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「起業する気はなかった」28歳・サラリーマンエンジニアがITスタートアップ『SENSEI NOTE』のCTOにジョインするまで

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2012年11月16日(金)から18日(日)にかけて開催された、“起業チャレンジ”イベントの『Startup Weekend Tokyo』。この3日間で、日本の教育業界に革新をもたらす可能性を秘めたサービスが生まれた。

その名は『SENSEI NOTE』。

公式リリースまであと約1カ月となった『SENSEI NOTE』。水面下で、日々改善を続けているところだという

同サービスは、教師がレジュメ(授業内容)やノウハウを共有するためのコミュニティサービスで、これまで学びたくても学べなかった「ほかの先生の授業スタイル」や教師ノウハウをシェアするものだ。

全国の先生同士をつなぎ、高め合える教師版ソーシャルメディアとして、各方面から注目を集めている。

サービスが生まれた背景はこちらの記事に譲るとして、本記事では『SENSEI NOTE』の開発を一手に引き受ける若手エンジニアに焦点を当ててみたい。

『SENSEI NOTE』は現在、サービスの正式リリースに向けて開発に本腰を入れている。スタートアップメンバーも、マーケティング、ファイナンス、ソーシャルメディア戦略、UI/UX、アクセス解析、SEOなどそれぞれのスペシャリストが有志でジョインするなど、チームビルディングは順調に進んでいる。

そんな中、『Startup Weekend Tokyo』の当時から開発者としてジョインしてきた末永昌也氏は、自身の去就について悩んでいたという。

彼がその悩みを払拭し、スタートアップのCTOになるまでの転機を聞いた。

転機その1:夢中になれるサービスに出会う

「Startup Weekend Tokyoで優勝して、Global Startup Battleで112チーム中8位になって、こんだけ注目されて……。正直言って、こんな事態になるとは予想もしていませんでした」

『Startup Weekend Tokyo』参加当時を思い出すと、末永氏の顔から自然と笑みがこぼれてきた

各種ITイベントには、人脈づくりや経験を積むためにときどき顔を出していたという末永氏。「起業したい」という思いはまったく持ってなかったという。

当時の末永氏は、転職サイト『Green』などを運営する会社で現場エンジニアとして働いていた。そんな彼に、最初の転機が訪れる。『SENSEI NOTE』の発起人、浅谷治希氏との出会いだ。

「ほかの人の考えたサービスが、単発のアプリや遊び系のアプリだったのに対して、浅谷のアイデアだけが実社会に対する課題意識を持ち、解決したいという思いで企画されていたのがすごく魅力的でした。この時もまだ、起業するとは思っていませんでしたが」(末永氏)

『SENSEI NOTE』チームのストイックさは、イベント中からほかのチームとは一線を画していた。イベント1日目、多くのチームが親睦を深めるために飲みに行くのを尻目に、リーダーの浅谷氏が夜中までサービスの構想をブラッシュアップ。翌日も、朝早くからチームで集まってミーティングを行っていた。

この時、チームのメンバーは企画者の浅谷氏と開発者の末永氏に加えて、デザイナーと弁護士の卵という4名で構成されていた。「メンバーを集める時から、専門スキルのあるメンバーを厳選した」と話すのは浅谷氏。おかげで、イベント中の3日間で、2日目にはティザーサイトができ上がり、ベータ版をローンチ。すでにユーザーからの書き込みが書かれるまでに。最終日には利用規約まで仕上がっていたという。

「プレゼンの段階でサービスが動いているところを見せたかったので、打ち合わせの段階で機能を絞って開発しようと決めました。浅谷からは『土曜日の15時までにティザーサイトを作って』とムチャ振りをされることもありましたが(笑)、限られた時間でやるべきことを決められたのは良かったですね」(末永氏)

偶然とはいえ、「思い出で終わらせるのはもったいない」と思えるサービスの開発に携われたのは、起業を考える入り口となった。

転機その2:チームリーダーに巻き込まれる

見事『Startup Weekend Tokyo』で優勝を飾り、世界大会である『Global Startup Battle』に出場したあたりから、末永氏の中で起業が現実味を帯びてくる。その要因は2つ。「これからも『SENSEI NOTE』に携わりたいと思ったこと」と、「チームリーダーだった浅谷の存在」だと末永氏は話す。

退職するまでは、浅谷氏の住むシェアハウスで夜な夜なミーティングを重ねていた

「イベント期間中から、浅谷には『開発責任者なんだから、サービスを最後までちゃんと見てください』なんて言われてましたからね(笑)」(末永氏)

2人はイベントの前から知り合いだったというが、「当時はお互いのことをよく知らなかった」と話す。このイベントで初めて同じプロジェクトに携わったことで、末永氏は浅谷氏の企画・実行力に驚かされたという。

「とにかくスピードがありました。例えば、『SENSEI NOTE』の構想段階で、教育業界について知りたいことがあった時はすぐに知人に電話して確認していたし、『Global Startup Battle』における泥臭いまでのメディアプロモーションについても、誰でもできるワザではありません。必要だと感じたら、率先して行動を起こしていたところに、リーダーシップを感じました。これほど目標に向けて淡々と、突き進むことができる人ってなかなかいない気がします」(末永氏)

こうして、代表のリーダーシップに上手く巻き込まれるような形で、前向きに、そして着実に起業の道を歩み始めた。

「初めてのCTO職」で、芽生え始める野心

「心残りがあるとすれば、現在の勤め先のことですね。新しいサービスの開発プロジェクトやメンバーマネジメントなど、責任のある仕事をたくさん任せてもらっていますから。起業するか、今の会社にとどまるかかは、相当悩んでいます」(末永氏)

取材を行った当初(2012年11月20日)、そのように語っていた末永氏は、つい先日会社を退職し、『SENSEI NOTE』を運営するルーペにCTOとしてジョインしたことをメッセージで送ってくれた。

現在は、開発体制を整備し、3~4月に予定している『SENSEI NOTE』の正式リリースに向けて準備を進めているそうだ。

浅谷氏(写真右)は、「日本でサービスの基礎を築き、ゆくゆくはアジア、そして世界へと展開していきたい」と話してくれた

「今はクローズドベータ版として全国の先生からコンテンツを集めてフィードバックをもらい、サービスとしてのクオリティUPを目指しています。桜が咲くころには、新任の先生たちにも使ってもらえるようなサイトになっているでしょう」(浅谷氏)

まずは先生同士のナレッジ共有をメインの機能として置きながら、「その後は先生版のTEDのようなコンテンツを作ったり、マネジメントツールを作ったり」(末永氏)と、構想は豊富にある。

「国内でサービスのクオリティを担保できるようになれば、アジア進出も検討している」と話す浅谷氏に対して、末永氏は「大枠の構想は良いと思うので、まずは目の前のことをしっかりやって、サービスの基礎を築いていきたい」と堅実路線。チームのバランスは良い。

「せっかくスタートアップ企業にジョインしたので、すごいスピード感だねと言われるようなサービスにしていきたいです。そして、その想いのまま走り続けた結果として、教育業界が少しでも変わってくれたらうれしいですね」

末永氏の心に迷いはなく、すでに起業家の野心が静かに燃えていた。

取材・文・撮影/小禄卓也(編集部)

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