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あの『漫画カメラ』が1カ月で200万DLと人気爆発中!無名のソフトウエア会社が大ヒットアプリを生み出せた理由

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先月リリースされてから、瞬く間に人々のタイムラインを賑わせた『漫画カメラ』が、リリースから約1か月で200万ダウンロードを突破した。

一時はYouTube公式アプリをもしのぐDL数でランキングをにぎわせた『漫画カメラ』

一時はYouTube公式アプリをもしのぐDL数でランキングをにぎわせた『漫画カメラ』

『漫画カメラ』とは、撮った写真をマンガ風に加工してくれるiPhone向け無料カメラアプリ。2012年9月10日にApp Storeで提供が開始され、9月13日22時44分時点であのYouTube公式アプリを抑え無料アプリランキング1位を記録。

App Storeでのカスタマー評価も星4つ半と、センセーショナルなスタートダッシュを見せている。

カスタマーレビューでは、「私は好きだなー」、「試しに撮ってみたら一瞬で漫画みたいになってちょっと感動!テンプレもコアなのがあって面白いね」など概ね高評価。

開発会社のアプリ紹介ページでは、Facebookの「いいね!」数が4300以上、5万超のツイートもついており(2011年10月10日現在)、今もバイラル的に広がっている。

さて、その『漫画カメラ』について、アプリそのものが語られることは多々あっても、開発会社について語られることはあまりなかった。

開発したのは、全国的には無名ながら、創業29年という長い歴史を持つソフトウエア開発会社スーパーソフトウエアだ。

インターネットもまだ生まれていない1983年に大阪で産声を上げたスーパーソフトウエアの本社(大阪オフィス)は、主に携帯電話やデジタル家電、金融ATM、航空・鉄道システムなど、組込み系ソフトウエアの開発に従事している。

手掛ける領域を見ると「ちょっと固めな開発会社」という印象を抱かせる同社が、なぜ今回このようなBtoCの面白アプリを開発したのか。

その答えを、『漫画カメラ』を企画・開発し、社内ではWebサイトやアプリのソフトウエアに特化した開発を担っているという東京オフィス代表の舩木俊介氏と、エンジニアでプロジェクトマネージャーを務める渡部隼人氏に話を聞いた。

スーパーソフトウエア・東京オフィス代表の舩木俊介氏(右)と、同社プロジェクトマネージャーの渡部隼人氏(左)

スーパーソフトウエア・東京オフィス代表の舩木俊介氏(右)と、同社プロジェクトマネージャーの渡部隼人氏(左)

アプリの企画は「最新技術でできること」から発想してもダメ

“名は体を表す”とはよくいうが、スーパーソフトウエアの大阪本社と東京オフィス、どちらにも共通しているのは、画像処理やARなど「最先端のソフトウエア開発」を志向していることだ。ちなみに印象的な社名は、代表取締役社長の舩木雅文氏による命名だという。

東京オフィスで代表を務める舩木俊介氏は、雅文氏の息子。マーケティング業界でシステムエンジニアとして活躍した後、同社に移った。会社経営の傍ら、アプリ開発の際はC、C#、C++を使いこなし、プロトタイプ制作などを担当する生粋のエンジニアである。

その舩木俊介氏によると、『漫画カメラ』の企画開発は1カ月というハイスピードで行われた。

この絶妙な”漫画っぽさ”に、同社の画像処理技術の高さが垣間見える

「8月頭に”カメラで何か面白いアプリを作ろう”と話が始まって、そこから企画。8月中旬には制作を開始し、その後テスト。9月10日に公開されました」(舩木氏)

“カメラで何か面白いものを”という発想は、もともと同社が強みとする画像処理を活かせることから端を発している。

『漫画カメラ』を使ったことのある人なら感じていると思うが、写真が加工された後の”漫画感”が絶妙だ。元となる写真の被写体を崩すことなく、モノクロの演出が施される。

このあたりは、さすが画像処理技術に精通した会社と思わせるが、「技術的には大したことないんですよ」(渡部氏)とサラリ。

「写真を白黒化して輪郭を取り出す。あとは、明暗のところにスクリーンをかけるだけ。加工のさじ加減は、実際に何度も撮影してパラメータを細かく調整していきました」(渡部氏)

企画する際に強く意識したのは、ユーザーのスマホ接触態度や競合の存在だという。カメラ機能は年齢問わず、誰でも使うことができる。また、自分が撮った写真を加工してSNSでシェアするという楽しみ方も浸透している。

「しかし、『Snapeee』のようにデコレーションするカメラアプリはすでに競合も多いですし、自分たちが(スマホカメラの)メインユーザーである女子高生の気持ちも分からない。アメコミっぽく加工する案もあったのですが、すでに競合となるアプリは存在していた」(舩木氏)そうだ。

こうした試行錯誤の中で、徐々に『漫画カメラ』の企画が絞り込まれていった。

「わたしたちはエンジニアですが、『最新の技術でできること』という、いわゆる開発者の視点は後から考えるようにしています。先に考えるべきは”ユーザーが何を求めているか”ですからね」(渡部氏)

ゲームアプリや音楽アプリで経験した「大コケ」が活きた

「技術から発想するモノづくりはしない」と語る2人だが、そのポリシーを形成したのは過去の失敗経験だ

「技術から発想するモノづくりはしない」と語る2人だが、そのポリシーを形成したのは過去の失敗経験だ

この「ユーザー視点」を学んだという意味でいうと、実は同社、『漫画カメラ』の前に出した2つのアプリが振るわず、挫折を経験している。

スーパーソフトウエア東京オフィスの

スーパーソフトウエア東京オフィスの”初期作品”であるiPhoneアプリ『ちんちろりん』の画面

一つは、iPhoneアプリ『ちんちろりん』(170円)。その名の通り、日本の伝統的な遊び「ちんちろりん」のアプリ版で、App Storeのサイコロ部門でトップセールスに輝いたこともあった。

しかし、主力収益事業になるには至らず、今はアップデートをストップしている。失敗の要因は、ひとえに「ちんちろりん」自体の知名度が低かった点に尽きた。

もう一つは、iPhoneアプリ『タイムライン音楽 – RedNotes』(170円)。リズムとTwitterのつぶやきと楽器を選択すれば、オリジナルの音楽を生成できるアプリだ。

『タイムライン音楽 - RedNotes』はカスタマー評価で4以上と高評価だったがDL数が振るわず

『タイムライン音楽 – RedNotes』はカスタマー評価で4以上と高評価だったがDL数が振るわず

「これは文字を音符と見立てて、どのような文字でもそれらしい音楽(スケール)にするという仕組みで作っていて、裏側で動いている技術もけっこうすごいものだったんです。ただ、コンセプトがパッと見で理解できないし、ターゲット層も絞り込めていなかった」(舩木氏)ことが、失敗の真因だと分析している。

この2つの「大コケ」が、『漫画カメラ』の大ヒットにつながった。エンジニアに技術先行型の企画作成から脱却させ、ユーザーオリエンテッドな志向を植え付けた点で、今となっては”糧”となっている。

『漫画カメラ』は、これから人気の漫画家と提携するなどしながら独自のフレームを準備し、それらを販売していく形でマネタイズを図っていくという。漫画家にはそれぞれに熱狂的なファンがついているため、『漫画カメラ』の人気とあいまって、大きく化ける可能性がある。

もともと大勢のファンがいるわけでもなく、大規模な広告を投下する予算があるわけでもない。そんな無名のソフトウエア開発会社でもヒットを飛ばすことができることを実証してくれた同社に、これからも期待が高まる。

取材・文/岡 徳之(tadashiku, Inc.) 撮影/小林 正