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[特集:SEに明日はあるか? 3/3] 技術者だからこそ非IT産業で働く、逆転の発想もアリ

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―― 小さな組織ならではのやり方ですね。

最首 確かにそうかもしれませんが、信じ合える人間がコアにいないと、組織は大きく育たないという面もあるのではないでしょうか。大きな組織を作っていく過程の難しさっていうのは、何ごとにも機械的になってしまうことだと思うんです。

成功している会社を見て、「あの会社のやり方をマネしよう」と思ったところで、うまくいくはずがありません。だから、信頼や共感を大事にして、できるだけ機械的にしないようにしています。

神尾 最首さんのおっしゃる通りで、従業員側にとってもハートの部分は非常に大事だと思います。自分の仕事は何なのか、そして自分と周辺の人たちの仕事はどうかかわるのかを知るには、観察力や共感力、コミュニケーション力を常に働かせておかなければできません。

もしそれがなければ、単純に割り当てられた作業をこなしていく機械のような存在になってしまいます。自分の仕事が全体の中で貢献していることを確信できる基盤があるからこそ、技術や能力が高まってくるんだと思いますね。

最首 やっぱり人間同士のかかわりって、スゴく大きいと思うんですよ。そこに能力の問題とか、成長のメカニズムが入ってくるものだと思う。

キャプ

「トヨタに根付く『カイゼン』の重要性は、IT業界にも当てはめて考えることができる」(神尾氏)

神尾 そういう意味では、トヨタがずっとやってきている現場主義や「カイゼン」の取り組みもまさしくその通りで、ラインでタイヤの組み付けをしている人も、全体に対して関与している意識を持ちながら働いています。それは海外の工場でも同じです。

トヨタは、従業員に当事者意識を持たせることをスゴく重視している会社です。誰もが前向きに仕事に取り組んでいるからこそ、有機的なネットワークが機能している。だから、仕事が「作業」にならないですよ。全体を見通しているっていう意識は、とても大切なんです。

最首 漫然と仕事をしていたり、心が折れてしまったりすると、当事者意識は薄れてしまいますよね。「まあいいか」みたいな。

漆原 きれい事ばかり言っていた経営者が、ある日「売り上げが大事。ほかは関係ない」などと言い出せば、それまで良い仕事をしていた人の心も折れるかもしれない。何を大事だと考えているか、つまり定めたビジョンからブレないことが大事なんです。

働く側からすれば、ただ給料がほしいからやっているのであれば、ほかの仕事をした方が良いかもしれないわけで、自分にとっての仕事の意味を改めて意識することが大事でしょう。

この業界で「少しでも良い仕事がしたい」、「お客さまに喜んでもらいたい」、「世の中に貢献したい」と思うなら、多少つらくてもやってやろうという気持ちが持てるかどうか。それさえあれば、あとは環境を用意する会社側の話のような気がしています。

「技術がある」のはそれだけで価値。非ITへ行くのも手

―― では、もし自分の価値をどうやって発揮したらいいか分からない技術者がいるとしたら、どんなアドバイスをなさいますか?

キャプ

「くも膜下出血で死にそうになった時、有限な人生を有効に生きたいと思った」(最首氏)

最首 うーん……。「そのまま人生を終えていいの?」って言うと思いますね。僕は13年前にくも膜下で倒れて死にそうになった経験があるんですが、その時、「人間って簡単に死ぬんだな」と感じました。

いつ自分の人生が終わるかなんて誰にも分かりませんし、無限の人生なんてあり得ない。生まれ出て、やがて就職することになった時、ハッキリしたものではないにしろ、何かしら「志」と呼べるものを持っていたんじゃないかと思うんですよ。それを思い出してほしいんです。

人生は有限です。今も確実に時間を消費してる。未来の自分に対して責任があるのは、今の自分。未来の自分をハッピーにしたいなら、今自分が何をすべきかを真剣に考えることなんじゃないかと思いますね。

漆原 どうしようか悩んでいる人が多いのは理解できます。でも裏を返せば、小資本でも少人数でも面白いビジネスを大きくできたり、世の中にインパクトを与えられる仕事がしやすい時代になりつつあるということ。

やらされ仕事ばかり強いられて、勉強する時間もないっていう人も多いでしょうが、一方でIT業界では今お話したような大きな変化も起きている。やっぱり自分を変えないと、何も変わらないんじゃないでしょうか。

だからこそ「とりあえずやってみれば?」って思うんです。特に今は、個人の力量によって若くても大きな仕事ができるようになってきた。勉強するための環境も、昔より充実しているはずです。業界のあり方も変わりつつあるし、状況を前向きにとらえてほしいですね。

