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ディスカバリーショッピング、バーチャルグラフ…楽天、サイバーエージェントに聞く「ソーシャル第2幕」の行方

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2004年、米ハーバード大学の在校生同士の交流を目的に生まれたFacebook。

From Craig Deakin 今年のFacebook IPOで、「ソーシャルネットワークサービス黎明期」は終わり、いよいよ次のフェーズへ

From Craig Deakin

今年のFacebook IPOで、「ソーシャルネットワークサービス黎明期」は終わりを告げ、いよいよ次のフェーズへ

2006年の一般ユーザーへの利用解禁から、利用者の増加はとどまることを知らず、2011年には世界人口の10%を越える8億人超の登録利用者を獲得。世界最大のソーシャルネットワークの地位を確かなものにした。

この間、TwitterやTumblr、LinkedIn、Google+など、さまざまな属性や目的に特化したソーシャルサービスが生まれ、ユーザー獲得にしのぎを削るようになっていく。国内でも、mixiやGREE、Mobageなどのソーシャルサービスが激しく競い合っている状況だ。

いまや、ある意味で生活やビジネスのインフラと化しつつあるSNS。仮に、個々人の受発信を活性化し、「人と人の出会いやつながり」を形成するのをソーシャルネットワーク革命の「第1幕」とするなら、それらを活用してマネタイズしていくWebビジネスはどんな形で発展していくのだろうか。

7月3日に行われたLINEカンファレンス『Hello, Friends in Tokyo 2012』で、今後のプラットフォーム戦略を発表

7月3日に行われたLINEカンファレンス『Hello, Friends in Tokyo 2012』で、今後のプラットフォーム戦略を発表

この「ソーシャル第2幕」の到来を感じさせる出来事が、2012年7月、日本で起こった。

スマートフォンネイティブなコミュニケーションツールとして誕生し、約1年という短期間で世界5000万人ものユーザーを獲得(2012年7月26日現在)して話題となっている『LINE』が、今年7月に大規模なオープンプラットフォーム化を表明。

Facebookを越える次世代のコミュニケーションインフラとなるべく、リアルグラフを基盤としてさらなる進化を宣言している。

では、2000年代初頭から国内におけるWebビジネスをけん引してきた大手インターネット企業は、こうした一連の動きをどのように見て、どう取り込んでいくのか。

ソーシャルネットワーキンクへの取り組みと展望について、楽天とサイバーエージェント(以下、CA)の技術部門で中枢を担う責任者たちに話を聞いた。

「購買データとユーザーをつなぐ」楽天のEC第2フェーズ

『楽天市場』のPinterestページは、徐々に品揃えを拡大中だ

『楽天市場』のPinterestページは、品揃えを急拡大中だ

写真共有サービス『Pinterest』への出資や、電子ブックリーダー『kobo touch』の開発など、円高に苦しむ国内製造業を横目にアグレッシブな動きを見せる楽天。1997年、『楽天市場』から出発したビジネスは、銀行や証券の金融分野から旅行、メディア、広告にまでおよぶ「楽天経済圏」として発展してきた。

その中心を担っているECビジネスの今後について、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は7月4日に東京で開催した店舗ユーザー向けイベント『楽天EXPO 2012』で、「Discovery Shopping」というキーワードを挙げて説明している。

これは、ソーシャルメディアを通じてユーザーが良いと思う商品を見つけ、それに対してアクションを行うことで、購買意欲が湧き、新たな需要が生まれるという同氏の造語だ。従来のように店舗側がプッシュ型で購買を薦めていくのを第1フェーズとすれば、「ECビジネスが第2フェーズに移行しつつある」(三木谷氏)というわけだ。

楽天株式会社
開発理事
オープンサービスプラットフォーム部
部長

星野俊介氏

この「Discovery Shopping」のエコシステムを具現化する上で、ソーシャルネットワークはどのような位置付けになるのか。同社の技術部門で、技術基盤のオープン化を担当する星野俊介氏は次のように語る。

「直接的なかかわりで言えば、『Pinterest』への出資やAPIの公開、Facebookやmixi上に載せる楽天市場の店舗ユーザーさま向けのページ代行制作サービス『楽天S4』などが挙げられます。ただ、今まで楽天市場を運営する中で、われわれが施策として取り組んできたことそのものが、実は”ソーシャル的”だったのではないかと考えています」

楽天トラベルで、サービス開発と運用を手掛ける田中嘉生留さんも同じ考えだ。

執行役員
楽天トラベルサービス開発・運用部
部長

田中 嘉生留(かおる)さん

「一般的な新規ビジネスは、『ソーシャルサービスを使ってどうマネタイズするか』という考え方になると思うのですが、楽天の場合は逆です。すでにある強力なマネタイズ機能を、どうソーシャルサービスで発展させるかというのが、考え方の基本になります。『楽天S4』もその一つで、SNSから楽天市場への集客を期待したものになります」

サイト内でのユーザーの振る舞いや購買行動を詳細に分析し、その結果をサイトに反映する手法は、「購買データとユーザーをつなぐ」という意味において、楽天流の”ソーシャル的アプローチ”だったことになる。

「例えば『リターゲティング』という手法がありますが、こうしたアイデアは、流通を押し上げたいと考える過程でおのずと出てくる発想でしょう。もっと言えば、協調フィルタリングによる『レコメンド』にしても、楽天はその概念が広まる以前から実践してきたところがある。あえて言うなら、自分たちのやってきたことが世の中のソーシャルシフトの過程で再定義され、一般に広まったことでほかの方に説明しやすくなった。そんな印象もありますね」(星野氏)

楽天市場に集まるのは、商品に興味・関心がある人や購買意欲を持った人であって、「人とつながる」ことを目的に集まった人たちではない。ユーザー側にSNS利用とは異なる強いモチベーションがあるからこそ、かえって楽天は長い時間を掛けて”ソーシャル的”な知見を積み上げることができたのかも知れない。

「商品や店舗を軸に考えると、楽天市場はECというよりコンテンツビジネスを手掛けているともいえます。わたしたちが『Pinterest』に注目したのも、画像というコンテンツによって人と人を結び付ける手法と、楽天市場が商品と人を結び付ける手法に共通点があったからです」(星野氏)

楽天市場では「Pinterestガイド」ページも作るなど、SNS連動をいよいよ強化し始めている

楽天市場ではオリジナルの「Pinterestガイド」ページを作るなど、ユーザーへのSNS活用を積極的に薦める

これまで、ECサイトで商品を買うプロセスは、欲しい商品をキーワードで絞り込み、価格やスペックを比較検討した上でその商品を購入するか否かを決めるしか方法がなかった。

ここまでをECの第1フェーズだとすると、楽天がイメージする第2フェーズは、ソーシャルネットワーク上で何気なく眺めていた商品画像の中から気になる画像を「Pin It」し、それがきっかけで購買意欲が刺激され購入に至る。そんな形になるはずだ。

前述のEXPOで、三木谷氏が「ソーシャルネットワークの活用によりニーズやウォンツを作ることができる」と語った意味も、ここにある。

では、この「ウォンツを作る」ために楽天が取っていく施策とは何か。

(次ページに続く)