリリースした。

iOSアプリ『スクー生放送』の画面イメージ

今までPC Webを前提に配信してきた『schoo WEB-campus』の生放送授業を、ユーザーがスマートフォンでも“受講”できるように最適化。USTREAMでの生放送授業の視聴や、SNS経由で講師に質問できるインタラクティブ性はそのままに、PC版よりもシンプルな操作性を実現している。

アプリの画面下は講師への質問や授業の感想が乗るタイムラインが表示される(画面イメージ参照)が、横にスライドするだけで講義資料が載るSlideshareへ切り替えることも可能。片手で操作するスマホならではのインターフェースを追求した結果だ。

「特にヘビーユーザーの方々からは、schooの授業をどこにいても視聴できるようにしてほしいというご要望をたくさんいただいていた」と話すのは、同サービスを運営するスクー代表取締役社長の森健志郎氏。iOSアプリのリリースはこの要望に応えるのが目的の一つだったと言うが、今回のスマートフォン対応は、それ以上のインパクトを業界にもたらす可能性を秘めている。

【スマホ×教育】のデファクトになるようなUI/UXを模索

(写真左から)スクーのデザイナー八木悠輔氏と、代表取締役社長の森健志郎氏

『schoo WEB-campus』がサービスを開始した2011年を前後して、日本はもちろん世界中で、さまざまなジャンルのEdTechベンチャーが台頭した。しかし、現時点でスマートフォンでの最適化を高次元で成功しているサービスはまだまだ少ない。

日本では3人に1人がスマートフォンを持つようになっている今、【スマホ×教育】の分野でデファクトになるような受講スタイルを確立できれば、火が付き始めているEdTechブームを一気に次のステップへ進めることも可能だろう。

スクーの面々は、『スクー生放送』のリリースでこの領域に足を踏み入れようとしている。

「スクーの事業ビジョンは『世の中から卒業をなくす』というもの。これを実現するためにも、裾野が広がるスマホやタブレットユーザーへのアプローチは欠かせません。スマホ向け動画の市場も伸びている中、『スクー生放送』の開発は必然の流れでした」(森氏)

この必然を、schooのユーザー=受講生にとっても必要不可欠なものにするためには、冒頭で記したような「受講しやすいインターフェース設計」のほか、より大きな意味でのユーザー体験もスマホ用に最適化させることが大事だ。

この点は、開発陣が最も苦心した点でもある。

左下にあるチャット投稿&質問投稿ボタンと、右下の「なるほど」ボタンの大きさが微妙に違うのにも、理由があるという

デザインを担当した八木悠輔氏によると、アプリ画面は「現在の完成形に至るまでに7パターンくらい試作した」そうだ。

ただ単に授業を観るだけでなく、schooの特徴の一つであるユーザー参加型の受講スタイルを、PCよりも小さいスマホ画面上でも踏襲できるように細部までこだわった。

「自分自身の学び体験を表現する『なるほど』ボタンの大きさなどにもこだわりました。授業中に行うタイムラインへのチャット投稿・質問投稿と、よりライトな意思表示方法である『なるほど』ボタンは、スマートフォンというデバイスの特徴を考えると後者の方が使う頻度が高まるはず。なので、あえて『なるほど』ボタンのサイズをほかの機能より大きく表示しています」(八木氏)

また、Ust生放送で起きがちなディレイ問題(通信回線などの問題で映像や音声が遅れて届く問題)についても、地道にテストを繰り返しながらビットレートを調整し、「3G回線でも最大で20秒程度の誤差に抑えることができた」(森氏)という。

インフラ&コンテンツ強化で、「ながら勉強プラットフォーム」を作る

こうしたさまざまな配慮の末に生み出したいのは、常に持ち歩くスマートデバイスを入口とした「ながら勉強文化」だ。

「例えば電車で移動する短い時間でも、ポッドキャストのように授業を聴講できるようになれば、ユーザーの学習への敷居は下がるのではないかと。そのためには、PCを前にして1~2時間ガッツリ学習するのではなく、もっと気軽に視聴できる環境が必要だと考えています」(森氏)

今回のiOSアプリは、この青写真を具現化する第一歩となるもので、2014年中にはUstを介さずに生放送授業を配信する独自システムも開発していくという。それによってディレイ問題を解消しつつ、「例えば過去の授業をテーマごとにつなげてループ再生しながら24時間学習ができる状態にする」(森氏)ことが狙いだ。

今まで、schooのユーザー層は20代~30代のIT系従事者が約7割程度だったが、一方で主婦の方や学生など、幅広い年齢層のヘビーユーザーも出始めているという。この「あらゆる職業、年代の人たち」が、ネット経由で気軽に学習を継続できるようなプラットフォームを作り出したいと森氏は意気込む。

「そのために、企業や団体とのコラボレーションで、学習コンテンツの質と量を両方高めていくような取り組みも始めています(一例は以下)。スマホアプリ経由での受講生の反応も見ながら、新しいEdTechの可能性を追求していきたいですね」(森氏)

《直近で予定している生放送授業の一例》

■2014年1月9日
ヤフーの副社長、川邊健太郎先生が、生放送であなたの質問にお答えします
http://schoo.jp/class/320

■2014年1月23日
朝日新聞社はどうすればこれからも稼げるか?―2020年のメディアを公開ディスカッション
http://schoo.jp/class/323

■2014年2月14日
「落語」超入門―松竹芸能の噺家に、落語の楽しみ方を教えてもらおう
http://schoo.jp/class/355

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)