ルビー

いち早くエンタープライズ向けにRubyを活用した最首氏。2007年には「Rubyビジネス・コモンズ」を設立した

最首 ある程度経験を積んでいるのであれば、今何をすべきかってかって本当は分かっているはずです。なのに、何となく「ぐずぐず」しちゃってるだけって人も多いんじゃないかと思います。

「このままじゃダメなのは分かってるんですけどねー」みたいなことを言う人っているじゃないですか。そういう人には、「まずはチャレンジしてみろ」って言うしかないですね。

神尾 客観的な立場から意見を述べさせてもらえれば、今、IT産業にかかわっているのはラッキーなことだと思います。この世界で経験を積んだ人は、もはや伸びる見込みのない業界にいる人に比べ、いくらでも選択肢はあるからです

これからは、古い会社が事業構造やビジネス構造をどんどん変えていくフェーズです。もしかしたら、IT産業でスーパースターになれなくても、ほかの産業で重宝がられるかもしれません。 IT抜きではあらゆる産業が回らなくなっていることで、働く場所は広がっていますから、今のタイミングはチャンスが多いと思いますね。

漆原
 確かにそうだと思います。だからこそ、最首さんもおっしゃったように、チャレンジすることが大事だと思うんです。チャレンジする人は、少しぐらいコケてもすぐ立ち直りますから。

新しい技術も、時代とともにどんどんコモディティ化していきます。だから過去に依存しようとしないで、どんどん新しい技術を吸収し、チャレンジすることが求められる。守りに回ると一瞬で終わってしまう現実もあります。でも、攻めてる人にとっては「これほど面白いホワイトスペースはない」という感じなのではないでしょうか。

神尾 それに、IT業界のホワイトスペースは、まだまだ広がる余地がありますものね。

漆原 まだ始まったばかりなんですよ。きっと。

35歳はいわば社会人の”高校生”。キャリアが広がるのはこれから

―― IT業界では、昔から「SE35歳定年説」という定説がささやかれています。それをくつがえすために必要な心構え、行動とは?

キャプ

「技術者には、35歳以上のベテランにしか出せない”味”があるんです」(漆原氏)

漆原 うちでは以前、「35歳”以上”の技術者募集」をやっていたことがあるんです。35歳定年説なんてあり得ないし、どちらかといえばこれから脂が乗るタイミングだろうと。

IT業界以外の知識があったり、技術についても根本的なところから理解していたりというのは、経験を積んでいるからこそ出る”味”なんですよ。

一方で、35歳にもなれば、技術だけでなく、ビジネスのイノベーションにも関心が向かってほしい年代でもあります。これからますますチャレンジする人が報われる時代になる。活躍の場は広がるはずです。だから「流されるな」、「小さくまとまるな」って言いたいですね。

最首 組織論で有名なピーター・センゲ教授じゃないですが、「出現する未来から学ぶ」ってことだと思うんですよ。

これからは、ますます過去の延長線上には未来がない時代になっていく。だから絶望するんじゃなくて、考える手段はある。今起きていることを冷静に考えれば、途中のプロセスは分からなくても、ある程度将来の予測ができると思うんです。

その未来に起きそうなことを一生懸命感に考え、逆算し、直近の今を考える。そうした思考で自分の軸足を見直すのが、ちょうど35歳くらいなんだと思います。

さっきも言いましたけど、答えは自分の中にあるはずです。何をすべきか、何をしなくちゃいけないのかは、35歳にもなれば自分で分かってるはず。その言葉にきちんと耳を傾けて行動してほしいですね。

神尾
 わたしは、35歳って年齢は社会人にとっての高校生みたいな時期だと思ってるんです。

小学生は教えてもらうばっかりで自分ではアクションが起こせない。中学はなんとなく分かってきたけどまだ力不足。高校生くらいになるとそれなりに足場もできて、いろんな可能性にチャレンジできる素地ができていきている。35歳は、この”高校生”の時期に能力と周辺環境が似ている。

年代的にも選択肢が増える時期でしょうから、好奇心を持って目の前にあるドアをどんどん開いた方が良いのではないでしょうか。20代から30代前半に積んだ経験が表面化してくるタイミングですし、次のステップにチャレンジするタイミングでもある。

先ほど、漆原さんがおっしゃったように、「技術だけでなく、ビジネスの視点でイノベーションを語れ」というのも大賛成です。先々の方向性とか上位レイヤーから物事を見るビジョンを身に付けるのは大変ですが、まだまだ可能性もあるしチャレンジできる年齢。年齢を理由にチャレンジしないのはもったいないですよ。

漆原 高校生、まさに青春ですね。そう言われると、チャレンジする気力が湧いてくるから不思議ですね(笑)。

一同 笑

―― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/柴田ひろあき

 

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