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注目のソーシャルコマース『Sumally』北村慧太が考える、ベンチャーCTOの役割【連載:BizHack】

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CTOが、他社CTOに直接聞きたいことを聞く!自らもエンジニアながら、3社の経営に携わっている竹内真氏をインタビュアーに迎え、注目のIT・Webサービスを展開する企業の技術トップにインタビューを敢行するこの企画。ビジネスの最前線で、技術のみならず経営をも担うCTO同士の対話から、エンジニアがどのように「ビジネスを創ることのできる技術屋」へと進化すべきか、その思考・行動原則をあぶり出していく。
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今年最初の連載にご登場いただくのは、多種多様なアイテムで人々をつなぐ画像共有SNSとして話題の『Sumally』CTO北村慧太氏だ。

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「モノの百科辞典」という触れ込みで知られるソーシャルサービス『Sumally

ソーシャル時代における「モノの百科事典」を作るべく2011年9月にスタートした『Sumally』も、今年から国内外の有名ブランドを公式パートナーに迎えソーシャルコマースに乗り出すなど、ビジネス的に大きな転換期を迎えようとしている。

デザインスタジオ『tha ltd.』から『Sumally』のCTOに就任し約1年。アーリーステージから一段上の階段を上りつつある気鋭のスタートアップでCTOを務める苦労と醍醐味とは何なのか。竹内氏にその心情を探ってもらう。

CTO対談「BizHack」 インタビュアー・プロフィール
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株式会社レイハウオリ 代表取締役 | 株式会社ビズリーチ・株式会社ルクサ CTO
竹内 真氏 (blog:singtacks) 

電気通信大学を卒業後、富士ソフトを経て、リクルートの共通化基盤やフレームワークの構築などを担当。並行してWeb開発会社レイハウオリを設立。その後、IT・Webスペシャリストのための転職サイト『codebreak』などを運営するビズリーチ、国内最大級のタイムセールサイトを運営するルクサを創業、CTOに就任。The Seasar Foundationコミッターを務めるなどOSS活動も

今回のゲストCxO
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株式会社サマリー 取締役 CTO
北村慧太氏 

Web制作会社などを経てビジネス・アーキテクツに入社。2003年、語学留学のため米国へ。2004年に帰国し、デザインスタジオ『tha ltd.』の創業に参画。同社在籍時から『Sumally』開発にかかわり、2012年より現職。デザイナー向けイメージブックマークサービス『FFFFOUND!』も北村氏の手によるもの。文化庁メディア芸術祭、ARS Electronicaなど受賞歴も多数

外部からの「こうして欲しい」は、やるべき解じゃなかったりする

竹内 本日はよろしくお願いします。

北村 こちらこそよろしくお願いいたします。

竹内 北村さんはCTOになられて約1年ですよね。エンジニアだった時と違って、開発だけではなく経営にも絡むようになったと思いますが、その辺りについて、実際やってみてどうですか?

北村 「自分たちで収益を上げなければ」とか「メンバーづくりをしなければ」ということは、エンジニア時代にはあまり考えなかったことですね。でも、正直言って経営は得意な人に任せたらいいという考えなので、今は主だった部分を代表の山本が担当し、僕はエンジニアリングの分野から経営をサポートしているような役回りをしています。

竹内 なるほど。経営をサポートする立場になると、両者の間に立って悩むことってありませんか? 経営者としては「分かる」けど、エンジニアとして「やりたくないなー」って思うような要望をぶつけられたりすることってあると思うんですが(笑)。

北村 それはけっこうあります(笑)。

竹内 ビジネス視点で考えるとやるべきことでも、エンジニアリング的な視点ではやりたくないっていう。

北村 確かにそういう狭間に立たされがちですね。

竹内 僕もCTOになりたてのころ、それでずいぶん悩んだんですよ。うまくバランスを取れるようになるまで、僕自身大きな壁だと感じていました。

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お互いに「若いCTO」として、あるあるネタで盛り上がる2人

北村 竹内さんもそうだったんですね。僕の場合は、例えば『Sumally』単体で考えれば、コミュニティに注力したいけど、それだけだと何の収益にならないですから、マネタイズする仕組みも同時に作りたい。でもエンジニアは3人しかいなくて、限られたリソースの中で何に力を入れるべきか日々悩まされている。そんな感じです。

竹内 CTOとしてどうやって優先順位をつけるか。この悩みはどこまでいってもキリがないですよね。僕も、ビズリーチでやりたいことがまだまだたくさんあるので、今でも時々悩まされます。

北村 そういう時って、竹内さんはどうされているんですか?

竹内 僕の場合はちょっと特殊かもしれないのですが、比較的エンジニアリングと経営のバランスが取れる方だと感じています。実家がレストランを経営していたこともあって、子どものころから日銭を稼ぐことの大事さを知っていましたから、生きるベースに「商売」があるんですよね。だから判断の難しさに悩むことはあっても、経営とエンジニアリングの間で悩むってことはあまりないんです。

北村 そうなんですね。では、ビズリーチさんが創業間もないころは、どんなスタンスでお仕事をされていたんですか?

竹内 ただひたすらKPIを追いまくる毎日でした。ただ、そのころより規模が大きくなって分かるのは、より大きなイノベーションを起こさないと、なかなか日々のハードルが越えられなくなるということです。いろんな人がかかわってくるようにもなりますし、何をするにも複雑で間接的な要因が絡んでくるので、いろんな面で見極めることが大変になってきた印象です。

北村 なるほど。

竹内 そもそも、外部から寄せられる「こうして欲しい」って要望は、問題点があることを示しているだけで、実は解じゃなかったりしますよね。

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ユーザーや周囲に求められるモノを作るのが「正解」とは限らないと話す竹内氏

北村 あ、それすごく分かります。

竹内 たくさん寄せられてくる意見や意向をそのまま真に受けて対応していたら、リソースはいくらあっても足りないし、方向性を誤る可能性だってあるわけじゃないですか。

北村 そうですよね。CTOの役割って、本質は何なのかを判断することだと思うようになってきたところだったので、今の話は共感できます。

竹内 本質が見分けられるようになれば、そこから新しいアイディアが生まれてくることもあります。ですから、これは本当に大事なことなんですよ。

北村 竹内さんのお話には学びが多くて勉強になります。

竹内 そうですか? 何だか北村さんを見ていると、何年か前の自分を見ているみたいな気がしてきました(笑)。

今、CTOとして一番時間を割いているのが組織づくり

竹内 ちなみに、サマリーさんは今社員は何人いらっしゃるんですか?

北村 8人です。今月から国立博物館でiPhoneとAndroidアプリを開発していた若くて優秀なフロントエンドのエンジニアが参加してくれました。開発はすべて内製化にしていく方針なので、今は組織づくりに一番時間を割いているところなんですよ。採用や面接など、慣れないことばかりでなかなか大変です。

竹内 葛藤していますね(笑)。

北村 ええ、たまに吐きそうなほどしんどい時とかあります。こういうインタビューもそうなんですが、実はこういう場でしゃべるのも、すごく苦手なんです(笑)。とはいえ、最近になって少し心境も変化してきたのも感じますね。システムを設計したり、コードを書くという仕事は好きだし、得意なのですが、僕がコードを書いているだけではサービスをより多くの人に使ってもらうという目的は達成できません。『Sumally』もそういう段階にまで成長してきているんです。
(次ページへ続く)